3月に入り、企業へのエントリーシートを書く機会が増えてきた人も多いのでは?
そんななか必要なのは、「志望動機」。
毎年就活生で多いのが、企業の、もしくは企業がつくる商品の「ファン」であることから、選考を受けるケースです。興味を持っているという点では有利に働きますが、「ファン」のままでは、残念ながら良い結果にならないこともあります。
今だからこそ、「ファン」から企業にぜひ入社してほしいと思われる「人材候補」に変わるポイントを学びましょう。
ファンであるメリット・デメリットをまとめてみると以下のように考えられます。
■ファンであるメリット
1)知識が多い
2)興味関心が高い
3)熱意がある
■ファンであるデメリット
1)特定の箇所だけ興味があることが多い
2)好きであるが故のこだわりが強い
3)ビジネスではなく「好き」になってしまう
(※これらはあくまでも、一般的な受験学生と比較した場合です)
ファンである場合は圧倒的に熱意があり、興味関心が高いことが評価されますが、
その点は気をつけなければデメリットになってしまう恐れがあります。
例えば、「鉄道が大好きで、とくに思い入れのある路線を持つ鉄道会社に入りたい」と考えたとします。
その際に、多くの学生はエントリーシートや面接の志望動機で鉄道への興味関心について語りますが、こうした学生は次の質問に詰まってしまうことが多々あります。
「鉄道以外、他の分野でやりたいことはありますか」
鉄道会社の場合、いまや業務は幅広く、不動産・ショッピング・ICカード・イベントなど、鉄道以外の分野を担う人材も求められています。
面接官や試験官が「この学生はファンかどうか」はすぐにわかるもの。
熱意が十分に伝わったあと、「視野は広いのか」「企業を研究してきたか」を確かめるために、興味のないと思われる部分についてあえて質問を投げかけます。
その際に必ず答えられるように、企業研究など準備をしておく必要があります。
またその質問は、企業研究の有無を確かめるだけではなく、「本当にこの学生はうちの“会社”に入りたいのか」を確かめることができるのです。
人気の商品・事業の場合、そこに関われるのはごく一部の人員。ファンである学生を入社させた場合、その業務に関われるとは限りません。その他の部署に配属された時、モチベーションが下がらないか、十分に能力を発揮してくれるのか、を確かめていくのです。
デメリットの3つ目に挙げた「3)ビジネスではなく「好き」になってしまう」という点は特に気をつける必要があり、本気で入社するためには、(ファンにとどまらないためには)「意識を変える」必要があります。
では、意識を変えるためにはどのようにしたらよいでしょうか。
次に4つの問いを挙げてみましたので、一度考えてみましょう。
>>みなさんがその企業・商品のファンであり、好きなままでいられるのは「消費者」であるから、ともいえます。
お金を支払って好きなときに好きなものを買う、という行為自体にストレスを感じることはないはずです。しかし、これが「社員」となればどうでしょう。好きなものに対して、よりシビアな目線で物事をみる必要があります。また、業績によっては極端な話「打ち切り」「停止」に自らが関わっていくことがあるかもしれません。ファンではなく、なぜビジネスとして関わりたいのか、を自らに問いかけてみてください。
>>あなたが好きな商品は、その企業の中で、どのポジションにあるでしょうか。
というのも、新卒入社となると求める人物およびその配属は、おおよそ主要事業、もしくは新規事業となってきます。例えばあなたの好きな商品・サービスが、その会社にとって「CSR(企業の社会貢献活動)」や「広報の一部」など、直接企業の利益を生み出さない部門の場合、
その商品への思いを訴えすぎると逆効果になる場合があります。「興味をもったきっかけ」としては最適なのですが、「志望動機」や「入社してやってみたいこと」を問われた際に、答える内容としては不足しているといってよいでしょう。
わかりやすく弊社アイデムを例に出してみると、弊社の場合、日本プロサッカーリーグのトップパートナーになっており、毎年何名かその分野に興味を持っていただくことがあります。しかし、入社してそこに関われるのか、というとそうではありません。アイデムに興味を持っていただいた理由として「サッカー」は嬉しいのですが、ここで入社してやってみたいこととして「日本のサッカーの発展のためにがんばりたい」などと言われてしまうと、主要事業である「人材サービス」に興味があるのかな・・・・・・と思われてしまうかもしれません。
「その企業に入って何をしたいのか」という問いに対しては、「その企業のどの分野の利益を上げるために、どのような行動をしたいのか」と言い換えて、考えてみるとよいでしょう。
>>先日、「●●というマンガが大好きで出版社に入りたい」という学生さんとお話をしたのですが、その作品に対して、キャラクターやストーリーの評論はできるものの、事業としては考えたことがないようでした。
ファンとして「マンガ作品としての成功」を考えており、「事業の発展・成功」までは考えが及んでいなかったようです。もちろん「作品が大好き!」という気持ち自体は、担当者に伝えるべきですが、それだけではなく「自分が好きな作品を5年後まで、この雑誌のメイン作品にさせるにはどのような動きが必要だろうか、この会社に利益をあげる作品にするにはどのような展開をしていくべきなのか」と考えてみるのもよいでしょう。
考えた結果「好きな作品の継続」ではなく、「新たなヒット作品をうみだす仕組みを作る」などの考えにいたっても構わないのではないかと思います。自分なりの考えが出来た際にはぜひOB・OG訪問や会社説明会などで一度聞いてもらうとよいでしょう。
>>好きな商品と同業の商品の比較をしてみましょう。好きであれば「●●という会社は××が強いが、▼▼という会社は■■が強い」などある程度分かる人も多いのではないでしょうか。同じ分野の商品を販売する際に、企業によっても考え方は違うはず。
例えば自動車メーカーであれば、とある企業は「一つの技術に特化し、その技術を生かしたこだわりの商品を生み出す」ことを強みにしているかもしれませんが、違う企業は「多くの商品を生み出し、多様なニーズを持つ消費者が選択できるように毎年改良している」ことを強みにしているかもしれません。企業のどのような考えに共感を持てるのか、ぜひ考えてみてください。その結果「商品は好きだが、この考えに共感が持てないので選考を受けない」といった結論になるかもしれません。逆に「商品にあまり興味を持っていなかったが、調べていくうちに企業としての考えに共感するようになったから選考を受ける」という企業がでてくるかもしれません。
では次に、ファンである強みを生かしていきましょう。
それは企業を深堀して調べていく、企業研究のときに発揮されるはずです。
企業自体に興味のある人はぜひ、企業ホームページの「IR情報」を確認することをおすすめします。IR情報とは「企業が株主や投資家に対して財務状況や企業戦略など投資に必要と思われる情報を公開し、信頼関係を築くための活動の1つ」で、上場企業を中心に公開されています。この中には、事業別の売り上げや今後の事業展開について、書かれています。また「今、自社が置かれている厳しい環境や、業績の悪い事業、それへの対策」も書かれているので、客観的にその企業の状況を見ることができます。そこでは自分が好きな商品の実態も明らかになり、現実をみることも有るかと思いますが、それでもなお、その企業を受けたいという場合にはこの資料を活用し、選考を受けていくことをおすすめします。
▼補足:IR情報とは
https://gakusei.jobrass.com/info/ir/
いかがでしたか?
ファンであることが、就活中にかぎって邪魔をする可能性があるのが、「過剰な思い入れ」です。
思い入れはときに「自己中心的な考え」を生み出すことにつながってしまうことがあるからです。
少々厳しいかもしれませんが、社員になるということは「好きになる人を増やし利益をあげていく活動」を日々していく必要があります。自分がファンとして楽しむ時間が奪われてしまうかもしれません。
しかし企業に対して「好き」と言ってくれる学生は単純にうれしいもので、ファンである人が入社すると、おそらく「没頭」することもできる人材であるはずです。
今後は「ファンである」ことを強みにして、「人材として働きたい気持ち」を担当者に伝えられるよう、時には冷静に、客観的に業界研究・企業研究をすすめていきましょう。