「2015年最大のIPO、日本郵政3社のIPO、稼ぐなら今すぐ申し込みを!」 といった見出しをご覧になったかもしれません。日本郵政はわかるけれど、IPO? 稼ぐ? どういうことだろうと思った方もいらっしゃいませんか。
就職活動では押さえておきたい時事ネタの一つ、おさらいしてみましょう。
IPOは、「Initial(初めての)Public(公開の)Offering(提供)」の頭文字をとったものです。まとめて訳すと、「新規公開提供」となります。未上場企業が、新規に証券取引所に上場することを指します。初めて、なので再上場は含まれません。「株式を上場」すると、証券取引所を通じて誰でもその企業の株式を自由に取引、売買できるようになります。IPOとは、「新規株式公開」「最初の公開売り出し」とも言われています。
・企業はなぜIPOを行うのでしょうか。IPOのメリットは?
IPOつまり未公開株の上場を行うのはなぜでしょうか。
会社の株式を広く売買できるようにしておくと、次の3つができるようになります。
■新株の発行で資金調達
■経営戦略に従って、適切なタイミングで資金調達
■事業拡大や新規部門参入時に、自力で資金調達
また、「一部上場企業」への信頼度、知名度というのも高いです。IPOによって調達した資金を、宣伝に回すこともできるので、知名度も上がります。知名度が上がると、採用や営業の際にもメリットになるので、企業の利益面でも向上が期待でき、好循環が見込まれます。
facebookの創業者ザッカーバーグ氏が夫妻で所有している株式の99%を慈善活動に寄付すると発表し話題になっていました。facebookが株式を上場した際の彼らの創業者利益は2兆円を超える額になると言われていましたから、すごい額ですよね。IPO株は、創業者に大きな利益をもたらす、というメリットもあるようです。
・IPOのデメリット
デメリットの最大のものは、株式を公開するということにより、当然ながら経営に関わってくる株主を受け入れる必要が出てくることでしょう。株主になるということは、経営権を持ち株の割合に応じて持つ、という意味になります。場合によっては、他社に買収されるリスクも発生するかもしれません。
株式を上場すると、取引所への上場料もかかりますし、決算書等を公開する義務も生じます。そういった事務費用というものもかかってきます。
創業者利益についても、利益は株を売って初めて得られるものです。創業者が経営に関わり続けている場合がほとんどだと思われますが、株式を上場した直後に、経営層が株式を売り出すなら、その企業への信用度が下がってしまいます。当然、利益を得られるかどうかはIPOを行った後の経営状況にかかっているといえるでしょう。
・IPO株はなぜ儲かるといわれているのでしょうか?
IPO株は、上場される前に価格が決められて販売されます。上場されると、初値がつきますが、その初値がたいていの場合は売り出された価格よりも高くなるために、初値がついてから売るとほぼ確実に儲かると言われています。
なぜ、売り出し価格は初値よりも安く設定されるのでしょうか。IPO株は、証券会社が入札によって販売権を獲得します。売れ残ってしまった場合には、証券会社が買い取らなくてはなりません。そこで、売り出された株が確実に捌ける価格を設定することになります。そのため、適正価格よりも安めで売りだされることが多くなるのです。
IPOを行う企業は、比較的経営年数の短い、新しい会社であることが多く、新たな発展のためにIPOを行うケースも多くなっています。企業が発展すると、株価も当然上がりますから、初値で売らなくても、儲かる可能性も高くなっています。また、将来性が見込まれる企業であればあるほど、上場後の初値が高くなる傾向もあります。
日本郵政はどうしてIPOを行ったのでしょうか。IPOによって、完全民営化されたという日本郵政グループの3社。上場によって、日本郵政という企業体や、私たち国民にはどのような影響があったのでしょうか。
日本郵政としてIPOの意味は? 株式上場の目的として、日本郵政は次の3点を挙げています。
・「経営の自由度の拡大」と「自律的な経営体制の確立」
日本郵政グループの3社は、上場によって完全民営化されました。完全民営化される前の状況では、株主は国だったので、利益重視がそれほど大事という雰囲気ではありませんでした。ある意味、国から守られていたともいえるかもしれません。一方で、国による規制による縛りもありました。民営化した日本郵政のグループ3社、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命はそれぞれの業態の他の企業と同じ条件の下、利益追求した経営を行うことができるようになります。例えば、ゆうちょ銀行には他の銀行にはない預金制限があります。これを外すことも可能になります。
また、「住宅ローン」は販売していませんが、こういった金融商品の幅を広げていくことも可能になります。利益追求ができる経営戦略をとることができるようになります。
・「東日本大震災復興への貢献」
日本郵政グループが上場される前の日本郵政株の持ち主は国でした。創業者利益ともいえるIPOの株式売却益を、政府は、4兆円は必要とされている復興財源に充てることができます。
・IPOによるデメリットはあるのか。
もちろん、株式上場によるリスクは、他の企業同様出てこないとはいえません。しかし、今回のIPOでは、国内販売分の9割以上は個人投資家に販売されたといいます。「民営化された超優良企業」である日本郵政3社は、倒産リスクが非常に低い「安定配当銘柄」とみられており、購入した個人投資家の多くは「資産株」として株式を保持していくとみられています。実際、IPO株の売り出し価格をベースにした配当利回りは、東京証券取引所1部上場銘柄平均を上回るものでした。この状態が続くなら、IPOのリスクである企業買収の可能性は非常に低いといえます。
・日本郵政のIPOが私たちに与える影響は?
IPO株を購入した投資家であるなら、配当利益を受けることもできますし、購入価格をかなり上回った価格で売って売却益を得ることもできるかもしれません。今回のIPOの場合、日本郵政のIPO株売り出し価格は1400円に対して初値は1631円、ゆうちょ銀行が1450円に対して1680円、かんぽ生命が2200円のIPO売り出し価格に初値が2929円をつけました。株式の売り出しから初値まで最長まで2か月ほどと考えると、15%近い利率となっているのです。売ることなく「資産株」として保持するなら、IPO後の連結配当性向は50%以上を目安に、安定的な配当を目指す、ということですから、これまた利率の良い資産となるのではないでしょうか。
投資家でない私のような国民にとってはどうでしょうか。郵政3社が利益を追求し新しいサービスや新製品を提供してくれるようになるなら、私たちにとっては選択肢が増えることになるので、メリットがあるといえます。しかし、利益追求のために不採算部門を切っていくような経営をするなら、過疎地の郵便局はなくなってしまうのではないかという心配が出てくるかもしれません。しかし、心配には及ばないようです。日本郵政のホームページによると、株式上場をしたとしても、法律で「ユニバーサルサービスの義務」があるため、例え利益がとれないとしても、過疎地でのサービス提供は続くとのことです。また、郵便局を運営している日本郵便は、今回IPOを行った3社の中には入っていませんから、郵便局がなくなる心配は、IPOと関係なく、ないようです。
参照元サイト
https://www.japanpost.jp/ir/faq/index02.html