商社には「海外出張できる」「給料が高い」「オシャレ」など、華やかなイメージを持つ学生が多いでしょう。そのため、学生の就職人気ランキングでも常に上位へランクインしている業界です。特に大手の商社企業では、毎年数万人という就活生からエントリーが集まります。
しかしイメージが先行してしまい、志望動機が漠然としているケースが少なくありません。人気の高い業界だからこそ、なぜ商社に勤めたいのか、その志望動機が明確に伝わらなければ採用確度は下がってしまうでしょう。
商社を受ける学生の志望動機は、給料など条件面の良さや社会的な認知度、職場の華やかさなどが本音として挙げられるでしょう。しかし当然ながら、このような動機を企業へ伝えるわけにはいきません。
企業担当者は、最初からこうした学生の本音を理解しています。人間ならば誰しも、待遇や仕事に対するイメージは良いに越したことはありません。そのうえで、志望動機から将来の可能性や他とは異なる熱意・意欲といった要素を判断しているのです。イメージによる本音を語るのではなく、担当者を納得させるような志望動機を用意しましょう。
総合商社では、多様な事業を展開しています。そしてどの事業部門に配属されるかは、就業後に判断されることがほとんどです。例えば不動産部門を志望している就活生が、総合商社の面接で「不動産事業に関心がある」と伝えるとしましょう。商社ではなく不動産にのみ興味があるのならば、不動産会社に行けば良いのではと思われてしまいます。総合商社で扱う事業の多くは、その企業だけが独占的に手がけているものではないのです。
そのため商社志望の学生は、多くが他の専門業界と並行して商社企業を受けています。先の例であれば、不動産会社と関連の専門商社、そして総合商社を併願するという形です。企業の担当者も、このことは理解しているでしょう。
注意したいのは、総合商社での志望動機は、特定業界にその動機を絞り過ぎないという点です。あくまで事業全体を捉え、志望動機を考えることが大切です。
様々な業界で専門企業があるにも関わらず、あえて総合商社を志望する場合、次のような志望動機がよく挙げられます。
「世界に挑戦したい」
「国と国とを繋ぐ仕事がしたい」
「色々な分野の人材を巻き込んだビジネス展開を考えている」
「新たな世界ビジネスに挑戦したい」
ありがちな志望動機ではありますが、無難とも言えるでしょう。過去の経験などと紐付けて伝えることができれば、立派な志望動機として評価を受けられるはずです。商社にはグローバル展開を行う企業も多く、留学経験などに裏付けられた語学力の活用も、魅力ある志望動機となります。
また、例えば「発展途上国に鉄道や発電所等のインフラを作る」等、自分なりの夢を語るパターンも多く見られます。しかし必ずしもそれが志望企業で実現できるわけではなく、むしろ企業方針に沿っていなければマイナスとなる可能性もあるでしょう。また、ビジネスとして現実的でなければ、他者との差別化には繋がりません。熱意を伝える意図が感じられる志望動機ではありますが、夢を語る場合には、その中身をよく考えぬいておく必要があるでしょう。
商社の面接では、志望動機について次のように何度も質問が繰り返される場合が多くあります。
「どうして専門業界に行かないのか?」
「どうして総合商社なのか?」
「どうしてこの会社なのか?」
「他の総合商社も同じようなことができるのでは?」
角度を変えながらも、志望動機について掘り下げる質問です。では、なぜ何度も志望動機について聞かれるのか。それは、就活生がしっかりと自分がやりたいことについて強い信念を持ち、その軸がブレていないかを判断するためです。つまり、入社後に実現させたいビジョンが明確で、そのためにどれだけ力を発揮できる人材なのかを探っています。
筋の通らない回答では、すぐに動機の薄さを見透かされてしまうでしょう。もちろん本当に強く志望しているのであれば、自社についてある程度の理解を持っているものと考えています。形だけの志望動機で、商社からの採用は得られません。業界と合わせ、企業研究も入念に取り組んでおきましょう。商社には数多くの社員が働いていますので、OB・OG訪問を行うこともおすすめです。
専門商社であれば、属する業界に関する深い理解を。総合商社であれば事業全体を捉えたうえで、特定分野外で得られるやり甲斐や経験などにフォーカスすると良いでしょう。部門が多岐にわたるからこそ、社会人として多様な見識を得られる環境とも捉えられます。同じ商社でも事業方針や目指す方向性が大きくことなりますので、その企業の独自性についても見出しておくと、志望動機に説得力が増すはずです。