今回は、2人のキャリアコンサルタントに「自己分析」の方法についてそれぞれ解説していただきます。
まずは、毎年200名以上の大学生を大手企業・人気ベンチャー企業に複数内定させているキャリアコンサルタント井上真里さんから、良い自己分析の方法を解説していただきましょう。
就活の準備として初めに自己分析をしましょう、とよく言われます。自分の強みや興味を整理して言葉で伝えるために自分を知ること(=自己分析)は大切ですが、いつしか目的を見失って迷子になってしまう人もまた多いように思います。
そこで今日は、数年間、私が就活生との面談をしてきて実際に効果が出やすかった自己分析のやり方を紹介します。広い意味での自己分析は、大きく3つのやり方に分けられるでしょう。
1. 自己分析:自分でノートやワークシートに書きだす
2. 他己分析:周りの人からコメントをもらう
3. 適性検査(フォーマルアセスメント):選択式のテストを受ける
自己分析というと、1番のイメージを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし一人で机に向かっているだけでは気づかないことが多いのです。ほかの方法も活用していく方が、客観的に自分を理解する助けになります。
まずは、自分でノートやワークシートに書きだす自己分析のポイントです。履歴書やエントリーシートでは、学生時代に力を入れたことについて聞かれるので、大学生活のことはみんなよく振り返っていると思います。しかし、あなたの性格や興味、考え方の土台をつくってきたのはそれよりもっと前。生まれてから高校生くらいまでのことも振り返りましょう。
ヒントは、とても嬉しかった・楽しかった・誇らしかったなどのプラスの感情と辛かった・悲しかった・痛かったなどのマイナスの感情を挙げること。人は、プラスの感情と結びついていることは「またやりたい」と思って好きになったり興味がわいたりします。逆にマイナスの感情があったことは「もう二度とこんな思いはしたくない」と、その原因になることを避けるようになります。
たとえば発表会などに出て褒められて嬉しかった思い出がある人は、人前に出て話すことが好きになるかもしれません。逆になにかチャレンジして失敗して悲しい思いをした人は、大きな挑戦をすることに後ろ向きになっていることもあるかもしれません。
過去の出来事を振り返ると、人によっては辛い出来事も出てくることがあります。でも前に進むための自己分析ですから、その出来事をこれからどうプラスの経験に変えていくか? と考えてほしいと思います。
家庭環境や生い立ち、学校生活で辛さや満たされなかったことを挙げてみましょう。目を向けたくないこともあるかもしれませんが、だからこそこれからの人生で満たしたいことや、解決したいことが見つかるかもしれません。
たとえば、クラスであまり仲の良い友達ができなくて辛かった時期があったとして、それをきっかけに人に心を閉ざしてしまうこともできます。でも、そんな体験をした自分だからこそひとりぼっちの人に積極的に関わっていくようにもなれるはずです。
家計について親がケンカしていることが嫌だなあと思っていたので、将来家計についてのアドバイスができるような知識をもって、少しでもそんな家族を減らしたいという想いを持つようになったという人もいます。
当時はどうしようもできなかったことを、今、これからの自分なら解決していけるし、同じような想いを持つ人を手助けしていくこともできるようになります。「こんなことがあった」と出来事を思い出して終わるだけではなく、その出来事は今の自分にどうつながっているのか、これからどのように糧にしていきたいかと考えてみましょう。
あなたがこれまで一生懸命になったことについて、なぜ夢中になれたのか? ということを考えると、自分のモチベーションのスイッチがわかってきます。
○○することの楽しさ/勝つことへのこだわり/○○へのコンプレックス/△△に対する責任感/◇◇を伝えたいという想い……など、夢中になったことをとにかくたくさん思い出してみると、共通点が見つかるはずです。
たとえば高校時代、夏の炎天下で2か月かけて文化祭の大きな入場門をつくることに取り組んでいたという人がいました。みんなが驚くような新しいものを考えて、メンバーを仕切って作り上げていくのが楽しいという人。彼はその後、新しいWebサービスをつくる会社に入社。ディレクターとしてクライアントの要望に合わせてメンバーをまとめて制作する仕事で活躍しています。
このように、あなたがこれまで熱中した理由を考えると、同じようにスイッチが入りそうな仕事を見つけるヒントになるはずです。あなたの20年間すべてが宝の山です。何かあると思って過去を振り返りましょう。
エントリーシートや面接でも必ずといっていいほど話題になる、学生時代に力を入れたこと。あなたがこれまでパワーを割いてきた上位2つについては最低限振り返っておきましょう。以下のようなポイントで振り返ります。
1. どんな活動か
一言で説明するなら、どんな活動か? を書きます。
2. やろうと思った理由・きっかけ
サークルやアルバイトでも、なぜそこを選んだのか? という理由に、あなたの選択基準や魅力に感じることが見えてくることがあります。
3. 自分の役割(チームの活動の場合)
チームでの活動だった場合、自分が主に任されていたことはどんなことだったのか? を書いてみましょう。何か役職についていなければいけないわけではありませんが、役職を任されていた場合、それは自分で立候補したのか? 周りから選ばれたのか? その理由は? というところまで考えていくと、更に自分について理解が深まってきます。
4. 大変だったことや課題
特に印象深かったことや、大変だったこと、目標や課題などを挙げてみましょう。今の段階ではひとつにしぼらず、思いつくものをいろいろと書いてみましょう。
5. 自分がどう考え行動したか
先に挙げた、大変だったことや課題に対して、自分がどのようにとらえて行動をとったのかを書きましょう。同じ出来事に対しても、何を考え、どんな行動をとるかは違います。周りにうまく力を借りる人もいれば、黙々と地道な努力で解決する人もいます。自分の強みを伝えるポイントになるのでしっかり思い出しましょう。
6. 行動によって状況が変化したことや結果
ここで、何か大きなエピソードや結果にこだわる必要はありません。ただ、できる限り客観的にわかる表現を探しましょう。数値的な結果や、第三者の声など、聴いている人に、その程度が客観的に判断できる情報を盛り込むと相手がイメージしやすくなります。
7. 学んだこと・得たこと
最後の項目は、面接でもよく聞かれるところです。多くの就活生は、学んだことが浅すぎます。これまで私が聞いてきた学んだことのスリートップを紹介します。
a. 相手に立場にたつことを学んだ(接客業経験者に多い)
b. 粘り強く目標まで努力することを学んだ(部活動やサークル経験者に多い)
c. 広い視野を得られた(留学経験者に多い)
ひとりひとり経験したことが全く違うはずなのに、学んだことが同じようにまとめられるのは何か違和感がありますよね。もう三段階くらい気づきを深めたいところです。そこで、学んだことを考える時におすすめなのは、「これから同じ経験をする後輩にアドバイスするなら?」という質問を自分にしてみることです。その活動を経験してきた自分だからこそ話せる実感のこもった話になるはずですよ。
また、体験を社会人に話してみることで「仕事でも、同じように○○ということがあるよ」と、その学びを仕事にどう活かしていくかというアイデアを教えてくれるかもしれません。
自分の過去について振り返りをしたら、次にあなたの未来をビジュアル化していきましょう。まずは具体的な仕事にとらわれる必要はなく、未来の自分がどんな世界に生きて、どんな人達に囲まれているのかということを3つの切り口で自由にイメージしていきます。
1. 自分がどんな人になりたいか
どういう性格の人でありたいか、どんな姿勢で生きていきたいか、どんな価値観を大切にして生きていきたいかということです。モデルになるような人がいると考えやすいです。
2. 自分が手に入れたいものは何か
ライフスタイル、仲間、家庭、休日の過ごし方、住みたい場所、着たい服、職業、ステイタスなど何でも。一度きりの人生で「手に入れたいもの」は何か。文章ではなく雑誌などに載っているような写真から考えるのもイメージがわきやすいです。
3. 社会の・誰のどんな役に立ちたいか
自分が手に入れるのではなく、社会の中であなたはどんな役割を持ち、どんな影響を「与えて」きたいのか、誰に与えていきたいのかということです。どんな会社も、社会で何かの役に立っています。あなたが理想とする社会のイメージはどんなものか? 誰のためにがんばりたいか? ということを考えます。
ここで大切なのは、今のままちょっとがんばれば手に入るレベルのイメージであれば、会社に入って成長する意味をあまり感じられないということです。制限をかけずに大胆にイメージしてみましょう。
今の自分のままでは無理そうだけど、達成できたらすごいだろうなとワクワクするようなくらい、大きく自由に描くことが大切です。業界や職種にとらわれるより、大きな視点で自分が求めていることを考えられますよ。
未来について考えるときは、いい気分で楽しんで考えられる環境を用意してください。はじめはうまくできない人も、毎日10分でも考える時間をとっていくとイメージすることに慣れてくると思いますので諦めないで続けてみるのをおすすめします。
ここまで自分でやってきたことにプラスして、役に立つのが周りの人からの声です。
あなたが仲の良い友だちや先輩・後輩に、以下のようなことについて聞いてみます。自分の傾向が見えてくるので、聞く人数は多いほどいいでしょう。
1. 長所と短所
あなたの長所について聞いてみるときには、その長所を感じるのは、普段のどんな行動や言動からなのか? ということも聞いてみましょう。あなたが自然に、無意識にしていることでも、あなたらしさが出ている行動に気づくことができます。
たとえば、あなたが軽音サークルで、先輩におすすめされた練習方法や参考になるから行ってみたほうがいいというライブに喜んで参加していたとします。あなたにとっては普通のことでも、先輩にとっては「素直に向上心を持って努力できる子」という印象かもしれません。
ほかに、あなたが友達との待ち合わせには必ず時間より早く到着していて、友達とのメールはすぐに返したり、遊んだあとには自分からメールを送ったりという習慣を当たり前のようにしているとします。友達にとってはそんなあなたが「とても誠実な人」という印象にうつっているかもしれません。普通にしているだけで他の人よりできることこそ、強みなのです。
また、短所という聞き方でもいいですし、「今後もっと期待すること」という聞き方をすると、相手がもっと自分に求めていることも聞けるのではないでしょうか。挙げてもらったことに、あなたの成長のポイントがあるかもしれません。
2. 私をひとことで表すなら?
「私をひとことで表すと?」という質問にも答えてもらうと、エントリーシートや面接で聞かれる質問にとても役立ちます。あなたのキャッチコピーは? という質問に、発想力に自信がない人は難しいなあと固まってしまいますが、そんな時こそ周りの人から聞いて集めた情報からアイデアを出すとうまくいきます。
自分のことを聞くときに大切にした方がいいのは、自分が気づかなかったけど相手に与えている印象を素直に受け入れることです。だから、「自分はそう思わないから、これは違う」というように受け入れなかったら、せっかく人に聞いた意味がありません。相手にはそう見えているんだな、と受け止めることが大切です。
選考に適性検査を取り入れている企業はとても多いです。その結果を参考に面接をしたり、あまりにも働く意欲が低い場合はその結果だけで不合格になってしまう企業もあります。企業が適性検査の結果を見せてくれることはほとんどありませんが、自分で受けられる適性検査もあるので客観的にどんな特徴があるのか調べてみるのも自己分析に役立ちます。
最近では大手就職ナビサイト上のコンテンツとして、また学校の就活系の講座で適性検査が申し込める場合もあります。Web上で拡散される質問項目が少ないものより、制作元が明らかで信頼できる検査を活用しましょう。
適性検査では、自分をよく見せようと思って考えこまずに直感で答えていくと、自分の強みや適職が数値で結果として出てきます。適性検査の結果を参考にして、確かにこれは当てはまっているな、これはあまり当てはまっていないかも、などと自分の気持ちや過去の成功・失敗体験と結びつけていきましょう。
このように考えて、自分の得意・不得意・好き・嫌いを整理し、将来の自分がイメージできるようになってくれば自己分析はよく進んだと言えるでしょう。
中には、「自己分析が甘いから選考に進めない」「自己分析が詰め切れていない」という人もいますが、そもそも完璧に自己分析を終えようと思うと苦しくなります。社会人だって自分の強みや将来のことをクリアに言葉にできている人はどれほどもいないでしょう。
面接で聞かれたり、実際に働きはじめたりしてから気づくこともたくさんありますから、応募や面接を並行して進めて、新たにわかってきたことを付け足しながら進めていきましょう。
続いて、延べ3,000名の学生の面接や就職相談に応じてきたキャリアコンサルタント佐藤大さんから、良くない(悪い)自己分析の方法を解説いただきます。
就職活動をスタートするにあたり、すぐに取り組む事になる自己分析。様々な学生の方のサポートをする中で、特に印象に残っている「良くない」事例と、一見自分では分かりにくい「きわどい」事例をそれぞれピックアップしてみたいと思います。
「自分には個性や才能がないと思っている」
まず断言できる事があります、それは才能や個性がない人はいない! という事です。実はこのようなネガティブな考えで悩む人が多いのですが、ぜひ自分の才能や個性を粘り強く探して欲しいと思います。必ず見つかります。
ではなぜ個性や才能を見出せないのでしょうか? それは単純に他人と比較して勝手に優劣を自分の中でつけたり、周りの優秀な人ばかりみて、自分に眼を向けていないだけであったりします。自分の才能や個性を発見する為にこんな質問をよく学生にします。
「時間を忘れる位に熱中する事は?」
「家族や友人から頼まれたり頼られる事は?」
「自分のした事で褒められたり、喜んでもらった事は?」
「今までの人生で、時間またはお金を最も注いだと思う事は?」
「何かに対して怒ったり、思わず涙が出た事は?」
「時間が空いたり、気がつくとする行動や頭の中の思考は?」
と、こんな質問をして才能の発掘を試みてもらうようにしています。出てきた答えについて「こんな事が個性や才能って言えるのかな?」と思ってその時点でこの分析をやめてしまう人がいますが、実はとても勿体ない事です。ここで出てきた答えは才能や個性を発見する上で大事な「種」だったりします。ですから出てきた答えに対して、面倒臭がらずに粘り強く「なぜ?」を何度も自ら問いかけてみて欲しいと思います。必ず才能や個性を発見する突破口が隠れています。
「借りてきたような表現で語る」
→仕事を頑張り、家族とマイホームに住み幸せな生活を送りたいです。
→仕事を頑張り、会社で必要とされる人間になりたいです。
面接や書類などで上記のような表現を毎年見かけます。決して間違ってはいませんが、聞いている方(読んでいる方)としては正直な所こんなに退屈な表現はありません。「ふーん」としか思わないからです。なぜか? 答えはとても簡単です。ありきたりな表現だからです。
本に載っているような表現や、キャリアセンターで習ったような表現を鵜呑みにして、そのまま話しているように感じるからです。その人固有の出来事、固有名詞、行動、考え方などが織り込まれない限りこの現象は避けられません。借りてきたような表現や文章になっていないか? を意識的に確認し、そうであればすぐに改善しましょう。「自分の言葉で話しているのか?」を人事の人は一番気にしているという事を意識して準備しましょう。
「ストーリーを意識できていない」
映画やドラマにはストーリーがあります。今だけ、未来だけ、または単なる昔話という部分的な話だけではストーリーに厚みがなく面白みに欠けます。将来の夢や目標だけを必死に語っていたり、今の自分の性格について過去にさかのぼって説明が出来なかったりと、部分的な説明だけでは不十分です。自分を主人公にしたストーリーを自覚する事で将来へのモチベーションも沸き立つし、過去への感謝や今の自分についての自覚も高まるはずです。
自己分析をする際には、「過去→現在→未来」というように現在を中心にして大きく3つのフェーズで考えるようにしましょう。なぜ今の自分があるのか? 過去に何があったから今の自分があるのか? という自分の過去を紐解く作業です。次に、今の自分を起点にして将来どのように成長していきたいか? というように過去から未来までのストーリーを感じながら分析を進めるようにしましょう。一番のポイントはそのストーリーを自ら楽しく感じる事が出来るようになるまで考え尽くす事です。なぜなら自分が感情移入できないストーリーについて、他の人が興味を持つ事なんて絶対にありえないからです。
「自分だけで作る自己分析」
自己分析という名前の通り、自分でしっかり考えてまとめる事は当然です。しかし、本当に自分だけで考えてしまって良いのでしょうか? 答えはNOです。なぜなら、学生までは自分で考えた事、自分ならではの価値観だけで十分だった筈だし、場合によっては褒められたりしたかも知れません。しかし、社会に出た途端に周囲からの評価もガラリと変わり「客観的に物事を考えているか?」という見方をされるようになります。
実は自分の考え(モノサシ)だけでどんなに自己分析を進めても限界があり、仮にそのような状態のまま面接に参加すれば一瞬にして面接官から「自分だけの判断をする=考え方が幼い=職場で活躍できない」と判断されてしまうでしょう。そんな状態にならないような対策として2点ご紹介します。
1. 家族、友人、教授、バイト先の上司に客観的に評価をしてもらう。
2. 性格診断や適性検査を受験して、その結果を分析してみる。
1については「自分では知らない自分の事」を沢山教えてもらう事ができるでしょう。場合によっては少々耳が痛い事も言われるかも知れませんし、自覚していなかった長所も発見できるかも知れません。また、2については、客観的かつ機械的に弾き出される分析結果ですから、感情が混じる事なく素直に結果を受け入れる事ができるでしょう。また他にもお勧めな書籍としてが、「9つの性格」(PHP文庫)や「さあ、才能に目覚めよう」(日本経済新聞社)などもあります。いずれも手軽に自己分析ができますよ。補助的に活用してみて下さい。
「文章量が少ない、時間をかけていない」
僕は自己分析用のノートを一冊用意するようにお勧めしています。その一冊の中に過去、現在、未来やその他、様々な角度からの考察を所狭しと書き連ねて、自己分析用のストレージ(保管庫)として、様々な就活の場面で活用して欲しいと考えています。しかし、時折そのノートに文字がパラパラと書かれているだけで、圧倒的にアウトプット量が少ない人がいます。その人が最終的に「質」の高い自己分析を実現できるのであれば問題ないのですが、まずはその前提として(余程の秀才ではない限り)アウトプットの「量」をしっかり生み出す必要があると思います。また「量」を生み出せる人は間違いなく「時間」を沢山費やす人でもあります。沢山の時間を費やして初めて質の高い自己分析が実現できるのです。
何も、デスクにかじりついて何時間も考えて欲しいと言っているのではなく、電車に乗っている時、歩いている時だってスマホにその都度メモをしておくことができます。本気になればどこでも自己分析はできるのです。
また、「自己分析はどうなったら終わりですか?」という質問も受けますが、正式には自己分析に終わりはありません。新たに感じたこと、新たに発見した事を書き連ねてバージョンアップを続けていく事が本来あるべき方法です。少々多いかなと思う位に文章やメモを用意しておく事で、様々な面接や書類作成の時でも余裕を持って臨む事ができます。アウトプットに費やす時間の多さ、量の多さは、難関と言われる企業から内定を得たり、複数の企業から内定を得る事が出来る優秀な就活生に共通する点ではないかと思います。
「失敗を隠そうとする、または言い換えてしまう」
過去の分析をしている時に必ず見かけるのが、挫折や失敗をした経験や悔しかった事などを隠したり、言い換えて平坦に表現しようとする人です。面接官からすると一番興味をそそる、格好のアピールポイントにも関わらず、それらを隠したり、平坦に表現することで「平凡な人」「印象に残らない人」になってしまいます。本当に勿体ないと思います。本人は恥ずかしい、格好悪い、評価が下がるのではないかと勝手に自己判断をしていますが、面接官は全く逆の視点を持っている事を認識しておきましょう。
面接官は「失敗や挫折経験」があるから、といってそれだけでマイナス評価をする事はありません。そんな事よりもその後どのように対処して乗り越えたのか? その後どのように認識しているのか? を特に重要視しています。その内容如何では他の候補者よりも良い評価をするケースも多いのです。また辛い経験を「語る事ができる」という事は客観性がある=自己の中で咀嚼済み(整理が済んでいる)という事で、評価される場合もあります。ぜひ自分の過去の失敗談、ネガティブな過去の出来事は、差し支えない限りオープンな気持ちで語れる準備をしておく事をお勧めします。
「華やかな経験が評価されると勘違いしている」
本人は自分のウリ(キラーコンテンツ)だと思って意気揚々と感じている事でも、分析のツメが甘いと「勘違いしている人」や「考え方が甘い人」として逆に評価を下げる可能性があります。下記に挙げる内容はとても陥りがちなパターンばかりなのでドキッとするかもしれませんが参考にしてみて下さい。
・部長やリーダーだった
・海外での留学経験がある
・外国語が堪能である
・サークルを自分で立ち上げた
・◯◯を小学生の時からずっと継けている(スポーツや習い事)
・チームが全国大会に出場して入賞まで勝ち上がった
・資格を取得した
・好奇心が旺盛で様々な部活(バイト)を経験してきた
・高校生までの(過去の)華々しい活躍
如何でしょうか? 華々しくて「すごい経験」ばかりですよね? なぜこれがダメなのだろうと思うかもしれません。もちろんこれらの内容自体は悪いわけではありませんが、「一見すごい! と思うだけであって」人事の方たちはそれだけでは評価をしてくれません。人事の人たちが最も気にしているのはどんな経験であったとしても(些細な経験でも全く問題ないのです)、「何を感じて、何を自分の中で変革させてきたのか?」を見たいのです。つまり成長する考え方や行動をとって来た人なのかどうか? を最も知りたがっているのです。くれぐれも「華やかな経験」に満足せずに準備をして欲しいと思います。
「その他のNG例」
・セミナーや、合同説明会の予定で手帳が一杯になっている。
→企業だけたくさん見たり、人事の人とたくさん話をしたとしても、肝心な自分についての認識が薄ければ単なる自己満足になってしまいます。
セミナーや合同説明会にいくら参加しても、それだけでは自己分析は進まないので注意しましょう。
・ひたすら自己分析をしている
上記とは逆パターンで、ひたすら自己分析を続けている人もたまに見かけます。
自己分析には厳密に言えば終わりがありません。社会人ですら難しい作業ですから大学生の皆さんは尚更のことです。だからと言っていつまでも自己分析を続けることは危険です。決して自己満足にならないように企業やセミナーなどで客観的な情報も得るように心掛けてください。
・自己分析のメモや情報をバラバラに保管している
男性に多いのですが、せっかくメモしたり書き記した内容も、別々で保管しているために、情報がバラバラで、結果的に散漫な自己分析をダラダラと繰り返してる人がいます。これはただ単に時間の無駄で、他の人の何倍も時間をかけてやっと普通な内容の自己分析に甘んじることになります。必ず一箇所に情報を集める(ノートまたはPCデータでも可)癖をつけておきましょう。また時々内容を見直して、必要な時に書き換えるなどして情報を更新するようにもしましょう。
入社3年すると少なくとも3割以上の新入社員は辞めてしまう現実があります。
知名度やブランド力があり誰もが憧れる会社、自分の趣味嗜好とマッチしているという理由で選んだ会社など、「行きたいと思って入社した会社」「好きだと思って入社した会社」にもかかわらず3年後に3割は辞めてしまうのです。現実問題として把握しておいて欲しい大切なことは、いくら好きな会社でも、自分と必ずしもマッチしているとは限らないという事です。自己分析を手短に済ませてしまったり、浅はかな自己分析のまま企業選びをする事で後々の後悔を生む原因になってしまう可能性があります。
就職活動においては、自己分析と企業研究の両輪をうまくバランスして進めていく必要があります。どちらも大切ですし、どちらから先に着手すべきというセオリーも実はありません。しかし上記のようなミスマッチを防止するためには、どちらも手を抜いてはならない事だけは間違いないのです。丁寧に自己分析をすれば、将来入社後も明確な意志と目標を持って働く事ができるでしょう。そのためにも、まずは量にこだわってアウトプットしてみて下さい。
井上 真里(いのうえ まり)
キャリアアドバイザー。石川県金沢市生まれ。慶応義塾大学経済学部在学中より、人材教育企業にて学生キャリア支援のサポートに関わり、卒業後は東証一部上場の富裕層向け住宅メーカー・IT企業にて中途・新卒社員採用をはじめ、教育研修、異動や退職など学生のキャリア選択から、社会人のキャリアに関する領域を幅広く経験。新入社員マナー研修講師としても高い支持を受ける。現在は全国の高校生や大学生を対象に面接トレーニング、キャリア、マナー分野でのマンツーマン指導やセミナーを多数開催。毎年マンツーマン指導や勉強会に参加した200名以上の大学生が、大手企業・人気ベンチャー企業に複数内定している。
佐藤 大(さとう だい)
神奈川県出身。採用コンサルタント。就活アドバイザー。神奈川県の自動車販売ディーラーにて人事、採用に関する業務に約8年携わり、累計で延べ3,000名の学生の面接や就職相談に応じる。「人」の持つ可能性や組織に与える影響のの大きさを数多く目の当たりにしてくる中で、さらに追求すべく2015年より独立。高校生、大学生に向けての就職指導、企業の採用支援、採用担当者育成などにに携わり現在に至る。