選考が中盤ないし終盤になってくると、学生も採用側も内定を意識しながら行動します。
それもあってか、学生本人によるもの、あるいは他の学生によるトラブルと遭遇することになります。
では、過去の学生はどんなトラブルに遭遇したのか、あるいは切り抜けて一発逆転をしたのか、今回はそんな選考中のトラブルについて勝手にランキングしました。
例によってと言いますか、このランキング、私、石渡が勝手にランク付けしているだけで、JOBRASS編集部は関与するものではありません。
【事例】
・予定していた電車が人身事故で不通に。到着したら面接が終了していた。
・面接会場に車で向かう途中、まさかのパンク。山道だったので電話もつながらず、結局、面接にも間に合わなかった。もうこの企業はダメですよね?
【一発逆転策】
時間が過ぎていてもまず連絡
【コメント】
交通機関の遅延、あるいは交通事故などで予定が狂ってしまった、という話は学生に限らず、社会人でもよくあります。
余談ながら、私も講演に向かう途中、吹雪や倒木事故で数時間遅れとなったことが数度あります。
当日、できることは、遅れそう、という時点でまず連絡することです。それから、携帯電話のバッテリー切れや山道による通話圏外などで連絡が取れない、ということであれば、通話可能状態になってからすぐ連絡することです。
ここで学生の方からは、
「面接の予定時刻を過ぎて連絡しても無駄では?」
との、ご質問をいただきます。
最初にお断りしたじゃないですか、予定が狂うのは学生も社会人も同じ、と。
社会人の場合、一番困るのは連絡がないままフェイドアウトしてしまうことです。まあ、人間関係・取引関係を切りたいというのであれば別ですが、それにしても最低限の連絡は入れておくのが人の道、というものでしょう。
もし、予定に遅れそうであれば遅れることを連絡。予定時間を過ぎてからでも、まず連絡して善後策を協議するのが最善です。
学生の面接だと、交通事情などどうしようもない場合は、別日程に振り替える、というのは良くある話です。
仮に寝坊など学生の自己責任による遅れだったとしても、まずは連絡すること、それが一番です。
【事例】
・面接でうまく話せない自分が悔しく、気が付いたら泣いていた。
【一発逆転策】
手紙を書いて謝罪
【コメント】
感情の高ぶりから、思わず泣いてしまった、というのも選考中のトラブルとしてはたまに聞く話です。
ここも企業側の対応は分かれます。
全く気にしないという企業もあれば、「面接という場で泣いてしまうのはさすがにちょっと」と評価ポイントを大きく下げてしまう企業もあります。
感情の高ぶりをネガティブに評価した企業など、なかなか逆転策は難しいところ。
あえてできることは、と言えば、「面接の場で取り乱してしまい申し訳ありませんでした」と謝罪の手紙を書くことでしょうか。
謝罪の手紙を出すことで、わずかながら逆転できる可能性もあります。
なお、手紙を書くのであれば、なぜ取り乱したのか、そこを長々と書くよりも、謝罪は謝罪として、志望度が高いことを書く方がいいでしょう。
たとえば、GDで他の学生と意見が対立して、その感情の高ぶりから泣いたとしましょう。
ここでよくあるのは、意見が対立した他の学生が悪い、ということを延々と書くものです。
そもそも、謝罪の手紙なりメールなりで弁明を延々と書いても、言い訳がましい、とさらにネガティブにとらえられます。
それよりは、多少(あるいは相当程度)自分以外に責任があるとしても、自分に責任がある、と謝罪した方がすっきりしています。
【事例】
・GDで司会をしようとしたら、立候補が相次いでそれだけで時間がかかった。
・タイムキーパーをやったら、目立たなかった
【一発逆転策】
司会など役職にこだわらずどんどんコメントをしていく。
【コメント】
グループディスカッションで司会をすれば目立つ、という指導はぼちぼち古い話です。
首都圏や関西圏の学生を観察していると、半分くらいは「司会など決めずに進めましょうか」とお互いに話しながら進めています。
たかだか数十分のGDで司会だから目立って有利、それ以外は不利というのは言いすぎでしょう。
そういう指導をされる大学や就職カウンセラーの方がいますが、ちょっと古すぎます。
司会など役職にこだわるよりは決められた時間内に結論を出そうとしたかどうか、設問に対してきちんと結論を出そうとしたかどうか、そちらにこだわる方が大事です。
【事例】
・グループ面接で自己紹介から自己PRを含め長々話す学生と一緒になった。面接担当者がイライラしだし、それもあってか、私も落ちた。
・GDで自分の意見を押し通そうとする学生がいて議論が前に進まなかった。途中であきらめたが案の定落ちた。
【一発逆転策】
グループ面接は自分の話を短く、GDは議論を前に進める努力を最後まで捨てない。
【コメント】
序盤から中盤にかけてのグループ面接やGDでは他の学生と一緒になりやすいです。
当然ながら、イタい学生と一緒になり、その悪影響で落ちた、ということもよくあります。
就活生からすれば、イタい学生と一緒になっていい迷惑、と思うかもしれません。
が、そこで「いい迷惑だった」で終わらせるのかどうかで分かれます。
社会に出てからも、人間関係は穏便なものだけでは終わりません。イタいと思える取引先や上司・先輩社員と一緒になることも珍しくありません。その際、「自分は悪くない、相手が悪い」というだけか、それとも、仕事を前に進めようとしているのか。仕事の結果が短期的には同じでも、長期的には大きな差が出てきます。前者だと、何をやっても他人のせい、これでは仕事もうまく行きません。後者だと、別の仕事で評価されてうまく行く、ということがよくあります。
就活も同じです。
グループ面接であれば、話の長い学生が他にいれば、自分の回答はあえて短めにしてみてください。
面接担当者は「この学生は面接のテンポをあげようと協力してくれる」と判断して、それだけで評価ポイントを上げる可能性が高くなります。
GDも同じです。学生と大学就職課関係者の一部が誤解していることですが、GDは1グループから次の選考に進める学生が決まっているわけではありません。全員通過もあれば全員落選もあり得ます。
自己主張が強すぎるイタい学生がいるグループがあったとしましょう。6人グループでイタいのが1人、そのイタさにうんざりして議論をやめた学生が2人、イタさにメゲずに何とか議論を前に進めようとした学生が3人いたとします。そして、イタい学生のせいで結論が出せませんでした。では、このグループ、全員落選か、と言えばそんなことはありません。落ちるのは、イタい学生は当然として、議論をやめた学生2人も同様に落選。前に進めようと頑張った3人が通過します。
「イタい学生と同グループになった学生はお気の毒。とは言え、社会に出てからも似たようなトラブルはいくらでも起こり得る。トラブルに遭遇してもめげない学生が欲しいから、議論を前に進めようとした3人には次の選考に来て欲しい。議論をやめた2人?もし、入社して、似たようなトラブルが起きたら対処するのはやめる可能性が高いわけでしょ。だったら、お引き取りいただいた方がいい」
こう考えるのが企業と言うものです。
【事例】
・面接で自己PRなど用意したが、うまく話せなかった。
【一発逆転策】
・「最後にご質問は?」の機会を使う。
【コメント】
中盤から終盤にかけての面接は学生が多人数いる序盤の面接・GDとは大きく変わります。数人ないし個人面接という企業も珍しくありません。それだけ学生と企業のマッチング、志望度などを見ています。
この中盤から終盤にかけての面接で企業側は学生が事前に用意したものをできるだけ崩そうとします。そのため、学生が事前に面接対策をしても、雑談中心で行こうとするケースも少なくありません。
もし、自己PRなどがうまく話せない場合、どうすればいいでしょうか。無理に自己PRを挟もうとすると会話自体が成立しなくなります。それよりは会話の流れに任せて、質問内容に対して丁寧に答えていく方が重要です。
そのうえで、どうしても自己PRなど自分の話をしたい場合は、「最後に質問などありますか?」の機会を使って話すといいでしょう。
なお、「最後に質問」は4回でまとめているので気になる方はお読みください。
【事例】
・最終面接に社長がいて緊張、そのためちゃんと話せなかった。
【一発逆転策】
・採用担当者のフィードバック面談の機会でもう一度、入社意欲を伝える。
【コメント】
最終面接は社長や役員などが参加。そのため、緊張のあまり、うまく話せない学生がいます。
実はここでも逆転事例があります。面接終了後、採用担当者にフィードバック面談の機会を設けている企業では、学生が企業研究ノートなどを見せながら入社したいとアピール。このノートが功を奏して逆転内定に至った、という事例がこれまでの取材で何件かありました。
フィードバック面談の機会がない企業でも、顔見知りになった採用担当者を面接終了後に捕まえて、入社意欲をアピールすれば同じ効果が期待できます。
【事例】
・最終面接で落ちてから数週間後、「もう一度、面談しないか」と言われて、面談後に内定が出た。
【コメント】
実はこれ、就職氷河期の話。大量の内定辞退が出ると予測されている売り手市場の今年だと、似た話が結構出そうです。
最終選考に落ちる学生は、「志望度が低く、内定を出しても来るとは思えない」「企業とのマッチングが難しいと判断した」などのパターンに分かれます。後者、マッチングが理由で落ちた場合、その企業を翌年以降に受けても、内定をもらえる確率は相当低いでしょう。
ところが前者、志望度の低さだと、マッチングについては選考で確認済みです。
そのため、内定辞退が出た後、補欠合格のような扱いで内定を出す、という企業がたまにあります。
もし、志望度が高い企業の最終選考に落ちた場合でも、そういうチャンスはゼロではありません。
●トラブルはチャンスでもある
今回のテーマ、選考中のトラブル、共通しているのは、人対人のなすことなので、ノーチャンスではない、という点です。
むしろ、そのトラブルという機会を使って、飛躍するチャンスとできるかどうか。就活は実はそういう点も見られています。
このチャンスを生かせるのか、それとも自分で潰してしまうのか。学生によって大きく分かれるわけで、就活を長年観察している私からすれば、面白くもあり、残酷でもあるなあ、と思う次第です。
石渡嶺司(いしわたり れいじ)
大学ジャーナリスト
1975年生まれ。北海道札幌市出身。1999年東洋大学社会学部卒業後、日用雑貨の実演販売、編集プロダクション勤務などを経て2003年から現職。大学・就活関連の取材、執筆活動を続ける。当初から「大学勤務も採用担当者経験もないくせに」と批判されているが、14年経った現在も仕事が減りそうにない変わり種。
3月からJOBRASSマガジンの他、日本経済新聞サイト(日経カレッジカフェ)でも連載開始。
著書『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書) 、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)、『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『教員採用のカラクリ』(共著、中公新書ラクレ)など多数。