就職活動をはじめて採用が決まるまでかなりの比重を占め悩む人が多いのが「面接」。
最近ではエントリーシートを廃止し、面接のみでの選考という企業も増えてきました。
みなさんが苦手と思っている面接ですが、意外と面接官をしていると「惜しい」学生が多いもの。どれだけ「良い学生」「真面目な学生」でもいくつかのポイントを押さえなければ「採用したい」という気持ちにはなりません。特に人気企業では、その惜しさから、採用に結びつかないという人は多いのです。
「面接の練習をしているのになぜかうまくいかない」という方から「いまから広告業界やメーカー、インフラなど人気業界に挑戦したい」という方まで、今回は、面接官が感じる「面接で差がつくポイント」を中心にお伝えします。
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▼INDEX(クリックするとその章に飛びます。STEP2以降はログインが必要です)
STEP1. 第一印象:「明るく大きい声で挨拶」は本当に有利?
STEP2. 志望動機:「社会貢献」「安定」「グローバル」はタブー?
STEP3. 対策をしっかりしている人ほど気をつけるべし!面接でみかける「惜しい学生」とは?
STEP4. 面接は「企業との相性の問題」になるまで対策しよう
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「人は見た目が9割」といわれるように、就職活動では「第一印象」をよくするようにと、挨拶は大きい声で、表情は明るくなど指導されることが多くあります。一方、20歳を過ぎて「明るい大きい声で挨拶」なんて恥ずかしいから、できれば避けたいという学生の声も聞こえてきます。実際、第一印象は本当に重要なのでしょうか。
―みなさんが思っている以上に第一印象は大事です。初めて出会ったその瞬間に面接官がみなさんに感じる「元気そう」「賢そう」「おしとやか」「真面目」……この第一印象のイメージが面接を進める上で、一つの基準となっていきます。ここがプラスの印象ならばよいのですが、「暗い」「元気がない」「疲れてる」「やる気がない」といったマイナスの印象を持たせると、それをプラスの印象に変えるのは短時間の面接ではかなり難しくなります。特に、営業職・広報、人事、CA(キャビンアテンダント)など外部の人と接する機会が多い職種では、みなさんの第一印象で、顧客が会社に対して良いイメージを持つか、悪いイメージを持つかが変わり、その後の関係性にも影響をしていきます。そのため採用側は、選考中のその表情こそが「入社してお客様にみせる顔」と思いながら面接をする場合もあります。
第一印象の大切さをみなさんも実感できる機会があるとすれば、アルバイト。みなさんのアルバイト先に新人がやってきたとき、どのような人であれば「良い子そうだな」と思うでしょうか。どれだけ計算がはやかったり賢かったとしても、明らかに「嫌々働いている」という面倒臭そうな表情をしていたり、こちらが挨拶をしてもノーリアクションだったりしたら、「一緒に働きたいな」「一緒に働いていて楽しいな」と思うでしょうか。企業も同じで「一緒に働きたい」と思った人を採用したいはずです。スキルや才能よりも大事にしている可能性もあります。
みなさんがもし強く入りたいと思う企業があるならば、まずは第一印象の良い人間になってみましょう。それがCAやアナウンサーなど激戦の職業であればなおさらです。「自分のようなCAにサービスを受けたいか」「今の自分がニュースを読んだら人々に元気を与えられるだろうか」という視点で見つめ返すとよいでしょう。サービス業であれば、一度お客さんとしてサービスを受け、理想の表情や接客をする先輩を見つけ学ぶのもよいかもしれません。
▼まとめ
・学生が思っている以上に、第一印象は大事。
・アルバイト先に新人が入ってきたときどのような新人ならば楽しく働けそうと思うことができるか
・理想の表情をしている人をみつけてみよう(有名人でもOK)
第一印象を見直したあとは、いよいよ選考の要、志望動機に関する話題です。志望動機は学生に対して必ずと言っていいほど聞くものなので、必ず準備をしてほしいとは思うのですが、しっかりと準備をしていたとしても、もう少し深堀をしてほしい、と思ってしまう学生がいます。
それは、会社への志望動機を聞かれたとき、「社会貢献」「安定」「グローバル事業」を答える場合です。
皆さんの中には何が悪いのかと思われるでしょうか、面接官からすると必ずしもよい印象を受けるわけではありません。
例えば、「社会貢献」。
志望動機として「御社で働くことで社会貢献をしたい」「地域に貢献ができる企業に入りたい」などを言う学生は珍しくありません。しかしもしみなさんが一般の民間企業に入りたいと思っているのならば、そのままでは少し物足りなさを感じてしまいます。なぜならば、企業は利益をあげることが一番であり、経済を回すという意味での社会貢献をほぼすべての企業が行っているのです。また、社会貢献活動として企業が行っているボランティア活動や、資源支援活動などのCSR活動に興味を持っているとするならば、新入社員でその部分に関われることはほぼ無く、利益に直結しない部署であるため「そこに入りたいといわれても新入社員には違う部門で利益をあげてほしい……」と考える企業がほとんどといっていいでしょう。
公務員や一部団体、教育機関を除き、新入社員に求められることは今後、企業の発展をリードする人=利益を生み出せる人なのです。もちろん社会貢献活動から企業に興味を持つことは良いことですが、それにとどまらずその企業の利益を生み出す仕組みや今後の展開など「お金を生み出す」観点で企業をみる癖をつけていくとよいでしょう。
「安定」や「グローバル事業」も似た理由です。企業を魅力に思った部分が「安定性がある」「グローバル展開がさかん」などの場合、みなさんの中で思っている分には問題ないのですが、「安定した企業で働きたい」「自分の語学力を生かしたいので海外とやりとりができる企業にいきたい」をそのまま志望動機にしてしまうと「うちの会社でなくても別の会社でもいいのではないか」と思われてしまいます。
特に勘違いされやすいのは語学。一部企業を除いて海外転勤を任されるようになるまでは時間がかかります。海外を任されるようになるには「語学」以外にも「人間性」「リーダーシップ」「熱意」「企業理解をしっかりできている」など、スキル面以外の部分で信頼を得る必要があるのです。
元々英語を話せる人物を採用するパターンももちろんありますが、それよりもこれまでの経験や考え方、STEP1で触れた第一印象などが語学スキルの評価を上回ることは、ままあります。企業としては「今後、新たに外国語を習得できる熱意や学習能力があるだろう」と学生に対して思えば、その人物の方を採用したいと考えるからです。逆に「語学を使って働きたい」という志望動機をもっている学生が、実際には語学力が無いとなると説得力を欠いてしまうので、自分の志望動機にはきちんと論理的につながるのかみえておくとよいでしょう。
▼まとめ
・企業は利益を生み出すことを目的として存在している
・新卒には利益を生み出す(生み出す可能性が高い)人材を求めている
・スキルがあるからといって、必ずしも優位には働かないこともある
就職活動というと「落ちることの方が多い」のが普通です。選考に落ちるという経験を重ねると「自分はどこにも受からないのではないか」と疑心暗鬼になり、全てにおいて自信を無くしてしまう学生もいます。しかし、面接をしていると、「この学生、全く面接ができていない」というよりはどちらかというと「この学生、惜しいな」と思うことが多くあります。特にしっかりと就職活動の準備をしている学生を面接していると「かなり対策・練習をしてきたんだな」とわかります。しかしこうしてしっかりと対策をしてきたことがわかる学生のなかでも「ここだけは押さえておいて! 」というポイントが抜けている方がいるのが事実です。
就活の準備をしてきたことに対しては良い評価を出したいのですが、「採用したい」という段階までいかず「とても惜しい学生」が多くいます。今回は惜しいと思う主なポイントをお伝えします。
一番多いのは「自分が働くイメージができていない」という学生。
自己PRもしっかりできており、業界研究もしっかりできている、受けごたえもよい。
そうした学生は実はかなり多くいます。
しかし彼らで惜しいのは意外にも「自分自身が働く」という意識が抜けているのです。どちらかというと企業の評論で終わってしまうケースが多くあり、ただこの学生すごいな、で終わってしまい、採用したいとまで思えないのです。
例えば「あなただったらその課題に対してどのように対応するのか/考えるのか」と質問をしたとします。もちろん正解は無く、正解があるのならば企業が取り掛かっているはずです。ここで知りたいのは「課題を解決するには、という視点でこの学生は考えたことがあるか」ということを聞いているのです。せっかく会社の一員になるのならば、やはりその人考え方を知っておきたいというのはあります。課題を答えられる学生は多いのですが、「どのように行動すれば課題を解決する可能性が出てくるのか」とまで考えられる学生は少ないのが事実です。
わかりやすくテレビ業界の面接の例で考えてみましょう。
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面接官:テレビ業界の課題は何だと思いますか?
学生:若者のテレビ離れが進んでいることです。
面接官:どのようにすれば解決することが出来ると思いますか?
パターンA
学生:視聴率の取り方自体が間違っている可能性があるといわれているので、なんともいえない。
→確かにそういった考え方もありますが、テレビ局として行える根本的な課題解決とはいえません。
パターンB
学生:今の番組は中高年向き。若者が面白いと思うコンテンツを増やしていくべき。
→間違いではありません。しかし若者に受けるコンテンツは必要ですが、現時点の中心の視聴者である中高年は離れていかないか…という視点も大事です。
パターンC:
学生:若者に人気の●●というアイドルと●●という有名人とハリウッドスターを集めて海外ロケに行く番組をしたら面白そう
→視聴者の意見としては良いですが、実現がなかなか難しそうです。宇宙旅行や海外ロケ、有名キャラのコラボ…などブランドだけを組み合わせた予算が膨大な企画も得策とはいえません。
パターンD
学生:他社の視聴率も含めてみていると、若者に受ける要素は「●●」と「●●」だと考えている。実際に友人に聞いてみてもこれらの要素でB局の番組を多く見ているとよく聞く。弊社でこの要素を生み出し育てるためにも、御社が行っている「●●」というサービスを活用、実験し効果をみていくのも一つの方法ではないかと考える。
→業界研究と企業研究、さらに自らの意見も言うことができています。
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また次のようなケースもよくみられます。
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面接官:入社して行いたいことは何ですか。
学生:広報です。
面接官:広報に入って何をしたいですか
学生:御社の商品を世界に広めたいです。
面接官:うちの会社の商品の良いところで世界に認められる部分ってなんだろうね。
学生:日本製の商品ならではの…品質の良さ…でしょうか?
面接官:世界のどの地域に広めたい?
学生:アジア圏でしょうか…
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と、このように、企画・広報・人事をしたいと考える学生も多くいますが、実際の業務をイメージする、というのはなかなか難しいものです。というのも、実際に商品を売ったり、その現場にしばらくいなければ、売り手・買い手の気持ちがわからず企画・広報・人事に必要な「どのような商品を企画するべきか」「どのような商品を広めるべきか」「どのような人材を採用するべきか」わからないからです。本当になりたいのならば、それぞれの仕事の業務を知ること、そして実際にその業務を行っている社員に会ってみること。ここからスタートしなければ面接の際、面接官と話がかみ合わない可能性が高くなります。
もう一つ気を付けてほしいのが「面接で話す」場面。案外気が抜けているのが、相槌の打ち方や言葉遣いです。
面接官の話に対しての相槌が「うん、うん」であったり、「えーっと」「やばい」など口語であったり……緊張していると特に普段友人と話すような言葉遣いになってしまいます。自分が知らないうちにそうした言葉遣いをしている可能性がありますので、模擬面接などで対策をしておくことが必要です。
また、話し方で気を付けてほしいのが表現が「ストレート」すぎること。
極端に言うと「ダメだ」「嫌い」「やりたくない」「ダメ」などネガティブなワードを素直に言ってしまう学生も多くいます。そんなことはないと思いがちですが次のパターンはよくあります。
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面接官:弊社の商品と競合他社の商品の違いを簡単に述べてください。
学生:はい。まず品質の問題ですが、A社は中国製ということもあってか性能もよくありません。更にかなり価格が高いので買いたい気持ちにはなりません。またC社の商品は安いですが、デザインがよくありません。
その点、御社は品質、価格、デザインどの点でも素晴らしいと考えております。
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この例は若干大げさですが、学生の皆さんの回答でよくあるのが「他社批判」。
自社の商品を好きでいてくれるのは嬉しいのですが、だからといって他社を批判されると、お客様や上司、同僚の前でもそんなストレートな言い方になってしまうのではないか、と思ってしまいます。
社会人では自分の商品に誇り・自信を持つことも大事ですが、時には他社の良い事例や見習うべきことを学び自社に取り込めないか、など真摯な姿勢で取り組まなければ市場に取り残されてしまうこともあります。相手がそのライバル企業の人事だとしても言えるような表現方法を身に付けておくとよいでしょう。
お祈りされる(選考に落ちる)―
私はこの「お祈りされる」ことについて二つのパターンが存在すると思います。
(1)企業との相性の問題
(2)学生の準備不足
「落ちたのは企業との相性が悪かっただけ」とも言われますが、私自身は「企業との相性が問題になるまで」が選考対策の一つの目安なのだと考えています。
相性というのは「すごく勢いのいいがつがつした学生でいい子だな。でもうちの会社の文化や雰囲気には合わないな」というケースの場合。
みなさんの対策不足でもなんでもなく、ただ企業側の都合で「合わなかった」というケースも残念ながらあります。しかしそうした場合は、対策もしっかりできており本当の意味で「惜しかった」だけ。相性の良い企業が必ずあるはずです。
一方で、「自己PRも言えないのか」「うちの企業のことがまったくわかってないじゃないか」という選考の準備不足が理由で落ちる学生もいます。こうした場合はいくら相性がよくても準備不足のために、落ちてしまう可能性すらあります。
この二つのパターンのどちらなのかを知るには、面接を振り返るときにチャンスがあれば、人事担当者に落ちてしまった理由などを聞いてみてもよいかもしれません。また、実際に聞かれた面接官からの質問と自分の答えを思いだしメモ書きして、キャリアセンターや先輩などから客観的な意見をもらうのもよいかもしれません。
実際、面接では「全くできていない学生」はあまり多くありません。それよりも「働くイメージができていない」ことがほとんどなのです。その原因は業界研究や企業研究、そして実際に話を聞くといった対策ができていないからともいえます。
一社につきチャンスは一回。
そのチャンスを「惜しい学生」で終わらないように、「相性の問題」で合否が決まる面接を行えるように、これからしっかりと準備をしていきましょう。