17世紀に創業した住友グループ、実に350年以上もの間、日本をリードする企業であり続けています。この間、日本は明治維新や2つの世界大戦という激動の時代を経て、現在に至っています。果たして、住友グループはどのような理念で、この時代を乗り越え今に至っているのでしょうか。今の住友グループはどういった企業でしょうか。見てみましょう。
江戸時代の寛永年間(1600年代)に、創業者である住友政友が、書物と薬の店を京都に開いた「富士屋」が発祥。製薬業と書籍出版業を行ったこのお店が、住友グループの始まりです。
当時、政友の姉婿である蘇我理右衛門は、銅精錬と銅細工業を泉屋という屋号で営んでいました。彼は、南蛮人から聞いた、銅から銀を分離精錬する新たな技術を開発。この技術を「南蛮吹き」と名付け、同業者に公開しました。1691年に別子銅山の開発をはじめ、これによって大躍進します。泉屋は南蛮吹きの宗家として尊敬され、銅生産・銅精錬・銅貿易から、糸や反物、砂糖、薬種などを扱う貿易商になりました。さらに両替業も開業し、「大阪に比肩するものなし」と言われるほどになりました。住友グループが使っている井桁の商標は、泉屋の商号から、泉を表すものとして、井桁を使い始めたのが始まりです。
住友グループの精神の原点は、住友政友が著した「文殊院旨意書」です。商人としての心得を説いたものです。前文で、「商事は不及言候へ共万事情に可被入候」と書かれていて、何事も粗略にせず、心をこめて丁寧慎重に取り扱うようにと説いています。また、「南蛮吹き」の技術を自分たちだけのものとするのではなく、同業者に公開することで、国全体が栄えるようにした点に見られるように、住友の事業は、拙速ではありません。「企画の遠大性・進取敢為」を旨とし、何事に当たっても、将来を見据えて計画を立て、すぐに結果につながらなくても、次代、三代にわたって開花させるよう努力し続けることを奨励しています。「国家100年の事業を計らねばならぬ」が、歴代の総理事のモットーだといいます。
戦前、三井財閥とともに、日本の企業の2割を占めると言われた一大グループであった住友財閥ですが、戦後1945年にGHQによって財閥は解体。住友各社の協力関係を維持するため、住友直系12社の社長によって構成される「白水会」が設立されました。
「白水会」は、グループの中核企業の社長のみが参加する、「非公式の経営執行委員会」という位置づけでしたが、昭和20年代後半にその存在を明らかに。“結束の住友”と言われるように、住友グループは戦後の混乱期に三井、三菱の他財閥にさきがけいち早く社長会による集団指導体制を確立し、連帯意識の統一に成功させました。
現在は、グループの中核・住友銀行が三井グループの中核銀行(さくら銀行)と合併して「三井住友銀行」の誕生に伴い、金融面では三井住友フィナンシャルグループが誕生。他業種でも住友系と三井系の企業の合併や業務提携が相次ぎました。
また、住友不動産は、住友家の不動産資産を譲り受けてスタートしたことから、住友の本流を受け継いでおり、旧住友本社の資産を住友商事が引き継いでいます。
「住友」と言えば即座に大阪を連想する人も多くいるのではないでしょうか。
それは、住友グループは、長らく大阪の地に拘り続け、今も大阪に本社を置く住友グループの企業が多くあるからです。
実際、近畿圏においては、特に年配者層を中心に三井・三菱両グループよりも住友グループのプレゼンス・社会的ステータスを高く評価しています。
住友グループの中核とされる、三井住友銀行、住友金属工業(現:新日鐵住金、現在はグループを離脱)、住友化学3社を「住友御三家」、住友商事、住友電気工業、日本電気 (NEC) 3社を「住友新御三家」と呼びますが、この御三家とは別に、新居浜4社と呼ばれる住友金属鉱山を筆頭に住友化学、住友重機械工業、住友林業各社は住友の源流でもあるためグループの中でも大きい存在となっています。
ちなみに、住友グループの中核企業がメンバーである白水会ですが、この中に序列があるかというと、持ち回りで幹事を務め、全会一致で採決をするため、ヒエラルキーは強くないと言われています。
それでも、源流企業である住友林業各社は別格だとか。住友興隆の基をつくった別子銅山を総合していた企業でもあり、この利益が、銀行や保険など他業種への事業拡大の元手となったことも影響しているのかもしれません。住友グループは、元々が銅山経営に始まっているように、モノづくりに基盤を置く鉱工業系の企業が本流といえます。
どういった企業があるのか見てみましょう。
(ここに挙がっていませんが、アサヒビールは、住友系列から2代続けて社長を受け入れており、関係の深い企業と言われています)
▪鉱・工業系
・住友金属鉱山株式会社
住友の源流事業である銅製錬、鉱山業を受け継ぎ、資源開発から先端素材までワールドワイドに事業展開しています。日本最大の産金量を誇る鹿児島県菱刈金山を所有しています。グループの中で最も影響力の大きい企業であると言われています。
・住友重機械工業株式会社
別子銅山で修理工場として創業、産業機械や重機の総合機械メーカー。
・住友建機株式会社
・日本板硝子株式会社
・住友ゴム工業株式会社
自動車用タイヤ、産業用ゴム製品などの製造販売。2016年に白水会に加わりました。
・住友理工株式会社
高機能ゴム・樹脂部品メーカー
・住友ベークライト株式会社
・住友電気工業株式会社
社会インフラを支える電線・ケーブル事業を軸とします。
・NEC
総合電機メーカー
・日新電機株式会社
先端技術を駆使した半導体製造用イオン注入装置や薄膜形成装置、環境保護の観点から注目を集めている新エネルギー関連製品や電子線照射装置の開発・製造
・明電舎
・住友精密工業株式会社
▪化学・薬品
・住友化学株式会社
別紙事業から派生した源流企業の一つ
・住友精化株式会社
・大日本住友製薬株式会社
2005年大日本製薬と住友製薬が合併し誕生。2016年に白水会に加わりました。
▪建設・建材系
・住友大阪セメント株式会社
・三井住友建設株式会社
・住友林業株式会社
1691年の別子銅山開坑による鉱山備林経営に始まり、源流企業の一つです。現在は木と住まいを取り巻くあらゆるサービスを提供しています。
・住友電設株式会社
・住友電装株式会社
▪不動産
・住友不動産株式会社
総合不動産会社、ディベロッパー大手、ビジネスホテル経営等も行っています。
▪金融系
・三井住友銀行
日本のメガバンクの一つです。信託、証券、カード会社とともに三井住友フィナンシャルグループを形成しています。
・三井住友信託銀行
・三井住友海上火災保険株式会社
・三井住友カード株式会社
・三井住友ファイナンス&リース株式会社
2007年10月に住商リースと三井住友銀リースが合併して誕生
・SMBCフレンド証券株式会社
2003年に明光ナショナル証券とさくらフレンド証券が合併して誕生
・住友三井オートサービス株式会社
・住友生命保険相互会社
▪小売・卸系
・住友商事株式会社
▪運輸・ロジスティック
・株式会社住友倉庫
▪情報・システム系
・株式会社日本総合研究所
・SCSK株式会社
2011年に住商情報システム株式会社と株式会社CSKが合併し誕生。システム開発、ITインフラ構築、ITマネジメントなどのサービスを提供。住友商事をはじめとする顧客の世界各国におけるITシステム・ネットワークのサポートを行うグローバルITサービスカンパニー。
“結束の住友”といわれるように、グループとしての総合力は確かなもの。
グループ会社各社は、専門分野に特化した高い技術やノウハウを保持するとともに、世のニーズに答えられるだけの実績と資産を蓄積しています。
これはグループ会社各社の個と個を結ぶ結束力の賜物と言っても過言ではありません。