企業の販促・広報において、広告代理店の存在は欠かせません。中でもインターネットの普及により、インターネット広告の需要は高まっています。ニーズの増加・多様化に伴い、広告代理店を就職先候補の1つに置く就活生は少なくないでしょう。
しかし広告代理店について、そのビジネスモデルを明確に理解している人は多くないようです。いったい、どのような収益構造を持ってビジネスを展開しているのか。そんな広告代理店のビジネスモデルについて、詳しく紐解いていきましょう。
広告代理店のビジネスは、広告を出稿しようとする広告主に対して、様々なメディアが保有している広告枠を販売。その販売料金から得る手数料(コミッション)を収益としています。尚、メディアにはテレビやラジオ、新聞、雑誌、デジタルサイネージ、インターネットなどが挙げられます。
・商品を売るために広告を出す「広告主」
・商品を露出(紹介)する広告メディアを持っている「メディア運営者」
この双方のニーズを合わせて手数料(コミッション)を得るというスタイルが、広告代理店の収益構造です。こうして見れば、非常に単純な仕組みと言えるでしょう。もちろん各メディア運営者にも、営業担当がいます。そのため、クライアントにニーズがあるのであれば、直接メディア側からその広告枠を販売すれば良いと思われるかもしれません。実際に営業行為として、メディア運営者も販売は行っています。
しかし数多くのクライアント先へ個別に通い、自社メディアの広告枠を売り歩くには大きな労力を伴います。それならば広告代理店に営業権を預け、代わりに販売してもらった方が効率的と言えるでしょう。そうした理由から、こうしたコミッションシステムのビジネスモデルは長期にわたって成立しているのです。
ただし広告代理店には、このコミッション以外にも収益があります。それは、広告枠に掲載する制作物(TVCM、ラジオCM、新聞・雑誌広告、交通広告、屋外広告、ネット広告)の受注制作費です。広告出稿先となるメディアを確保しても、メディアに掲載する制作物がなければ宣伝活動は成り立ちません。そのため、広告代理店はその制作も合わせて受注し、その成果物に対しての利益を得ているのです。
その他にも広告代理店は広告に関わるもの以外に、さまざまなプロモーション企画やイベント運営、マーケティング手法を用いた商品開発サポートなど、多方面から収益を得ています。
デジタル技術の急速な発展に伴い、2001年頃からインターネットが本格的に普及し始めました。それ以降、インターネット広告という市場が新たに誕生したことで、広告業界の収益構造に多少の変化が始まりました。
既存メディアの広告枠には限りがありますが、それに対しインターネットメディアは、その数が無限大に広がります。そのため取扱高は年々増え、今やテレビに次ぐ規模の広告メディアにまでに成長しています。インターネット分野だからこそできる新たな広告手法は、インターネット広告専業の広告代理店も登場するほどに成長しているのです。中には、大手広告代理店がM&Aや出資などを通じてインターネット関連の広告子会社をグループ化するなど、今後もインターネット広告の収益額はますます伸びていくことと推測できるでしょう。
インターネット広告の登場によって、さまざまなテクノロジーが開発され、広告ビジネスで活用されています。例えばユーザーの行動や志向性を分析し、その人にマッチした広告を最適なメディアへ展開するユーザーとのコミュニケーション手段の提案。従来の単なる「広告出稿の扱い業務だけではなく、「消費者へ価値あるコンテンツ提供」を行っています。これは、多種多様なデータを詳細かつ大量に処理し、一人一人に最適なマーケティング手法を適用することで、無駄のない広告効果を期待できるという手法です。
その他にも、インターネットの活用で新たな広告手法が展開されています。代表的なものが、ブログやSNSを利用した「バズマーケティング(口コミマーケティング)」と呼ばれるものです。これは口コミで評判を広げていき、消費者の商品購買意欲を引き出していこうという手法となっています。具体的には、広告代理店が商品をモニターできるイベントを開催。その会場にブロガーを招待して、感想をブログへアップしてもらいます。これにより、ブログの読者へその商品を訴求していくという方法です。あるいはSNS上でキャンペーンや告知を展開し、人気を広げていく手法もあります。
また、異なるメディアとの組み合わせで広告効果をアップさせていく「クロスメディア・マーケティング」という広告手法も考えられるでしょう。例えばテレビなどで概要を紹介誌、詳しい情報はWebへと誘致して提供するというものです。このように広告代理店の業務は、インターネットの普及によって多様化しています。
企業はより多くの人々との接点を持つべく、日々広告を含んだ広報戦略を練っています。また、広告枠を提供する側も、どんどん新たな技術・手法を開発しているのです。広告代理店は常に企業側のニーズへアンテナを張りながら、技術面でも知識レベルを磨いていくことが大切と言えるでしょう。