志望企業を選ぶ際には、従業員の「平均年齢」と「離職率」を参考にしている人も多いのでは? 「何歳くらいの社員が多いのか」「従業員の何%くらいが辞めていくのか」というデータは、確かに職場環境や社風を知る指標となりそうです。しかし、具体的にはどのように数字を見ていけばよいのでしょうか。ここでは、企業の従業員平均年齢と離職率をチェックするときのポイントをご紹介します。
従業員の平均年齢は、従業員が長く働きやすい企業かどうかを知るための指標として見られています。従業員の平均年齢が高ければ、それだけ高齢になるまで働きやすく、安定した職場と見ることができるでしょう。
しかし、平均年齢だけでは判断できないこともあります。会社の現状を知るためには、平均年齢に加えて以下のポイントをチェックすることが必要です。
<企業の設立年>
企業が新しいか古いかによって、平均年齢が表す意味は異なります。設立したばかりの新しい企業の場合、従業員の平均年齢は設立時のメンバーの年齢に大きく左右されるでしょう。そのため、新しい企業の平均年齢は“社内に若い人が多いかどうか”の参考にはなります。ただし、「この会社で長く働けるかどうか」の指標としてはあまり参考にならないかもしれません。
一方、長年にわたって毎年一定数の新卒採用をおこなう企業の場合、20歳前後で入社して60歳前後で退職すると考えると、平均年齢は40歳前後になるといわれています。古い企業の従業員平均年齢が40歳と比べて極端に低い場合は、若い社員の入社・退職の入れ替わりが多い可能性があるので離職率もチェックするとよいでしょう。また、古い企業の従業員平均年齢が極端に高い場合は、近年なんらかの理由で新卒採用を控えているのかもしれません。そのため、業績や採用人数をチェックする必要があります。
<勤続年数>
従業員の平均年齢とともに勤続年数も調べると、その企業で長く働いている人が多いかどうかの参考になります。もちろん、近年は転職する人も多いので一概にはいえません。しかし平均勤続年数が数年しかない企業は若い社員の定着率が低い、あるいは中途採用が多いなど何らか理由が考えられます。事前に先輩訪問や説明会などで確認しましょう。
<業界の特徴>
業界によっては、転職を繰り返しながらスキルアップしていく仕事もあります。ある調査によれば、IT業界やメディア業界、小売・外食業などの転職率が高く、転職理由は「給与に不満」などの現状不満よりも「ほかにやりたい仕事がある」「キャリアアップして市場価値を上げたい」という前向きな理由が多いようです。また、ファッション・美容業界など“手に職”をもって働く仕事では、若いうちに転職でスキルアップし、技能が身に付いたら独立するケースが多くみられます。従業員平均年齢をチェックするときは、こうした仕事の特性も踏まえて確認しましょう。
職場環境を知るうえで、離職率もチェックしておきたいデータのひとつです。特に入社してから3年以内に離職した人数の割合「3年後離職率」は、新入社員の定着率を知るうえで参考になります。離職率とともに、以下のポイントもチェックすると企業の実情を把握しやすくなるので参考にしてください。
<採用数>
新卒を100人採用して50人が辞めた場合、離職率は50%です。しかし、新卒を1人採用してその人が辞めてしまった場合、その離職率は100%になります。これでは、働きやすさの参考にはなりません。そのため離職率を見るときは、必ず採用人数もチェックしてください。
<従業員数>
採用人数がわからない場合は、従業員数が参考になります。仮に四半期ごとの従業員数をみたとき、春に大幅に従業員数が増えて1年を通して徐々に減っていき、来年の春にまた一気に増えるというパターンは要注意です。春に大量に採用してから徐々に退職者が出て、また春に大量採用するというパターンかもしれません。また、今後はバブル時代に採用された多くの従業員が定年退職する時期に入ってきます。データで発表されている「離職者」の中に、定年退職者が含まれるかどうかも確認が必要です。
日本企業の従業員平均年齢は、ここ数年で徐々に上がってきています。その理由としては、バブル時代に入社した従業員が40代後半以上になっていること、従業員が希望すれば65歳まで働ける継続雇用制度が導入されたことが挙げられるでしょう。日本全体が高齢化していることを考えれば、これは自然なことです。
なお、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本国民の平均年齢は約46歳です。企業の従業員平均年齢が46歳というと、年齢が高いと思われるかもしれません。しかし日本全体の平均から考えると、それほど高くないということが分かります。
今の時代、終身雇用を保証する企業はほぼありません。さらに業界や年代によって従業員の勤続年数はさまざまで、平均年齢と離職率だけで職場環境を推測するのは困難です。複数のデータを総合的に分析したうえで、最終的には会社に足を運びましょう。自分の目で確認するのが、納得して就活を進められる一番のポイントです。