志望動機を書く際に気を付ける点は志望する業界によって違ってきます。地方銀行への志望動機であれば、「その業界=地方銀行を志望する理由」と「その企業=志望している地方銀行を志望する理由」に触れる必要があります。数ある金融機関の中で地方銀行を志望する理由を考える際には、まずどういった特徴があるのかを把握しましょう。
(※こちらの記事は、2016年2月23日に公開したものを更新しています。)
他の金融機関ではなく、地方銀行を志望しているのはなぜでしょうか。まず、地方銀行の他の金融機関との違いを考えてみましょう。地方銀行の特徴が見えてきます。
■「故郷をもつ銀行」:地元を中心に展開
地方銀行は、各都道府県に本店があり、その地方を中心に営業を展開します。その地方の主要企業を顧客に持つことも多く、大規模開発の際に不動産ディベロッパーと提携する等、地域経済に大きな影響力があります。金融活動以外にも、セミナーやコンサートといった文化活動を開催したり、スポーツ大会に協賛したりと、地域でのイベントに積極的に参加することにより、地域経済の担い手としての役割を持っています。
地元の企業や個人を対象に地域社会に根付いた活動を長期にわたって行っているため、蓄積された地元に関する情報を膨大に有しています。その情報を経営に反映させることで、地元に必要な、地元の利便性向上につながるサービスを生み出すことができます。個人向けの、その地方ごとに特徴のある金融商品を提供しています。地域内にあるATMや支店の数も多く、県一帯の市町村をほぼ網羅しているので、地元の人々にとって最も身近で便利な存在です。
■リレーションシップ・バンキングの担い手
リレーションシップ・バンキングは、金融庁の金融再生プログラムの一環にあるビジネスプログラムです。金融機関が、借り手である顧客との間に親密な関係を継続して維持することにより、通常入手しにくい、借り手の信用情報などを含む情報を入手し、その情報を基に融資等の金融サービスを提供するビジネスモデルです。貸し出し時の審査コストの軽減、早期の事業再生支援が可能になるといったメリットがあります。
地方銀行は、地域に密着した経済活動を行っているので、リレーションシップ・バンキングを中心的に行っていく存在です。
■第一と第二、2つに分けられる違いは?
地方銀行は金融庁の「免許・登録業者一覧」において第一と第二の2つに区分されています。普段、意識することはあまりありませんが、歴史的な違いがあります。
第一地方銀行は、元々普通銀行として営業活動を行っていた銀行です。全国地方銀行協会の会員である銀行は64行あります。歴史が古く、比較的規模が大きい銀行です。
第二地方銀行は元々相互銀行として営業していた銀行で、1989年以降、「金融機関の合併及び転換に関する法律」に基づいて株式会社へと転換し普通銀行となった銀行です。全国第二地方銀行協会の会員である銀行は、41行あります。
地方銀行は地元の特徴を反映して、それぞれに異なる特徴ある活動を行っています。実際に行われている活動例をいくつか挙げてみます。志望動機を考える際には、志望先の銀行が独自にどのような活動を行っているのか、押さえておくようにしましょう。
■地方創生に向けた取り組み
地方の特産品のローカルブランド力向上のために、地元大学や生産者と連携し、地域資源を活かした新商品の開発や販路の開拓を行っています。
・山形銀行:山形県産米を使用した日本酒「桜三蔵」の開発支援
・千葉銀行:千葉県産梨を活用した新たな特産品群の開発と販路開拓
・南都銀行:奈良県産三輪素麺を活用した地域活性化支援
■地域の街づくりに関わる課題の解決に貢献
地元の抱える問題を解決するために、空き家対策、中心市街地活性化プロジェクト、IターンやUターンといった地域への移住促進といった活動を行っています。
・東北銀行:PPP/PFIによる都市整備事業「オーガルプロジェクト」への支援
・滋賀銀行:まちなか居住の促進のための「長浜町屋住宅ローン」の取扱い開始
■地方銀行間のネットワークを活かした地域支援サービス
地元を超えてさらに広い地域として地元企業が活躍できるよう、各地域の地方銀行がともに観光資源の育成や新たなビジネス展開への支援を行う取り組みが始まっています。
・常陽銀行、足利銀行、群馬銀行:北関東の食関連事業者の販路開拓支援のために、「アグリフードフェスタ2015 in 宇都宮」の開催
・八十二銀行、富山銀行:北陸新幹線開業を見据えた商談会「ディスカバー信州&北陸」の開催
・中国銀行、広島銀行、山口銀行、阿波銀行、百十四銀行、伊予銀行:中国・四国地方の地銀6行と地方公共団体等が、瀬戸内地域の観光産業の活性化に関する連携協定を締結
地方銀行の特徴、各地方銀行の取り組みの特徴の例、といったものを見てきました。志望先の特徴を押さえて、どのように志望動機にまとめられるでしょうか。ポイントは、「志望先の地元への想い」と「志望先銀行の特徴的な取り組み」です。この2点に自分の経験やエピソードを絡めて、説得力のある志望動機を考えましょう。いくつか具体的な例文を見てみましょう。
■地方銀行の最大手、横浜銀行の場合
「生きていくうえでなくてはならない大切なお金に携わることで、人に影響を与える仕事をしたいと思い、金融業界を志望しています。数ある銀行の中で、貴行を志望する理由は2つあります。まず、横浜という土地です。私の生まれ育った地元ということもあり、ずっと身近な存在でした。貴行のインターンシップやOB訪問を通して、多くの行員の方とお会いでき、さらに強い親近感を覚えました。2つ目は、マーケットとしての横浜と貴行の関わりです。県内総生産全国4位であり巨大なマーケットを誇る神奈川県という地盤と地銀でトップの総資産額を持つ貴行で、様々なリソースを駆使し、地域の持続的発展を支えることができると考えています。」
■信州の活性化のための事業を多く手掛けている、八十二銀行の場合
「長いスパンでお客さまのために取り組め、お客さまの人生を支えることができる仕事をしたいと思い、銀行を志望しています。大学で学ぶために住み始めた信州ですが、今では第二の故郷だと思っています。地元長野県のもつ多様な可能性を応援できる仕事ができたらと思ってきました。貴行は、地銀フードセレクションを先駆けて行われ、地銀トップクラスの海外ネットワークを活かして世界に信州を発信するといった“信州を活性化させる”活動を熱心に行われています。是非、私もその活動の一端を担いたいと考えました。」
■九州のナンバーワン銀行、西日本シティ銀行の場合
「地元が福岡なので、そこに貢献できる仕事をしたいと思っていました。地方銀行は、地域経済・社会を支えていくことができる点に魅力があります。御行は、日本の約99%を占める中小企業への貸出比率が高く、中小企業へのサポートを通して地元九州の経済発展に貢献できると思いました。セミナーや企業訪門を通して出会った行員の方々の人柄にも惹かれ、規模だけでなくお客様からの信頼でトップを目指すという社風にも魅力を感じました。」
参照元サイト
https://www.chiginkyo.or.jp/app/story.php?story_id=881