突然ですが、みなさんは「専門商社」と「総合商社」の違いを説明できますか?商社という名称は耳にしていてもイメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか。今回は専門商社、特に食品商社の仕事とはどんなものなのか、どのように志望動機を書いたらよいのかについてご紹介します。
(※こちらの記事は、2016年3月17日に公開したものを更新しています。)
商社の仕事は、生産者と販売者の橋渡しです。生産者といいましたが、たいていの場合は、メーカーになります。販売者は大手流通企業も含みます。国内でも海外でも仕事は発生するので、輸出入業務も行うことがあります。また、販促やマーケティングを手掛けることもあります。
専門商社は、特定分野に特化した商社です。食品、医薬品、工作機器……とそれぞれに専門分野が決まっていて、生産から流通までのすべての過程を扱います。一方で総合商社は、専門商社がたくさん集まっているような会社です。特定分野ではなく、どんな分野の取引も行います。その分、生産から流通まですべての過程を扱うというよりは、その過程をコーディネートするといった業務を行うことも多くなっています。過程の一部を、専門とする他業者に任せるかたちです。そのため、専門商社との関連も密にあります。総合商社が子会社に専門商社を持っていることも多いです。
どちらの仕事にやりがいがあるか? というと、それは人によって違うかもしれません。専門商社は、特定のジャンルに絞っていますから、ある意味スペシャリストになることができます。生産から流通まですべての過程を扱うことができるのも、商品を発掘し、売り込んでいきたい人には魅力だと思います。一方で、総合商社はスケールメリットを活かせる、大きな仕事をすることができる魅力があるかもしれません。
商社の業務から考えると、彼らは交渉のエキスパートだといえます。商社の採用担当者も、それは同じです。志望動機は、採用担当者に読んでもらえる、納得してもらえるものとする必要があります。そのためには、業界研究をしっかりする必要があります。志望動機でなぜその業界、企業を志望するかを明らかにする必要があります。食品専門商社を志望するなら、他業界ではなくて、食品専門商社を志望する理由を明確にできるような業界研究をしましょう。総合商社ではなくて専門商社を志望する理由、食品メーカーではなくて食品専門商社を志望する理由、流通業ではなく専門商社を志望する理由が明らかな志望動機を書くようにしましょう。
また、食品専門商社業界は、2011年以降再編が進んでいますので各企業の特徴をおさえておくことも重要です。
現在の売り上げナンバー1企業は、三菱食品です。2011年に三菱商事傘下の食品卸子会社4社が経営統合して設立されました。加工食品・低温食品・酒類・菓子を扱うフルライン企業として総合力を高め、小売業様への提案力の基盤を強化している点が特徴的です。
ついで売上が高い企業が兵庫県に本社がある加藤産業株式会社。低音流通(冷凍食品、チルド、惣菜など)や酒類をはじめとした商品の卸売に強みを持ち、更にはジャムなど自社ブランドの製造にも力を入れています。
そして3位は伊藤忠食品株式会社。1886年の創業から130年の歴史を持ち、ワインをはじめとする酒類の商品に強みを持っています。
売上上位3社のうち、2社が大手総合商社の子会社であり、総合商社主導の業界再編が進んでいることが分かります。
食品専門商社の業務内容はどういったものでしょうか。本来の食品卸業務以外にも、企業それぞれに異なる事業展開をしているので、志望企業それぞれに関する企業研究をしておきましょう。三菱食品は、流通企業に対して新しい水産売場への提案、お惣菜関係のデリカ・フードサービス、業務用食材に特化したサービス「RYQUE(リクエ)」、ウェルネス市場への取り組みといったことを行っています。やはり総合商社の傘下にある住商フーズは、開発輸入型の食品専門商社で、食品原料や加工食品、生鮮食品、業務用食材の開発輸入ビジネスを行っています。日本アクセスは、ドライ・チルド・低温・生鮮・デリカと全温度帯で何十万もの商品を扱い、小売りだけでなく外食や中食など、すべての食品市場に対応しています。
食品専門商社は、食品の流通過程すべてに関わることができるだけに、食品に関する仕掛けを企画したり、オリジナル商品を企画したりといったこともできます。
また、人口減少による国内の市場縮小を見据え、海外進出に力を入れている企業もいれば、メーカーとの共同商品開発、データ分析に基づく需要予測力などサービスを提供することで、新しい価値を提供し利益を生み出す企業も増えてきています。淘汰されないためにどのような戦略を立てているのかを注目すると、各企業の個性がより見えてきますね。
では、食品専門商社の志望動機はどのように書いたらよいでしょうか。押さえておきたい3つのポイントがあります。1. 食品専門商社を志望する理由、2. その企業を志望する理由、3. どのような仕事をそこでしたいか。この3点を自分の経験を絡めながら書くなら、説得力のあるものとすることができます。
「日本は食品自給率の低い国ですが、だからこそ食のインフラを支える仕事は重要だと思います。私は、在学中に留学をし、そこで日本では食べたことのない味を知りました。世界中にはまだ自分たちの知らない食べ物があると思います。美味しいものを食べると幸せになれますから、世界の美味しいものを日本中に届けて幸せを広げられる仕事をしたいと思うようになったきっかけでした。御社は、グローバル規模で食品を扱っておられます。説明会でお話を伺った際に、卸はたくさんの商品を扱えるのでお客様に対して様々な食の提案ができると思いました。女性の社員の方のお話も聞けて、女性でも活躍できる場が多くあり、子供を持っても働き続けるサポート体制があることも伺いました。私も、長期的視野を持って働きたいと思っており、御社を志望いたしました。」
「私は食に関わる仕事をしたいとずっと思ってきました。しかし、メーカーでは扱う製品が限られてしまいます、また小売では自分の裁量で売る食品を選ぶ権限が少ないように思えます。食品専門商社であれば、食をトータルコーディネイトできます。特に御社は業界最大手であり、商品開発力、海外商品の発掘力、集積したデータを用いたトレンド予測をされています。予測した新たなトレンドを元に、様々な商品を扱う中間流通業の強みを生かして周辺商品とトータルで提案を行うことができる、食品卸という枠を超えて新しい食文化を主体的に発信する、そういった業務に自分も携わりたいと思っています。」
「食の力で人々の生活を豊かにする、というのが私の人生の目標です。食は、生活の基本的な要件ですが、人々のニーズは多様化し続けています。御社は、創業300年を超える歴史を持たれ、取引先との信頼関係に自信を感じました。また、全て個人面接で、一人ひとりを、どこの企業よりもしっかり見てくれていると思いました。多様化するニーズに対応するためには、個々を大事にする必要があると思い、御社の小商い精神に共感しました。効率重視だけでなく細やかにニーズをくみ取れる環境を、説明会、面接を通して実感しました。私も、この環境で目標に挑戦したいと思い、志望しました。」