就職活動では、多くの学生が学生時代のアルバイト経験やボランティア活動などを自己アピールとして挙げています。もちろんその背景には、人より過酷な労働経験や慈善事業への参加が、企業からも高く評価されると考えてのことでしょう。
しかし残念ながら、就活はそんなに簡単ではありません。アルバイト経験の有無は、実際にそこまで採用可否に関わらないケースが多いのです。志望業界での経験、あるいは社会でも通用するレベルの経験や実績があれば別ですが、ただアルバイトしたことがあるというだけで、高評価には繋がらないでしょう。
学生時代に多数のアルバイトを経験し、アルバイトを通じて社会の厳しさが分かったという就活生がいます。しかし、アルバイトは社会人経験ではなく、そこから即戦力性を見出されることはないでしょう。
アルバイトと正社員では、任される仕事内容や責任が大きく異なります。そのため、就職後に仕事で生かされるものは少ないと考えられています。逆に正社員として新卒採用するに当たっては、アルバイト感覚で仕事を考えられることに懸念を持たれるケースも少なくありません。アルバイト経験をアピールすること自体悪いことではありませんが、それが高く評価を受けるという意識は持たない方が良いでしょう。
とはいえ、新卒採用においてアルバイト経験を無視しているという訳ではありません。例えばアルバイトの種類を問わず、長期にわたって勤務した実績は評価される場合があるでしょう。短期ではなかなか得られない、忍耐強さといった点をアピールするのに役立ちます。また困難を乗り越えた経験があれば、就職後にも生かされるでしょう。
あるいはリーダー等の役割を任されていれば、仲間を引っ張っていく、まとめていく能力がアピールできます。アルバイト先からリーダーとして評価されたという証明にもなりますので、人物面や能力にある程度の安心感が持てるでしょう。
また、アルバイトによって何か専門的なスキルを身に付けている場合も、就活では有利に働きます。例えばテレアポで実績を残したり、デザイナーとして商用デザインを手掛けたり。そうした経験ならば、社会人の仕事にも直結するでしょう。
このように、アルバイト経験から何らか他の就活生と差別化できるような能力を取得していれば、採用担当者から興味を引くポイントになり得ます。ただアルバイト経験を書き並べるのではなく、具体的な出来事などを交えながら、経験の中で得たものをアピールするとよいでしょう。
特に困難や失敗を乗り越えた経験は、「どのように立ち向かったのか」「どのような工夫で乗り越えたのか」「そこから何を感じ、何を得られたのか」にも触れておきます。そうすることで、アルバイト経験を実務に照らし合わせ、採用担当者がイメージしやすくなります。企業人として必要とされる協調性やコミュニケーション能力、あるいは忍耐力や問題解決力といった能力がアピールできれば、好印象を持たれるはずです。
中には、アルバイト経験があるだけで就活にプラスとなるものがあります。それは、就職したい企業でアルバイト勤務することです。どうしても就職したい企業があれば、まずアルバイト募集を探してみましょう。求人が出ていなくても、直接問い合わせてみると募集している場合もあります。
アルバイト勤務とはいえ、企業から直接その働きぶりを見てもらうことが出来るでしょう。もちろん、その中で高い評価を得ておくことは重要です。企業によっては、アルバイトスタッフに「うちの会社で働かないか」と声を掛けるケースもあります。特に飲食業やホテル業、塾関係などは、学生バイトがそのまま正社員登用されることが多いようです。また、アルバイトとしてある程度の期間働けば、社内に人脈ができるでしょう。味方ができれば、就活で後押ししてもらえるかもしれません。
もちろん、企業が必ずしもアルバイトを募集しているとは限りません。その場合、同じ業界でバイト経験を積むことがおすすめです。同じ業界に身を置いた経験は、業界や業務への理解に繋がります。志望動機などにも具体性が生まれ、高い評価を得るキッカケになるでしょう。アルバイト以外にも、インターンシップとして就業機会を提供する企業も増えています。
就活でアルバイト経験を武器とするのであれば、アルバイト選びから考えることが大切です。そのためには早い段階から就職を意識し、自分が「どんな仕事をしたいのか」「そのために何が必要なのか」を把握しておきます。そして、自らが社会に出て役立つ能力を磨くことを意識し、積極的に仕事へ取り組むようにしましょう。毎日なんとなくアルバイトをこなしているだけでは、就活でアピールできるような経験は得られません。