この記事が出るころには最終選考が終わった学生も多いはず。一方で就活に出遅れた、うまく行かないと嘆く学生も多いことでしょう。
出遅れた、うまく行かないと嘆く学生の場合、周囲が内定を得ているとより深刻です。
「なんで自分だけが就活に失敗するのだろう」
と、暗くなり、ついにはうつ状態になる、そんな学生も珍しくありません。
今回は出遅れ就活生の深刻度を勝手にランキングしました。合わせて何がまずかったのか、どう挽回していくのか、も解説しています。
例によってと言いますか、このランキング、私、石渡が勝手にランク付けしているだけで、JOBRASS編集部は関与するものではありません。
→対策:体育会系・留学で頑張ったことをアピール
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学生が勝手に出遅れた、深刻だ、もう後がない、と頭を抱えている割に実はそれほど深刻でないのがこのパターン。
留学で就活が遅かった学生は、例年、グローバル系学部の学内説明会兼選考会が開催されるなど結構、救済策があります。
それもあってか、留学で出遅れた学生はそれほど悲壮感がありません。
その点、体育会系の学生だと、留学生ほど説明会が充実しているわけではありません。それもあって、学生が勝手に悩んでしまうのです。
対策は実に簡単でこのJOBRASSで体育会系であることを存分にアピールしましょう。
留学生ほどでないにしても体育会系の学生が就活に出遅れやすいことは、経験ある採用担当者であればよくわかっています。そのため、6月の選考解禁以降の夏・秋採用でも体育会系の学生を探す、というのはよくある話なのです。
アピールする際は、練習の話でもいいのですが、できれば先輩学生・社会人OBとの接点、あるいは後輩指導なども含めていくと、よりいいでしょう。
→対策:出遅れでも十分間に合うので冷静に
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公務員試験・国家試験の準備から方向転換した、という学生は毎年、一定数います。
国家公務員試験志望の多い難関大だと、企業側もそれを見越して夏・秋以降に学内説明会を開くところがあります。
一方、準難関大以下、あるいは地方大で地方公務員・国家試験の準備から方向転換した学生は学内でそれほど数は多くありません。
そのため、学生は孤独感を味わうことになります。
対策は孤独感がどうこう、ではなく、まず冷静になりましょう。
もともと、公務員志望・国家試験準備の学生はまじめな学生が多く、その点が評価されています。
しかも、2018年卒はかつてないほど、学生が有利な売り手市場。大量の内定辞退が予想されます。企業が夏・秋採用を例年以上に力を入れなければならないのです。その際に体育会系・留学帰国者とならび、公務員・国家試験準備組を軽視するわけがありません。
なお、アピールする際は勉強に取り組んだ話に合わせて、何か人を巻き込んだエピソードもあるようであれば、入れていってください。
→対策:大学院生だから、と開き直る
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企業の業務内容と研究内容が無関係な大学院生は、「年齢が高い」「研究内容と業務内容が無関係」「サークル、アルバイトなどアピールできそうな話が文系学部生ほど強くない」と悩みがちです。
年齢については、次の「留年・浪人」の項目でご説明しますが、数年くらいなら、それほど影響がありません。数年年下とでもちゃんとやっていける、あるいは年下の先輩社員でもちゃんと礼儀を尽くせる、という態度があれば問題ないでしょう。
2・3点目についても、大学院生が考えるほどにはそれほど影響しません。
2000年代から大学院生の増加とともに「文系院生は就活に不利」などと言われ続けてきました。
確かに研究中心で就活は出遅れやすいことは事実です。
それから、年齢の高さも、あまりにも離れすぎている、あるいは、数年年下の先輩社員にも年齢の高さを誇示したがる態度が出てしまえば、マイナスと評価されるでしょう。
が、私は大学院生は大学院生で就活に対応することは可能、と考えます。
就職氷河期だった2013年卒で大学院生だった方が文献を残しています(『立教大学ドイツ文学論集2012』に掲載された宮地幸「大学院生として就職活動を行う」)。著者は3社から内定を得ます。就活初期には書類選考での不合格が相次いでいました。
「その頃はまだ自分が就職活動を行ううえで、大学院生であることに自信が持てず、エントリーシートでも大学院のことではなく、学部の時のことを書いていました」
ところが、大学院での話をエントリーシートに書くようにすると、途端に面接に進みだします。
「面接は慣れるもので、正直なところ、大学院の正課で行われるコロキウムという発表と討論の授業よりも、面接の方が断然リラックスして臨めたと思います。そういった点で、私は大学院生であることの利点を感じました。現に、面接官の方から『あなたは自信に溢れているね。やっぱり大学院生は違うよ』などお褒めの言葉を頂いたこともあります。その頃から、私は大学院生であることを誇りに思うようになりました。就職活動を始める前までの不安は、面接をこなすにつれてだんだんと消えていったのです。大学院生を必要としないならば、エントリーシートの段階で落とされるはずです。しかし、面接まで進んだということは、もはや大学院生であることはデメリットではなく、思う存分に大学院生であることをアピールできるということです。大学院生であることに負い目を感じる必要はないのです」
これが2011年時点での話。そこから、6年。大学院生は増え、売り手市場と転じました。大学院生が大学院生であることをきちんとアピールすれば、私は内定が十分に得られるのでは、と考えます。
なお、大学院生についての就活マニュアル本は、『大学院生、ポストドクターのための就職活動マニュアル』(アカリク、亜紀書房)1札のみ。2010年刊行で2017年に改訂新版が刊行されました。それから、文系院生については2014年刊行『人文・社会科学系大学院生のキャリアを切り拓く : 〈研究と就職〉をつなぐ実践』(佐藤裕, 三浦美樹, 青木深, 一橋大学学生支援センター 編著、大月書店)が、一橋大の事例を中心に大学院生の就活事情をまとめています。実質的な就活マニュアルとも言えなくもありません。
理系だと『理系のためのキャリアデザイン:戦略的就活術』(丸善、2014年)の中で、修士・博士・オーバードクターなどタイプ別に解説しています。
→対策:回り道プラス年下とのコミュニケーションをアピール
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浪人・留年期間は合計3年程度であれば、それほど就活に悪影響はありません。
合計4年以上、あるいは3年以下でも敬遠されるとしたら、年齢の高さにプライドを持ちすぎる点でしょう。
社会に出れば大学名はもちろん、年齢もそれほど影響はしません。数年ないし10年程度の差であれば上司だった、取引先だった、ということはよくある話です。
学生であればまだ年齢による格差というのはある程度は存在します。が、社会ではそうではない、と割り切るしかありません。
それと、浪人・留年については仮にそれが自らの怠惰な面が理由だったとしても、そのことは反省している、ときちんと話した方がいいです。
確かに、国家試験準備などわかりやすい理由があれば話としてはきれいです。そのきれいさのままで行ければ無理に嘘をつく、盛る、ということでもいいでしょう。もちろん、面接担当者は学生の嘘にどこかのタイミングで気が付きます。気が付かなくても入社後にどこかでぼろが出ます。それよりは最初から正直に「ニコニコ動画の面白映像を検索しすぎて勉強がおろそかになり留年した」など、ちゃんと理由を話した方がいいでしょう。
→対策:教員志望だったこと、迷いは断ち切ったことをアピール
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教員志望の学生は、教養・学力という点では公務員・国家試験準備組の学生と並んで高く評価されています。
教員採用試験の幅の広さに対応すべく勉強してきた点は、それだけで評価対象です。
では、就活で教員採用との併願を考える学生がなぜネガティブに評価されやすいのか、理由は、迷い、教育実習の2点です。
まず、前者から言えば、選考の中盤から終盤にかけて、迷っている学生は落ちやすくなります。将来のキャリアに悩むのはもちろんですが、どこかのタイミングで決断しなければなりません。それを中盤から終盤にかけての面接でもまだ迷っている、というのは教員採用試験でもそれ以外でも明らかにマイナスです。
後者は教育実習がちょうど、選考にかかる場合、学生が無理に両立させようとしてもどこかで破たんします。なお、これから就活を迎える教員採用との併願志望の学生にお伝えすると、教育実習と選考・民間企業インターンシップ、あるいはアルバイトなどを両立させようとしても、忙しぎて必ず時間不足となり破たんします。教育実習期間中は教育実習一本に絞ることを強くお勧めします。話を就活に戻すと、教育実習で選考をずらせる企業ならいいのですが、できない企業も一定数あります。それもあって、教員採用試験併願の学生が敬遠されてしまうのです。
対策としては、「教員採用はあきらめました」と未練を断ち切ることです。もし、免許取得について聞かれたら「免許は自分の学生時代の証として取得したいだけで、未練はもうありません」と話せば十分です。
→対策:つらくても選考を受け続けるしかない
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面接の中でも終盤の選考で落ちやすい学生は、選考傘下の企業研究を面接前に見直す、その企業に関連ありそうなニュースをチェックする(たとえば輸出関連メーカーなら円ドル為替レートとか)、志望度が高いことを丁寧に話す、という3点に気を付ければ劇的に変わります。
問題は選考の序盤の面接でうまく話せない学生の場合です。
面接で緊張するのは仕方ないにしても、何度も受けては緊張してうまく話せない、というのはちょっと重症です。
とはいえ、対策は慣れるしかありません。志望度が高いかどうかは無関係にして手あたり次第に選考に参加。話すことに慣れるしかないでしょう。
→対策:書き方などをもう一度見直す
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面接以上に深刻なのが書類選考で落ちる学生です。
書き方が、自己PR一辺倒で学生個人の情報が書かれていない、文章として成立していない、などの理由が考えられます。
それと、就活が進んでも書類選考で落ち続ける、という学生の場合、自分の書き方に自信を持ちすぎ周囲のアドバイスをきちんと聞いていない、というケースも結構見受けられます。
選考の書類の書き方についてはこの連載の2回目で書きましたので参考にしてください。
自己PRないし自己PR的な内容よりは、経過など学生個人の話を丁寧に書いた方がいいでしょう。
なぜ落ち続けているのか、キャリアセンターなどに相談したうえで見直さない限り、苦戦が続くものと思われます。
出遅れた、とする就活生は、大学のキャリアセンターなどに相談に行こうとしません。出遅れた、と負い目、それから後輩学生がインターンシップなどで出入りするようになったのに恥ずかしい、などが理由です。
そんなことを気にせずに相談に行ってほしいのですが、何となく気まずい、という思いも理解できます。
規模の大きな大学だと、東京や大阪中心部にサテライトオフィスがあり、キャリア支援も本キャンパスとは独立しています。
出遅れ就活生は、サテライトオフィスをうまく使う、というのが一点。
それから各地にある新卒応援ハローワークもいいでしょう。ハローワークの中でも新卒者(または既卒者のうち若い年代)に特化したのが新卒応援ハローワークです。相談機能も充実しており、しかも、公的機関なので模擬面接なども含めて利用は無料です。
就活カフェは、学生は無料ないし安価に利用できる、常駐しているキャリアカウンセラーや採用担当者などに就活を相談できる、という場所です。東京・大阪だとキャリぷら、就トモCafe、就プラ(高田馬場)、パソナ学職カフェなどがあります。他にもいろいろあるので、就活カフェも使うといいでしょう。
石渡嶺司(いしわたり れいじ)
大学ジャーナリスト
1975年生まれ。北海道札幌市出身。1999年東洋大学社会学部卒業後、日用雑貨の実演販売、編集プロダクション勤務などを経て2003年から現職。大学・就活関連の取材、執筆活動を続ける。当初から「大学勤務も採用担当者経験もないくせに」と批判されているが、14年経った現在も仕事が減りそうにない変わり種。
3月からJOBRASSマガジンの他、日本経済新聞サイト(日経カレッジカフェ)でも連載開始。
著書『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書) 、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)、『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『教員採用のカラクリ』(共著、中公新書ラクレ)など多数。