皆さんは、志望先企業の情報を見るとき、「福利厚生」もきちんとチェックしていますか? ついつい基本給だけ見比べて、自分の中でなんとなく優劣をつけてしまっていませんか?
「福利厚生」とは、従業員とその家族の“幸福”や“利益”のために、各企業が設けている制度や施設のこと。企業によっては、保険・住宅・教育などで支出する際に賃金以外の手当がもらえたり、社員寮・住宅、保養施設などの福利厚生施設があったりするので、企業研究をするにあたってはぜひ抑えておきたい大事なポイントです。
実際、基本給だけでなく「福利厚生」にも注目しながら2つの企業を比べてみたところ、基本給では劣ると思っていた企業が、トータルではお得だということに気付いたという例もあります。もちろん、企業選びに関しては業務内容なども重要ですから、それだけでどちらの会社が良いのか簡単に選ぶことはできませんが、知っておくと企業への理解もグッと深まるはず。
今回は、この「福利厚生」について、改めて勉強していきましょう。
企業によっては、「住宅手当」や「家族手当」が手厚い場合があります。
改めて、この2つをおさらいしておきましょう。
■住宅手当
企業が従業員の生活を気遣い、住宅費用を支給する福利厚生のこと。主に、賃貸物件の家賃の一部を負担するケースと、従業員の持ち家の住宅ローン返済を補助するケースがあります。この住宅手当は、企業によって必ず設けているわけでなく、金額も様々ですが、大体月に1~2万円前後が一般的のようです。
■家族手当
配偶者や子供のいる社員に対して、基本給とは別に費用を支給する福利厚生のこと。会社によって金額に違いがありますが、配偶者に1万円程度、子供(1人)には5000円程度が支給されるケースが多いようです。
では、具体的に2人のケースを比較してみましょう。
Aさん:年収350万円で福利厚生ゼロ
Bさん:年収300万円で福利厚生が豊富
AさんもBさんも27歳。配偶者と子供が1人います。
Bさんの会社は、住宅手当2万円、家族手当15,000円(内訳は、配偶者に1万円、子供に5000円)、さらに★社食が無料です。
すると……
【Bさんが福利厚生を1年間受けた場合】
住宅手当 2万円×12ヶ月=24万円
家族手当 15,000円×12ヶ月=18万円
社食無料 800円×245日(年間出勤日数)=196,000円
(↑ランチ代800円分がタダになったと想定)
24万円+18万円+196,000円=616,000円
Bさんは福利厚生で約616,000円分の得をしています。もし他にも福利厚生が使えたら、さらにAさんと差がつくことになります。
実質年収を比べてみると
Aさん:年収350万円
Bさん:年収300万円+616,000円=361万6000円
Bさんのほうがトータルで見ると多い計算になりました。
このように、「福利厚生」をじっくり見ていくと、実質年収に差が出ることもあります。これはあなどれないですよね。
これからずっと働きたいと思ったら、長期的視野で企業研究することも大切です。もし将来子どもが生まれたとき、あなたは “育児”をどうするか考えたことはありますか? または、家族の“介護”が必要になったとき、仕事と両立できるでしょうか?
まだ先のことだと思っていても、長い人生においていずれは多くの人が直面するこの問題。福利厚生が整わず理解を得られない企業で、仕事をしながら両立していくのは大変です。最悪、○○ハラスメントで退職に追い込まれるなどの話もよく耳にしますよね。ぜひ自分の将来設計と照らし合わせて、以下のような「福利厚生」もチェックしてみてください。
■くるみんマーク
「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けた企業のみが広告などに使えるマークです。次世代育成支援対策推進法に基づき、行動計画を策定した企業のうち、行動計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業のみが、申請を行うことによって受けられる証です。このマークがあることによって、高い水準の取り組みを行っている企業ということを判断することができます。
■育児休業制度
子が1歳に達するまでの間、育児のために休業できる制度です。保育所に入所できないなど一定の理由がある場合、子が1歳6か月に達するまでの間、育児休業をすることができます。取得する人は男女問わないという決まりなのですが、実態としてはまだまだ男性が取得しづらい雰囲気であったり、退職に追い込まれて制度を利用させてもらえなかったりする企業もあるのが現状です。企業研究や働く社員の方と話をする際に、どのくらい利用実績があるのかについても確認しておきましょう。
■ジョブ・リターン制度
結婚・出産・介護などを理由に退職した社員を、本人の希望により再雇用する制度です。キャリアを活かして復職できる一方、企業にとっても即戦力を確保することができ、双方に大きなメリットがあります。
■限定正社員
雇用形態のひとつで、勤務時間・勤務地・職種などを限定した正社員として契約することができます。一般的に正社員は、残業や転勤、職種転換なども起こりえますが、例えばもし“地域限定”で契約した場合は、転勤がありません。アベノミクスの成長戦略として推進が進められており、政府は「結婚や出産・介護などのライフスタイルの変更に合わせて、正社員から限定正社員、また限定正社員から正社員へとフレキシブルな変更を容易にする」と提唱しています。
面接で受かるために一番抑えておくべき企業研究のポイントは“事業内容”や“業務内容”ですが、実際に働くとなったらどのくらいリフレッシュする時間がとれるのか把握しておくことも大切です。
皆さんは、「完全週休2日制」と「週休2日制」の違いについて、きちんと理解していますか? 多くの人がつい見落としてしまいがちですが、ここはしっかりとチェックしておかなければなりません。なぜなら、あなたの休日日数が、大きく変わってしまう可能性があるのです!
以下の2つのカレンダーを見比べてみてください。
ひと月の休日日数が全然違いますよね。「完全週休2日制」は、毎週2日の休みがあることを表します。一方、「週休2日制」は、月に1回以上、必ず週2日の休みがあるということ。つまり、それ以外の週は休みが1日だけでもOKということなんです。
もう一つ注意点があります。一般的には休日というと、土日休みの人が多いため、なんとなくそれが当たり前だと思っている人も多いのではないでしょうか。 実際は、休日が土日になるのか、平日になるのかは企業によって違います。もし求人情報に載っていないようでしたら、面接などの際に確認したほうが良いでしょう。祝日に関しても、企業によっては出勤日としていることもありますので、年間休日数を確認するほか、気になる場合は説明会や面接などで質問してみましょう。
いかがでしたか?
福利厚生の考え方は様々ですが、こういった制度が充実していると、従業員を大切にしている企業ということが伝わってきますよね。今回はほんの一例しかご紹介できませんでしたが、世の中には本当に多くの福利厚生が存在します。中には企業の個性が光るユニークなものもあったりしますので、調べてみると面白いですよ。
そしてもし、気になる企業に思うような福利厚生がなかったとしても、そこですぐ諦めずに、面接などで積極的に質問してみましょう。例えば、「子供が生まれても、育児と両立させながら定年まで働き、その経験を商品開発に活かしたい」など、働く意欲を見せることで、企業側が福利厚生の見直しを考えるようになる可能性もあります。そういった働く人の声にきちんと耳を傾けてくれる企業か、見極めてから判断しましょう。
出産や育児に関する福利厚生については、ぜひこちらの記事もチェックしてみてください。
ここが知りたい! 仕事と育児の両立って実際どうなの!?