就職する際に一番気になるのが、お給料!初任給をもらったら、お父さんとお母さんに何か買ってあげたい、自分のご褒美に形になるものを残したい…と、初めてのお給料でしたいことも色々あるのではないでしょうか。そんな初任給の相場、一体どのくらいでしょうか。初任給を見ることで、就職先を選ぶ基準として何が大事なのかが見えてきます。考えてみましょう。
新卒の初任給は、いくらくらいでしょうか。初任給に関して、データを集めてみました。
・学歴別の初任給の平均
人事労務分野の情報機関である「産労総合研究所」が発表した、「2016年度 決定初任給調査」によると、2016年度の大学卒の初任給の平均は、210.313円でした。調査対象は、東証第1部上場企業1833社と、生命保険、新聞、出版でこれに匹敵する大手企業11社を加えた合計1844社のうち、回答のあった227社です。この調査は、1961(昭和36)年から毎年実施されているため、前年度と比較することもできます。
専門学校(2年制) | 専門学校(3年制) | 短大卒(事務) | 大学卒(事務・技術) | 大学院卒 | ||||
一律 | 格差あり | 修士 | 博士 | |||||
最高額 | 最低額 | |||||||
16年度 | 181.258 | 184.301 | 177.491 | 204.703 | 212.919 | 190.025 | 218.991 | 227.462 |
15年度 | 180.379 | 183.559 | 176.810 | 204.066 | 210.986 | 189.152 | 218.181 | 226.435 |
上昇額 | 879 | 742 | 681 | 637 | 1933 | 873 | 810 | 1027 |
上昇率 | 0.48 | 0.40 | 0.38 | 0.31 | 0.91 | 0.46 | 0.37 | 0.45 |
前年度と比較して、初任給を据え置いた企業は全体の63.4%、「全学歴」で引き上げを行った企業は、33.8%でした。およそ3分の1の会社が、初任給を引き上げています。引き上げた理由は、約5割の企業が、「人材を確保するため」、「在籍者のベ ースアップがあったため」を挙げています。据え置いた理由は、「現在の水準でも十分採用できるため」がやはり5割強となっています。採用活動において、初任給が大きな影響を持つと企業が考えているのがわかります。
・規模別の初任給
一般社団法人「日本経済団体連合会」の発表による初任給は、大卒事務職で、平均213.892円。こちらは、経団連企業会員および東京経営者協会会員企業 1,918 社の中から、回答した493社の結果を集計したものです。東京の企業が多くなっているからか、上記の数値よりも3500円ほど高くなっています。同調査による、「規模別にみた初任給」は、以下のようになっています。
大学院卒(修士・技術系) | 大学卒(事務系) | 短大卒(事務系) | |
3.000人以上 | 235.544円 | 214.873円 | 176.427円 |
1.000-2.999人 | 229.758円 | 212.085円 | 178.450円 |
500-999人 | 231.495円 | 215.144円 | 173.652円 |
300-499人 | 222.403円 | 211.488円 | 177.858円 |
100-299人 | 223.533円 | 211.998円 | 188.091円 |
100人未満 | 220.645円 | 222.672円 | 187.846円 |
これを見ると、必ずしも企業規模が大きいほど初任給が高くなるわけではないということがわかります。初任給を決めた理由として最も多い理由が、「世間相場」で、3割近い企業が挙げています。次に多い理由は、「在籍者とのバランスや新卒者の職務価値」。世間一般や、社内でのバランス・相場が、初任給を決める大きな要因となっているのがわかります。
・産業別の初任給
大学卒事務系で、初任給が最も高い業界は、石油・石炭製品の242.551円。次ぐのが、化学・ゴム系の製造業で、220.162円、紙・パルプの製造業で、219.433円となっています。一方で、最も安いのが、電気・ガス業で201.583円、窯業の208.945円、食料品製造業の210.306円となっています。一般的にお給料が高いと言われている、マスコミやIT関連が入っていないのは意外ですね。
・初任給の高い企業
会社四季報を出している、東洋経済の調べによると、初任給の高いトップ10社は以下のようになっています。
社名 | 初任給(万円) | 平均年収(万円) | 平均年齢(歳) | |
1 | 日本商業開発 | 50.0 | 1.000 | 47.1 |
2 | GCAサヴィアン | 37.5 | 2.153 | 37.1 |
3 | グリーンランドリゾート | 34.0 | 411 | 37.4 |
4 | オンコリスバイオファーマ | 33.0 | 717 | 42.0 |
5 | Klab | 32.0 | 496 | 31.8 |
6 | ドウシシャ | 30.2 | 574 | 38.1 |
7 | 楽天 | 30.0 | 671 | 33.3 |
8 | サイボウズ | 30.0 | 601 | 33.8 |
9 | ソースネクスト | 29.9 | 706 | 35.8 |
10 | ウィル | 29.8 | 583 | 29.9 |
トップの日本商業開発は、大阪市中央区に本社のある、テナントによる商業施設開発を前提として底地取得、売却益を得るビジネスを展開している不動産投資の企業です。2014年度卒業生が、はじめでの新卒採用になり、「社長になれる資質を持った学生を採用するために」「超難関企業」と銘打って初任給を高く設定しています。新卒採用を始めた2014年から3年連続で、初任給トップ企業となっています。ただ、額は、3年連続同じ、50万円です。2位のGCAサヴィアンは、M&Aコンサルタント業務を行っている企業、平均年収も2153万円と非常に高く、給与水準の高い企業です。一方で、平均年収と比べてみると、賞与や、その後の昇給がほとんどないように見える企業もあり、初任給の高さだけで企業を図ることの危うさが見て取れます。
上記のデータを見ても、初任給が高いからといって、平均年収の高さや企業の規模、収益性などは図れないことに気づくのではないでしょうか。東洋経済の調査によると、初任給を上から順に並べた場合、410位の22万円に123社が並んでいるとか。初任給を決める際には、世間一般的な相場や業界他社との「横並び」を意識している企業が多いようです。初任給が上がっているから、企業も伸びているかというと、これもまた、「相場に合わせて」上げた企業が多く、判断基準にはあまりならないことがわかります。
初任給は、あくまでもスタート地点でのお給料、仕事はずっと続けるものです。仕事の内容、やりがい、適性というものが何よりも大事ですが、その仕事に見合った収入があるかというのも大事な評価ポイントになります。スタートだけでなく、その後がどうなのかという点を考えてみましょう。
・生涯賃金
生涯賃金とは、会社に新卒で入社して定年まで働いたときに取得できる総額です。東洋経済が、上場企業約3600社のうち、平均賃金の発表がない企業などを除いた3239社を対象にし、有価証券報告書(2014年6月期~2015年5月期)の公開データと、厚生労働省が発表している「平成25年度賃金構造基本統計調査」を基に試算したものです。それによると、平均の生涯賃金は、2億1765万円。前年度に比べると415万円増加、と景気を反映したものとなっています。生涯賃金が高い企業、トップ20は以下のようになっています。
社名 | 生涯賃金(万円) | 平均年収(万円) | 平均年齢(歳) | 従業員数(人) | |
1 | キーエンス | 6億7323 | 1.648 | 35.6 | 1.988 |
2 | 日本M&Aセンター | 5億6628 | 1.385 | 34.6 | 192 |
3 | GCAサヴィアン | 5億6603 | 1.486 | 37.8 | 103 |
4 | 朝日放送 | 5億2849 | 1.518 | 42.5 | 655 |
5 | テレビ朝日HD | 5億0386 | 1.433 | 42.1 | 1.166 |
6 | 野村HD | 4億9710 | 1.579 | 42.2 | 102 |
7 | 伊藤忠商事 | 4億9693 | 1.395 | 41.5 | 4.262 |
8 | フジ・メディアHD | 4億9481 | 1.447 | 43.1 | 37 |
9 | 三菱商事 | 4億7685 | 1.375 | 42.6 | 5.637 |
10 | 三井物産 | 4億7427 | 1.361 | 42.4 | 6.085 |
この数字は、グループ企業については、有価証券報告書のデータがある単体会社のものを使っているため、単体の年収数字となっています。純粋持ち株会社は本社の中枢機能を担う社員しかいないケースが多いため年収は、実態より上に振れる傾向にあります。フジ・メディアHDの数値は、そういったものと考えて下さい。初任給の上位企業には上がってこなかった、マスコミや商社が目立ちます。M&A関係の2社は初任給も高いですが、生涯賃金も非常に高くなっています。
長く働いていくことを考えるなら、志望先を考える際に、初任給の高さに惑わされるのではなく、企業の安定性や、仕事のやりがい、その後の賃金体系なども考慮するようにしましょう。もちろん、お給料が高いに越したことはありませんが、賃金の高い企業は、それに見合った仕事が要求されます。自分の適性や、スキルも考えた上で、志望先企業を選ぶようにしましょう。