IT技術の発展により、20年後には現存の仕事の大半が機械による自動化に移り変わっていくと言われています。つまり、今ある職種が消えていく可能性があるということです。そんな時代において、むしろIT化でも無くならない仕事とは何なのか。ここでは、そんな仕事について取り上げてみましょう。
IT技術の発展は、私たちの生活をより便利なものとしてくれました。さらにIT化のスピードは加速しており、今後も私たちを取り巻く環境はどんどん変わっていくことでしょう。
ITと呼ばれる技術の応用は、まずこれまで人間が行っていた作業を、コンピューターによって自動化していくことにあります。そしてもうひとつ、新たに社会や日常生活の便利さを追求する新サービスを生み出していくことも挙げられるでしょう。IC(集積回路)の誕生によってパーソナルコンピューター(パソコン)が世に生み出され、次第に普及が始まりました。90年代からインターネットが普及するとさまざまな情報がネットワークされるようになり、コミュニケーションのスタイルも多様化してきています。IT化が進み始めた当時に流行した情報用語「マルチメディア」は音声や画像などの組み合わせによる表現方法ですが、これもまたIT技術の賜物です。
このように社会へさまざまな変化を生んできたIT技術。今や通信産業や製造業、金融業、行政サービス、教育産業、福祉、小売業、そしてコミュニケーション分野で、改革とも呼ばれる大きな波を起こしています。IT技術の進歩によって、これからますます便利なサービスや製品が開発されることでしょう。しかしそれと同時に、私たちはその大きな変化に対応していかなければなりません。これは、働き方も同様です。
技術の革新によって人間の仕事が奪われていくといことは、20世紀に起きた工場のOA化でも言われました。しかしその際にはOA化による労働の効率化に伴い、生産性が大幅に向上するという良い結果を生んでいます。仮に企業がIT技術の発展によって利益を上げた場合、OA化のようにその利益が労働者にまで還元されるでしょうか。現代においては、むしろIT化によって仕事が変化あるいは消失する可能性すら考えられます。
例えば現在の教育分野では、eラーニングやオンライン学習の環境がもてはやされています。一般の教育現場でも活発に導入され、教師のあり方は変わらざるを得ない状況にあるのです。つまり勉強はIT技術によって教えることができ、教師の存在と役割は「勉強を教える」というものから少しずつ他の領域へとシフトしていく可能性があります。
そしてIT化が進むと、単純作業や反復作業などはロボットに任せてしまうことができるようになります。例えば建築業や製造業では、人間の関わる業務が減少していくことでしょう。さらに物流の倉庫作業や企業の受付業務、コールセンター業務なども、IT化が進むにつれてその必要性が希薄になっていきます。
また、IT技術の情報とセンサー技術を融合させれば、乗り物の自動運転によってドライバーがいらなくなる可能性も出てきます。事務職全般の仕事もコンピューターでシステム化できますので、人数が大幅に削減されるかもしれません。販売業もネットショッピングが主流になればなるほど、店舗の必要性が薄れていきます。フラッグシップの店舗だけを残し、あとはブランドの広報活動に取り組む人材だけいれば成り立っていくことになるのです。このようにITの技術革新によって生活が便利になっていく過程で、消えていく職業が出てくる可能性は否めません。
ではそんな中、IT化が進んでも無くならない仕事は何なのか。それはつまり、IT化の影響を受けにくい立場にある仕事とも言い換えられるでしょう。簡単に言えば、コンピューター技術には簡単に置き換えられない、人間の持つ専門技術が必要とされる仕事です。
例えばコンピューターにはできない、人とのつながりが必要な仕事。たとえばホームヘルパーなどの介護職や看護師、教師などが該当します。ただし先に述べた通り、教師などはその役割がIT化によって変化していくかもしれません。また、その他には想像性のあるクリエイティブな仕事も、カテゴリーとして含まれるでしょう。
人間は、考えて行動することができます。しかしロボット技術は、まだそこまで完璧ではありません。創造的なデザイン制作や文章作成、芸術分野や芸能分野のようなクリエイティブな分野は生き残ることが期待できます。もちろんクリエイティブな仕事と言っても、広告業や芸術家だけではありません。創造性と柔軟性が求められる仕事は、その他にもさまざまです。
また、状況による臨機応変な対応が求められる仕事も、IT化の影響を受けにくいでしょう。例えばインスタントラーメンは機械製造で作れても、秘伝のスープを作り出し、客の好みに応じて味の調整も行うようなラーメンは作れません。
IT技術の発展に伴い、仕事を取り巻く環境は少しずつ変化しています。実際にコンピューターの導入により、仕事内容が変わったという声は少なくありません。今取り組んでいる仕事が無くなる可能性も、ゼロとはいえないでしょう。そのため、時代の変化をしっかり捉え、IT化によって失われない仕事を見つけていくことが大切です。