日々の生活に、エネルギーは欠かすことのできないものです。特に東日本大震災をキッカケとして、エネルギーの利用・供給については全国的に大きく見直されるようになりました。例えば原子力発電による電気供給が減ったことで、暖房や給湯、調理器具をガスに替える家庭が増えています。あるいは、都市ガスやプロパンガスといった既存のものだけでなく、海外からシェールガスが輸入され、かつ利用されるようになったのも1つの変化といえるでしょう。
ガス業界は、そうしたエネルギーに関わる業界です。大手ガス会社は主要業務である営業はもちろん、生産や供給、管理などに加え、ガス利用に関わるさまざまな研究開発を行う部門を持っています。また、ガスの安定供給を図るため、海外のガス田開発へ協力事業を行う部門を有している企業もあるようです。
では、日本におけるガス業界のリーディングカンパニーとは、いったいどの企業なのでしょうか。大手企業を中心に、業界について詳しく見ていきましょう。
ガス会社と聞けば、関東に住んでいる人ならば「東京ガス」、関西に住んでいるならば「大阪ガス」が思い浮かぶでしょう。ある程度業界について調べていれば、それ以外に「日本瓦斯(俗称ニチガス)」「エア・ウォーター」といった企業が思い浮かぶかもしれません。まさにこれらの企業こそが、日本を代表するガス会社です。
都市ガスやプロパンガスなど、企業によって扱うガスの種類には違いがあります。しかし資本金や従業員数、事業規模などから見れば、いずれも日本有数の企業と言えるでしょう。ガス業界を詳しく知るうえで、まずはこれら各企業について理解を深めておいてください。
・東京ガス
明治18(1885)年創立、平成27年3月31日現在の資本金は1,418億円、そして連結従業員数は1万5千人を超える企業です。東京及び神奈川の約半分の地域と、千葉・埼玉・茨城・群馬・栃木の主要都市にガスを供給。取り付けメーター数は1,000万件を超えます。東京ガスグループは、約50年前に日本で初めてLNG(液化天然ガス)を導入した企業です。日本におけるLNGの先駆けとして、常に業界をリードしてきました。現在もセキュリティやコスト、システム、環境などさまざまな視点からエネルギーの未来を考え、国の内外を問わず広く貢献しています。
・大阪ガス
明治30(1897)年に設立。資本金は1,322億円、連結従業員数は2万人を超えます。ガスを供給している地域は近畿2府4県の79市、32町にのぼり、グループ会社を合わせた2014年度末の取り付けメーター数は約720万件です。取り扱うのは、家庭用・業務用・工業用のガスだけではありません。ガス空調やコージェネレーションによる省エネ・省コスト実現への支援、太陽光発電、天然ガス自動車といった分野にも進出。業績を伸ばしている企業です。
・日本瓦斯
昭和30(1955)年に設立した企業でLPガス大手。資本金は70億7千万円、連結従業員数は約1,500人にのぼります。家庭用・業務用・工業用・農業用・自動車用のLPガス供給に加え、関連会社を使った都市ガスの供給のほか、カセットコンロやコンロ用ガスボンベ、エアゾール製品、ライター用ガスボンベなどを扱っています。また、アメリカでは電力・ガスの小売事業、オーストラリアでは省電力エネルギーマネジメントシステムの開発にも取り組んでいる企業です。
・エア・ウォーター
昭和4(1929)年に設立した企業で、資本金は322億円。連結従業員数は1万人を超えます。札幌市で設立された「ほくさん」と、大阪市で設立された「大同酸素」とが合併して「大同ほくさん」が誕生。その後、「共同酸素」との合併により現在の名称になりました。LPガスや灯油などを、北海道から東日本・中日本にかけて幅広く展開。また、バイオマス資源によるバイオガスシステムの開発やケミカル関連事業、医療関連事業、農業・食品関連事業など幅広い分野を手掛けています。
ガス業界とひとくくりにいっても、その仕事内容は多岐にわたります。企業へエントリーする際には、まず自分がどのような分野で何をしたいのかを明確にしましょう。そのために、ガス業界における主な業務について解説します。
・LNGやLPGの調達・輸送
・ガスの気化・貯蔵・供給
・エネルギー営業(地域冷暖房技術の提案、工業用分野での開発営業、コージェネレーションシステムの提案と設置など)
・営業支援(ガス供給の協力会社を支援し、サービス向上のための資料作成や販路拡大のためのイベントをサポートするなど)
・研究開発(ガス全般に関する研究を行い、発電や発熱の仕組みだけでなく機器やシステムに至るまでガスの安定供給を目的に研究開発するなど)
・設計(ガスを安全かつ安定的に顧客の元に届ける、老朽化したガス管を取り替える、ガス管を新しく敷設するための設計をするなど)
また、大手になればなるほど、原料の調達やガス製造、販売まで一貫した幅広い業務を行います。さらにそれだけでなく、海外でエネルギー事業を展開したり、環境保護事業などを手掛けたりしている企業も少なくありません。もちろん、本業をサポートするために財務・経理や総務・人事、広報、あるいはコンプライアンス担当など、数多くの部署を抱えています。ガス業界について詳しく理解を深め、志望動機や自己PR等の作成に繋げていってください。