5月におこなわれた、中川淳一郎×曽和利光「就活こわくない会議2016」。そこで寄せられた、「志望動機の書き方がわからない!」「第一志望に落ちてしまった!」という“就活生あるある”過ぎるお悩みに、ここで改めて、中川淳一郎が、“将来”を見据えた視点で返答します。自分がどういう人物になればいいのかがわかれば、就活は怖くない!
最近、「○○と××ができる人いない?」といったことを聞かれることが多くなりました。職業柄、具体的には、「ネットでの情報発信が得意で、それでいて企業の広報・宣伝のことも分かる人」という人材です。これは企業がウェブサイトでの情報発信および、ネット上でその企業やサービスが多数取り上げられることを期待していることのあらわれと言えそうです。
特に、学生はとかく一方向からしかものごとを見ない傾向があります。
それは、商社であれば「海外赴任をして資源を買う」とか、銀行であれば「技術の高い町工場に出資する」とかです。なんとなくテレビドラマで見たような仕事内容を思い描いて結果的に皆が同じような志望動機を言ってしまうのですね。2年前の就活で、銀行志望者は『半沢直樹』に影響され過ぎて、誰も彼もが「町工場から日本を元気にしたい」と言っていたそうです。
ただ、経験を積んでいくうちに、だんだん、こうしたイメージ通りの仕事に+αされた「合わせ技人材」が求められていく。もちろん、新卒段階で両方を兼ね備えている人などいないのですが、仕事を続けていくうちに、いつしか市場が求めるスキルが身についている可能性はある。
例えば今や企業がネットで情報発信をするのが当たり前、いや不可欠になった時代、ウェブPRにおいては、読者の興味をひくような見出しが理解できたり、検索結果の上位にくるような工夫ができる人、あとは炎上してしまった時の適切な対応が分かっている経験豊かな人材が求められています。
最初に入った会社は、もしかしたら自分にとって不本意な会社かもしれない。そうですね……、本当はIT企業に入りたかったのに、自動車部品メーカーの営業職の内定しか取れなかった。しかしながら、将来的にIT企業に転職した場合は「自動車業界に顔が利くIT会社社員」という珍しいポジションを取れるかもしれないのです。
そうなったとき、冒頭で挙げた「ネットでの情報発信が得意で、それでいて企業の広報・宣伝のことも分かる人」に当てはまる可能性が出てきます。その他、これに当てはまる人は、恐らくウェブメディアで記事広告を作っていた人や、企業の広報部でウェブ担当だった人、PR会社勤務で企業の自社メディアを編集していた人でしょう。
ただこれらの仕事は、いずれも10年前はあり得ないようなものだったわけですね。つまり、一生同じ会社で働く人というのは、もはやそれほどいないわけでして、一社目で「やらかしたぁ……」なんて嘆いていたとしても、そのキャリアは、長い人生を考えたらムダにはならないもの。目の前の仕事を何年か頑張っていれば、将来的に必ずどこかでつながるよということです。
学生が志望動機を述べる時って、表面的なところしか見ないんですよ。だからこそ、差別化をするためにも、ちょっとひねった志望動機を言ってみてはいかがでしょうか。不動産会社に入るにしても、他の学生が「人々がホッとできる街づくりをしてみたい」みたいなことを言う中、「御社が作る街がいかに魅力的な街かをアピールする方法、ウェブ上で存在感を増す仕事をやってみたい」とか言うのです。
こうした一歩先のビジョンも踏まえた「ハイブリッド人材」を目指して会社選びをすると、仮にその会社を辞めたくなっても、その後の転職はラクになることでしょう。
中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
編集者
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行ったり、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書) や『内定童貞』(星海社)など。