就活が始まると、業界研究や企業分析、そして志望先の選定など、やることが山積みになります。情報収集は欠かすことができず、説明会などでもらうパンフレットのほか、各出版社による「業界地図」や新聞、あるいはインターネットサイトなどを参考にする方も多いことでしょう。
そうした情報の中、「IR資料」を参考にする学生が多く見られます。。しかしこのはIR資料、学生にとってはあまり馴染みのないものではないでしょうか。「そもそも、IRって何?」という学生は、少なくないはずです。
「IR」という言葉は、「Investor (投資者・出資者)Relations(関係)
の頭文字からきています。つまりIR資料は、株式会社であれば出資してくれる株主に対して経営情報を提供するための資料のことです。その資料には、決算や事業に関する説明会の開催についての案内や決算書を含む年次報告書などの資料、ホームページ上の情報などが含まれます。以前は、大口投資家や証券アナリストを対象として資料を提供する企業がほとんどでした。しかし現在では、個人投資家やそれ以外の人でも「IR資料」を見ることができるようになっています。
そんな「IR資料」の役割は、投資家にその企業の財務・経営状況を正確に分かりやすく伝えることです。また、企業に関する客観的な情報が記載されていることから、企業の置かれている状況や将来どのような方向に進んで行くかなどを予測するための材料にもなります。つまり就活生にとっても、企業の現況や将来性などを知るうえで役に立つ情報だと言えるでしょう。
企業説明会やOB・OG訪問、インターンといった活動では知ることができない情報。その獲得は、他学生と比べてもより深く企業研究をすることに繋がります。志望度を高め、面接などでの回答に具体的な根拠を持たせることにも役立つでしょう。
多くの出版社から出されている「業界地図にも、売上高やシェア、社員数や支店の所在、将来の展望などが、同業他社を比較できる形で載っています。しかしそのような情報は、就活生の多くが共通して持っているです。就活生の多くが、そうした業界地図や企業説明会のパンフレット、企業のームページなど公の情報を、業界研究や企業研究のを参考にしています。しかしそれでは、他学生から自分自身を差別化し、アピールすることは難しいでしょう。
そこで、「IR資料」を使ってさまざまな角度から企業研究を行うための方法を知り、実践していくことをおすすめします。
「IR資料」は本屋さんでは手に入りません。また、上場していない企業の「IR資料」も、開示義務がないため入手するのは難しいでしょう。上場企業の場合、その多くはホームページ内の「投資家情報(IR情報)といったページに、投資家向けのさまざまな情報を掲載しています。普通の学生はなかなか開かないページですが、一般にも閲覧できますので開いてみましょう。
「IR資料」というと、すぐに決算書を思い浮かべてしまう方は多いでしょう。しかしその内容は、決算情報だけではありません。企業全体をイメージしやすいのは、何と言っても企業に関する説明会資料です。もちろん、特にその中の決算に関する情報は、外部の人にもわかりやすく作られています。企業の数字に親しみのない方でも、基本的な情報は知ることができるはずです。
学生ならば、決算書あるいは損益計算書というものを見たことのない人は多いはずです。これらの書類には、売上高を含め利益に関することも記載されています。新聞の経済欄やテレビのニューズなどで、例えば「粉飾決算によって、大幅な業績の上乗せが行われた」などと聞くことがあるでしょうを目にすることもあるでしょう。しかしほとんどの場合、決算書や損益計算書には、正しい数字が記されているので安心してください。なぜなら数字が故意に操作されていることが発覚すると、企業に対する信頼が失墜するだけでなく、さまざまなペナルティが課されることになるからです。下手をすると、企業の存続にもかかわる事態になる可能性もあります。
せっかく決算書や損益計算書を見るのであれば、売上高だけではなく「営業利益」や「経常利益」も見ましょう。「営業利益というのは、売上高から人件費や材料費、広告宣伝費などのら経費を差し引いたものです。つまり、本業で生み出された利益を表します。よって、売上高が大きくても多額の経費を支出すると、「営業利益は少なくなるというわけです。これに対して「経常利益は、「営業利益に預金の受取利息など本業以外で得た収益を足し、借入のある金融機関に支払う利息などの営業外費用を差し引いたものです。つまり、「経常利益はその企業全体の利益を表しているため、たとえ本業が順調でも、借入金を返済したり借入の際に約束した金利が高いなどで支払う利息の金額が大きいと、その数字が少なくなるのです。
その企業が「本業も含めて全体としてどうか」という現況を見るためには、「経常利益」に注目しましょう。なぜなら本業のみに左右される営業利益だけでは、企業の置かれた状況がわからないからです。経常利益に着目することで、企業の資産運用や借入などが推測できます。そのため、金融機関や取引先、株主はこれを最重要視しているのです。
そして決算書の数字を見ると同時に、売上高の推移、今後の業況の見通し、業界全体が置かれている状況を「IR資料」で分析してみましょう。また、企業自体が現状をどのようにとらえ、将来に向けてどのような戦略を立てているのかを「業績ハイライト」のようなカテゴリで見ることも大切です。
まずは参考として、気になる企業の「IR資料」を眺めることから始めてみてはいかがでしょうか。それから興味のある企業数社の「IR資料」を見比べることで、各企業の特色などが見えてきます。新卒での就職を目指す大切な企業ですから、情報を深掘りし、現況のみならず将来にまで目を向けて選びたいものです。その情報は、業界研究や企業研究のみならず、実際の面接選考などでも活かされます。