半導体というと、パソコンやスマートフォンの中に組み込まれているデバイスということは知っているものの、どんなものなのか、具体的に説明するのは難しいものの一つかもしれません。どんなメーカーがあるのか、半導体メーカーの動向はどういったものか、よく調べて志望動機を書く際にどのような点に気を付けたらいいのか、考えてみましょう。
(※こちらの記事は、2016年5月19日に公開したものを更新しています。)
半導体は電気的性質からつけられた名前で、電気を通す物質である「導体」と電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を持つ物質です。「導体」は、電気抵抗が弱く電気を通しやすい金属類、絶縁体は電気抵抗が強いゴムやガラス、セラミック類、半導体は温度などの状況によって電気抵抗率が変わるもので単一元素だとシリコンやカーボン等が「半導体」です。
不純物を含まない「半導体」に他の元素などの不純物を含ませると、電気を通しやすくなります。半導体は、光の照射、温度の変化、不純物の添加によって電気抵抗率がかわるので、この特徴を利用して、電流の方向や、電気信号の流れ、増幅などを制御することができます。半導体は、元々は、シリコンのような物質の名前ですが、現在は半導体の特徴を使った電子部品をさします。集積物であるICやLSIは代表的なものですが、DRAMやフラッシュメモリーなどのメモリー(記憶装置)、マイクロプロセッサー(演算装置)、光を発する発光ダイオード、画像認識機能を持つCCDイメージセンサー、電気の制御や変換を行うパワーデバイスなど多様な種類があります。
半導体は、エアコンの温度センサー、炊飯器の火力制御装置、パソコンのCPUを始め、携帯電話やカメラ、テレビ、冷蔵庫や洗濯機といったデジタル家電製品、銀行のATMや電車の制御、通信などの社会インフラと、暮らしの中の様々な分野で使われています。今後は、自動制御の自動車開発が進むにつれて自動車産業への需要、スマート家電やスマートハウスの普及に連れて住宅やエネルギー分野での需要も増えてくるとみられています。マイクロ化した超小型システムであるMEMSは従来型であれば搭載できなかった医療機器などにも使え、デバイスの小型化、省エネ化に役立っています。こういった、新たな機能を持つ製品の開発が進むにつれて、更なる需要も見込まれます。
半導体業界は、世界的に見ると拡大している業界です。半導体の世界市場規模は、2016年が3,389億米ドル、2017年が4,122億米ドル、となっています。2017年の売上高による世界ランキングでは、韓国のサムスン電子が初の世界トップ、次いでアメリカのインテル、韓国のSKハイニックスが続きます。
パソコンからスマートフォン、タブレットへと主要需要の変化への対応、新たな機能の追求のために、半導体業界は常に研究開発をすすめなくては生き残っていけない状況にあります。そのため、最近は大型のM&Aが世界規模で行われています。日本でも、業界再編の動きが続いています。2010年にNECエレクトロニクスとルネサステクノロジが合併し、ルネサスエレクトロニクスとなったのを皮切りに、2013年にはエルビーダメモリがアメリカのマイクロン・テクノロジに買収されました。パナソニックは、2014年にイスラエルのタワーセミコンダクターと提携、2015年にはシステムLSI事業で富士通と統合しソシオネクストができました。
そのなかでも最も注目すべきは、東芝の半導体事業売却です。
主力事業であるNAND型フラッシュメモリー以外の半導体事業を手放すことを決定し、2017年に半導体メモリー事業を「東芝メモリ」として分社化。さらに2018年6月に米投資ファンドのベインキャピタルが率いる「日米韓連合」に売却し、東芝メモリは独立した半導体専業メーカーになりました。2017年時点で世界第8位の市場シェアを持つ半導体メモリー事業を売却したことで、国内での業界勢力図が大きく変わってきています。
2017年の売上高をもとに半導体分野での上位企業を何社かピックアップします。
■ 日立製作所:電子装置・システム部門(1兆865億円)
2018年8月には電気自動車の省エネ化に貢献する新構造のパワー半導体の開発を発表。社会インフラシステムのさまざまな電力変換機の提案などに力を入れています。
■ ルネサスエレクトロニクス(7,803億円)
三菱電機および日立製作所から分社化していたルネサス テクノロジと、NECから分社化していたNECエレクトロニクスの経営統合によって、2010年4月に設立された企業です。車載半導体に強みを持ち、自動運転などの技術力でシェアを獲得しています。
■ 東京エレクトロン(1兆1,307億円)
■ 富士通:デバイスソリューション事業部(5,600億円)
■ ソニー:半導体事業部(8,500億円)
■ ローム(3,520億円)
■ニコン:半導体装置事業(2,250億円)
ほか、京セラ、三菱電機も半導体関連事業で収益をあげています。
志望先として考えると、半導体メーカーの大手企業の多くは、日立、富士通、ソニー、といった他業種メーカーなため、半導体メーカーとしてよりは主業種メーカーとして採用が行われている傾向にあります。そういった企業を志望する場合には、志望動機は複合メーカーとして企業研究をした上で志望動機を書く必要があります。
主業種が半導体であるメーカーは、半導体の中でも得意分野のある企業がほとんどです。企業研究をする際には、そのメーカーの特徴を確認しましょう。どういった半導体を作っていて、何に使われているのか、どういった展開をしているのか、といった点です。志望先企業の特徴によって、志望理由も変わってきます。
主要半導体メーカーと、志望動機の例を挙げておきます。参考にしてみてください。
■東京エレクトロン株式会社
東証一部上場の半導体メーカー。
ナノスケールの半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置を製造、モバイル向け、インクジェットプリンタ向けに主に販売。革新的な技術力を背景に世界展開している企業です。特に半導体製造装置や薄型テレビの分野では国内1位の売上高を誇ります。
「半導体製造装置は世界中の産業の基盤であり、ものづくりの根幹にかかわるものである点に魅力を感じました。御社は、様々な製造工程に対応した製品を開発され、業界3位のシェアを持っておられます。世界の産業の発展に貢献できる仕事がしたいと思い御社を志望いたしました。」
■ローム株式会社
佐藤研一郎氏が立命館大学在学時に考案した炭素被膜抵抗の特許を基に創業した会社で、京都に本社があります。高い技術力を持ち、集積回路で日本のトップ企業。産業用、車載用のカスタムLSIが主要製品、省エネ効果を発揮するパワーデバイス分野でリーディングカンパニーの一つです。
近年はウェアラブルセンシング/IoTなどにも力を入れています。
「私は大学で半導体を専門に学んでいます。御社のパワーデバイスは、高い省エネ効果を持ち、持続可能なエネルギー社会の実現に貢献されています。ものづくりの際に信頼性を第一にし、素材からデバイスまで一貫して行われている御社でならプロセスを理解した新たなモノづくりができると思い志望いたしました。」
■トレックスセミコンダクター株式会社
アナログ電源ICメーカー、産業用、車載用の製品を製造し、安定成長している企業です。東証二部上場企業です、2016年4月にはカリフォルニア州サンタクララ市に「R&Dセンター」を開所、シリコンバレーに進出、注目されている半導体メーカーです。
「ものづくりに関係する仕事がしたいと思いながら就職活動をしております。ほとんどの製品に使われている半導体の可能性に魅力を感じました。御社の会社説明会に参加させていただき、社員の方々が無知な私の質問にも丁寧に答えてくださって会社の雰囲気がとても良かったこと、女性の方々がどの部門でも活躍されていたことに感銘を受けました。私も、将来的に働き続けたいと思っており、御社を志望いたしました。」