突然ですが、質問です。
みなさんは、就職したらその会社で長期間ずっと働きたいと思いますか?
それとも、1社にこだわらず自分にとって良い環境であれば転職もしてもよい、と思っていますか?
まだ入社してもいないのだから、なかなか想像はつかないかもしれませんが、意外と就職観が分かれるのがこの質問です。
できるならば、管理職になるまで働きたいのか、それともそのときそのときの自分の状況にあわせて柔軟に転職も考えていくのか人さまざまです。
就職をすると会社の先輩や親など社会人の先輩から言われるのが「入社したらとりあえず3年はがんばって働きなさい」ということ。企業や業種問わず、決まりきったフレーズとしてよく使われれます。
なぜ「3年」なのでしょうか。
それは「3年間でようやく一企業のなかで活躍できる」と考えられているからです。活躍できるというのは、営業であれ、事務職であれ、企業を「理解」し、社員として業務を「推進」することができるということです。一般的に新卒で入社すると、1ヶ月~半年、研修が行われ「知る」ことからスタートします。1年目は会社を知ること、業務を知ること、そのほか社会人としてのマナーを知ることなど、一通りのことを学ぶことになります。そして、研修が終了すると、配属が決定し、さらに配属先の業務を知る……という学びの連続であっという間に終わってしまうのが、1年目なのです。朝早く起きて出社する、など生活習慣を身に付けるのもこれに含まれます。
そして2年目は、1年目に「知った」ことを「行動」に移し「慣れて」いきます。例えば、営業であれば顧客への提案・販売の推進から自分自身の売り上げ管理まで、一通りのことを「行動」していくのです。
早い人であれば、教育担当になることもあるでしょう。当然ながら「知っている」ことを前提に話は進んでいくので、1年目よりは当然ハードルはあがっていきます。
3年目になると、今度は一通り業務に慣れたからこそ、自社について、業務について、客観的に見えてくるようになります。そのため、「ここはこのほうがよいのではないか」「これを取り入れた方が利益になるのではないか」という業務を「変えていく」一員となる可能性が高くなります。差異はあれどもある程度の業務を「任される」のも3年目の特徴といえるでしょう。
3年間で「知る・行動する・改善する」ができるようになるといわれているのです。
ベンチャー企業や大手企業など企業の風土によって当然このスピード感は変わりますが、3年間は一つの区切りともいえるでしょう。当然その後は異動したり、関わる業務が深く、関わる人数も増えるようになり、会社全体の業務を任されるようになるというわけです。
また、転職をする際も、「1年目でやめてしまったのか」という印象が強くなります。どうしても「短期間働いて転職しようとしている」という事実は、第一印象はマイナスにみられがちです。だからこそ、社会人が言う「3年働けよ! 」という言葉には、3年目になるまでにやめてしまうと「企業のことを知っている」「マナーを学んだ」「業務をこなす」でとどまってしまい「もったいない」という意味合いが強くなるのです。
とはいえ、必ずしも3年働け。ということではありません。1年で転職しようとも、ずっと1社で働き続けようとも、みなさんの決断次第です。
厚生労働省が2015年10月30日に発表した調査によると、2012年3月に大学を卒業した就労者が新卒から3年以内に就職先を辞めた人の割合(離職率)は32.3%で、3年連続で30%を超えています。一般的には「最近の若者は3割も辞めるのか!」というネガティブな意見も多いですが、考え方も働き方も多様化している社会においては、一概に高いとは言えないのではないでしょうか。
大切なのは「いまの自分自身がどのように働きたいのか」しっかりと考えて、就職活動を進めていくことです。「とりあえず就職」「とりあえず3年」といった行動は改めた方がよいでしょう。
当然、上記に書いてある「3年間で1人前になる」という考え方もありますが、日本人はよく数字の「3」を利用するともいわれています。
考えてみると「石の上にも3年」「三度目の正直」といったことわざや「日本三景」「3大●●」といったように日本語には「3」がつくことが多くあります。縁起の良さや思想なども理由としては考えられていますが3は「調和のとれた数字」といえるのです。2や4など、割り切れる数字では「白黒はっきりつける」という言葉や「対立」を予感させますが、3は「割り切れない」数値のため、曖昧さを好む日本人が好みやすいといわれています。もしかすると3という数値の使いやすさが「とりあえず3年」につながっているのかもしれませんね。