経団連が2017年11月に発表した『新卒採用に関するアンケート調査結果』によると、企業に対し「選考時に重視する要素」について調査したところ、15年連続で「コミュニケーション能力」が1位だったそうです。しかも、2位の「主体性」、3位の「チャレンジ精神」、4位の「協調性」、5位の「誠実性」を大きく引き離しているとのこと。それだけ求められる要因の一つとして、「コミュニケーション能力」はどんな仕事においても不可欠だから、ということがあるかもしれません。
一方、面接で就活生が安易に「私にはコミュニケーション能力があります」と言うと、マイナスになるという噂も。ではいったい、コミュニケーション能力を企業にアピールするにはどうしたら良いのでしょう?
今回は、企業が求める力・第1位の「コミュニケーション能力」について、詳しくお話していきます。
企業が求める「コミュニケーション能力」とは?
実は、新卒紹介事業に関わっていると、この「コミュニケーション能力」について、企業が求める内容と、学生が認識している内容に“ズレ”があるという話をよく耳にします。
例えば、就活生は「コミュニケーション能力=お喋りが上手く、友人がたくさんいる」というイメージをしがちです。しかし、それは単なる「社交性」であって、企業が求めているポイントは別ということが、往々にしてあるのです。つまり、このような間違った認識のまま就活を進めてしまうと、いつまでも失敗し続けてしまう可能性があるので、注意が必要です。
それでは、企業が求める「コミュニケーション能力」とは、いったいどういったことなのでしょう? 具体的に、いくつかのシチュエーションを想定した例を挙げてみますので、まずは自分にどのような能力がありそうか、想像してみてください。
・お客さまの話に熱心に耳を傾け、表情や口調から心情を読み取り、的確な質問を投げかけながら、真のニーズを引き出せる能力
・チームで進める作業でミスが起きないよう、メンバー同士で「報連相=(報告、連絡、相談)」をしっかりと行い、業務を遂行できる能力
・社内でアイデアを出し合う会議をする際、他のメンバーの意見をしっかり聞きつつ自分の意見も主張し、皆でアイデアを練り上げ、最終的に質の高い答えを導き出せる能力
・リーダーとして、それぞれ異なる能力や性格のメンバーたちを一つにまとめ、全員で目的を達成できる能力
・自社のサービスに関して苦情があったとき、お客さまの気持ちをしっかり汲み取り、納得していただけるよう対処できる能力
・立場の違う人の意見を否定せず、なぜそのような意見なのか分析しようとする能力
・メールなどの文字によるコミュニケーションで、気持ち良く相手と意思疎通できる能力
・お客さまや社内の人と、意見のすれ違いや誤解が生じたとき、すぐに気付いて軌道修正できる能力
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いかがでしょうか。多くの就活生がまだ経験したことがないかもしれないシチュエーションばかりですが、学生時代と比べると、かなり複雑で難しそうだと感じる人もいたのではないかと思います。
このように、どんな仕事をするかによって、必要となる「コミュニケーション能力」は全く異なります。具体的なことは、その会社に入って働いてみないとわからないこともありますが、企業研究によってある程度予想できることがあるかもしれません。ぜひその点にも注目しながら、調べてみてください。
自己PRの失敗例
企業が最も求めているのであれば、就活生側も「コミュニケーション能力をアピールしたい!」と考えるのは当然で、多くの学生が自己PRに使用します。その中で少しでも企業の目に留まり印象を残すには、エピソードをしっかり組み立てる必要があります。
私はコミュニケーション能力がある人間です。コンビニで2年間働いてきたおかげで、初対面の人でも緊張せずに話すことができます。
×アルバイトでお客さまと話すのと、社会人として営業などでお客さまと話すのとでは、会話の内容の濃さが違います。その程度で「コミュニケーション能力がある」と言いきってしまうと、面接官の心に響く内容が少なく、印象に残りません。もしこのようなアルバイト経験を軸に話すなら、別の角度からのアピール方法を考えてみたほうが良さそうです。場合によっては、コミュニケーション能力以外に、もっと“売り”になるポイントが見つかることもあるでしょう。
私の長所はコミュニケーション能力があるところです。大学時代は友人たちと学生団体を立ち上げ、リーダーとして活動してきました。
△似ている人同士の集団の中で上手くコミュニケーションがとれても、違う年代や立場の人が相手だと全く会話できない人もいます。ですから、これだけでコミュニケーション能力があると言い切るのは危険です。場合によっては、井の中の蛙と捉えられてしまうかもしれません。もう少し深く説明することができる具体的なエピソードはないか、再度検討してみることをオススメします。
自己PRの成功例
それでは次に、「コミュニケーション能力があります」とは言わずに、コミュニケーション能力をアピールした成功例をご紹介します。
私は、仲間の良い面を引き出しながら、皆で一つのものを作り上げることが得意です。大学1年生のとき、SNSで仲間を募りダンスイベントに参加したのですが、メンバーは初対面が多く、はじめは振り付けを考える際、お互い遠慮している面がありました。ですが、私は進んで体を動かしアイデアを出すと共に、メンバーのアイデアで良いと感じたら必ず褒め、議論が活性化するよう努めました。さらに、大人しいメンバーにも積極的に話を振るようにしたところ、実はかなり面白い感性を持っていることがわかってきました。そして次第に仲が深まり、相乗効果でどんどん良い作品に仕上がっていったのです。
迎えた当日、私たちの一風変わったダンスに、観客の方たちは大きな笑顔と拍手をくれました。また、メンバーたちから『おまえがみんなをまとめてくれたおかげで成功できた』と言われ、これまで味わったことのない大きな喜びを感じました。
御社の広告の仕事においても、自分から積極的に提案すると共に、一緒に働く人たちの意見も面白がれる感性を大切にしていきたいと思います。
○この先輩は、「コミュニケーション能力がある」と自分から言うのではなく、仲間からの評価を織り交ぜながら、自分の良さをアピールしているところが上手です。また、志望企業が求めている人物像(外部とも連携しながら円滑にチームワークを進める能力)を考慮し、自分ならではのエピソードを重ね合わせているのも大きなポイントだと言えます。
私は、相手の気持ちを思いやる心を大切にしています。家庭教師のアルバイトをしていたとき、生徒の女の子のモチベーションが急に下がった時期がありました。最初は自分の教え方が悪いのかと思って試行錯誤したのですが、一向に状況が変わりません。しかし、前より暗くなった表情の彼女を見て心配だったので、思い切ってどうしたのか聞いてみると、いじめに合っていることを打ち明けられたのです。
そこで私は、自分も中学生のときにいじめに合って辛かった話をしつつ、彼女の話をたくさん聞くようにしました。すると、彼女はホッとしたのか少しずつ元気を取り戻し、再び勉強に打ち込めるようになったのです。無事に志望校に合格し、報告をしてくれた彼女の笑顔を見て、私は人の気持ちに寄り添う大切さを学びました。
この経験を活かして、御社の仕事においても、お客さま一人ひとりの気持ちにしっかり耳を傾け、常にご安心いただけるベストな提案をしていきたいと思います。
○この先輩は、保険会社の営業を志望していたことから、「コミュニケーション能力」の中でも特に「傾聴力」にポイントを絞り、お客さまの気持ちに寄り添える心をアピールしました。特に珍しいエピソードではないものの、温かく丁寧な人柄が伝わってきますよね。この先輩は、面接中も聞く姿勢が大変良かったため、説得力がさらに増したようです。話の内容だけでなく、態度で「コミュニケーション力」をアピールするのも重要なポイントです。
まとめ
いかがでしたか? 「コミュニケーション能力」と一言で言っても、その中身は本当に様々だということを理解していただけたかと思います。もしこの能力をアピールしたい場合には、自己分析や企業研究を今以上に深く堀下げて、どのような言葉に置き換えたら良いのか、どのような角度で話せば相手に伝わるのか、改めて考えてみてください。
また、「コミュニケーション能力」があるのかどうか、そのジャッジは相手ありきのもの。つまり、最も効果的にアピールできる方法は、面接でしっかりとした受け答えや態度を示すことです。面接官の質問の意図をしっかり理解し、それに沿って話を進めていけば、自然と「この学生はコミュニケーションがとれるな」と見てもらえるはず。ぜひ参考にしてみてくださいね。
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