商社は、就活生から例年人気の高い業界です。しかし総合商社を志望している学生の中には、「業界研究が難航している」という人もいるのではないでしょうか。
商社には「グローバルに活躍できる」「給与水準が高い」「投資案件も手がけられる」など、いろいろな魅力があります。しかしだからこそ、事業が多角的であり、業界研究が難しいという難点があるようです。また、入社後に取り組む仕事のイメージが持ちにくいことも、業界研究が進まない理由となっています。
そんなときは、商社を舞台にした小説・伝記などを読んでみましょう。ここでは商社志望の学生におすすめの本を、いくつかご紹介します。
・山崎豊子「不毛地帯」
「不毛地帯」は、山崎豊子の不朽の名作とされている経済小説です。これを読んで、日本の商社、商社史を勉強しましょう。
繊維商社から出発した伊藤忠商事が、総合商社へ発展するストーリーが描かれています。これを読めば、商社が発展する過程を知ることができるでしょう。また、商社にどのような仕事があって、何が必要なのかなど、いろいろなことがイメージできるようになるはずです。
主人公のモデルとなったのは、伊藤忠商事の元会長・長瀬島龍三。そしてライバルは日商岩井の元副社長・海部八郎で、総合商社の発展の礎を築いた2人です。この「不毛地帯」は1973年から1978年まで「サンデー毎日」に連載されていましたが、その間にロッキード事件やダグラス・グラマン事件があり、類似した題材として話題になりました。商社志望ならば、得るものが多い小説です。
・松本清張「空の城」
「空の城」は、松本清張の長編小説です。1978年に「文藝春秋」に連載され、1978年7月に文藝春秋から刊行されました。1980年にはテレビドラマ化されましたが、その際のタイトルは「ザ・商社」です。こちらのタイトルの方が、商社を舞台にした作品だということが分かりやすいかもしれません。
ストーリーは最大売上高2兆6千億円をあげた総合商社の破綻を描いたもので、きっかけは石油暴落でした。主人公のモデルは元安宅アメリカ社長・高木重雄氏。創業家の相談役社賓・安宅英一氏のモデルも登場します。企業再建を目指して合併を模索し、最終的に吸収合併する伊藤忠商事をモデルとしたリアルな動きも描かれていて、読み応えも十分です。商社ビジネスのリスクや総合商社業界のことを学べる小説です。
・三菱商事「現代総合商社論」「新・現代総合商社論」
こちらは、早稲田大学商学部の看板講義を書籍化したものです。三菱商事の役員・各本部長クラスが最新の商社ビジネスについて解説しています。商社マンが語る、商社ビジネスが理解できる本です。人気講義を書籍化したもので、現役商社マンの間でも話題の本書。これから社会に出る学生にとって、学べることが多いでしょう。
中でも、三菱商事を受験する就活生は必ず読んでおきたい商社論です。最新の商社ビジネスについて現状が把握し、さらに人材開発や財務、リスクマネジメントまで理解を深められます。三菱商事を目指している人は、これと合わせて他の三菱商事のインタビュー集も読んでおくと良いでしょう。
日本特有の総合商社は、リーマンショック後も利益を拡大。本書ではその要因である、資源開発や先行投資などについても述べられています。かつての商社が行っていた業務だけでなく、環境ビジネスや製造業へのコミットなど、新たな分野に取り組むことで成長しています。そんな商社の現在の姿を知ることができることは、学生にとってとても有益でしょう。業界研究にも役立つ本です。
・伊藤忠商事「負けてたまるか! 若者のための仕事論」
こちらも業界研究に適しており、伊藤忠商事の仕事哲学がまとめられた本です。伊藤忠商事の元社長・会長である丹羽宇一郎氏のマインドがまとめられており、今も伊藤忠商事の仕事哲学として生きています。「苦労×時間=底力」「人は仕事で磨かれ、読書で磨かれ、人で磨かれる」などの言葉は、これから就活を始める学生にも響くものがあるでしょう。またこうした言葉は、社会人としても多くを学ぶことができます。そのため就活を始める前だけでなく、入社前にも改めて読み込みたい一冊です。
・三井物産「撃って出なきゃ 商社だもの」
最後にご紹介するのは、三井物産の常務執行役員だった守山淳氏の大学での熱血講義と、社内に発信した所感録をまとめた本です。三井物産のあり方と、社員のワークスタイルがリアルに伝わってくるでしょう。三井物産を志望する就活生はもちろん、これから就活を始める人、また、これから働き始める人にもおすすめの本です。
本を通じ、貿易マンとして36年培ってきたビジネスの真髄が見えてきます。守山淳氏が現役時代に、毎月開催されていた店内会議での「支社長所感」の内容が収録。時代とともに変化する商社のビジネスについても語られています。商社を目指す人は読んでおきたい実録です。