自動車メーカーと自動車部品メーカー、違いは?元請けと下請け?就職活動の観点から見た時にどういった違いがあるのでしょうか。自動車部品メーカーを受けるにあたって、どういった点に気を付けた方が良いのでしょうか。志望動機のポイントは? 考えてみましょう。
(※こちらの記事は、2016年7月13日に公開したものを更新しています。)
自動車に必要な部品は、3万点ほどになると言われています。自動車メーカーのほとんどは、エンジンや車体などは自社生産しているものの、そのほかの部品はアウトソーシングしています。自動車の製造原価のうち、社外から調達する部品や資材のコストは、約5割近くに上ると言われています。例えば、2017年3月期のトヨタ自動車の売り上げが約27兆円でしたが、10兆円以上の自動車部品を仕入れていることになります。従来、自動車メーカー各社は、傘下に自動車部品メーカーを持っていました。トヨタ自動車のある愛知県には、数多くの字度車部品メーカーがひしめいていて、世界シェアでもトップクラスの企業が少なくありません。自動車産業が日本の基幹産業で、経済波及効果が大きいと言われるゆえんです。
従来、自動車メーカーは傘下の自動車部品メーカーを抱え、部品をそこから調達していました。ところが、その形が最近変わってきています。2015年にトヨタ自動車は、主力車種カローラの新型車に搭載した最先端の衝突回避支援システムを、ドイツの大手自動車部品メーカーであるコンチネンタルから調達しました。それまで、トヨタ傘下で国内最大手の部品メーカー「デンソー」から調達してきた衝突回避支援システムを、他社調達したというニュースは、自動車部品業界に激震を走らせました。技術革新競争で、世界中の企業と競合している、例え傘下の企業であっても後れをとるなら切り捨てられてしまうということが明らかになったのです。
元来、自動車部品メーカーと自動車メーカーには働き方に違いがありました。自動車メーカーは、どちらかというと、≪プロジェクト全体を管理する仕事≫をするのに対し、部品メーカーは≪モノづくり≫に近いということです。自動車メーカーは、自動車全体をつくる仕事で、部品メーカーは個々の部品と向き合っているからです。自動車部品メーカーは特化した分野を持ち、その部品の性能を追求した仕事をすることができます。現在、自動車業界で主流になりつつあるモジュール化が進むと、トヨタの例にみられるように、世界中の部品メーカーと競合することになる一方で、技術力があれば、世界中の自動車メーカーを相手に仕事をすることができるということになります。
自動車自体が、「次世代型」へと変貌を遂げつつある現在、自動車部品はさらなる技術革新の波にさらされています。自動操縦車のためには水素などの新エネルギーを利用した従来型とは違う技術が必要になっています。そのため、自動車部品業界に、ITをはじめ他業種からの参入も始まっています。
自動車部品メーカーに求められているのは、こういった次世代型の自動車にも対応できるデバイスの開発、新技術の開発ができる体制です。こういった状況で働く人たちにも、技術を磨く、チャレンジしていくと言った資質が求められているのではないでしょうか。
自動車部品は3万点ほど、多種多様な製品があるため、自動車部品メーカーも数多くあります。業界規模は、26兆円ほど。トヨタ系、日産系、ホンダ系といった形で、大手自動車メーカーの参加企業が多く見られました。上述したようにこの体制に変化が見られています。自動車メーカー主体の、部品メーカー再編の動きも進んでいます。トヨタは、傘下大手の「デンソー」と「アイシン精機」のブレーキ事業を統合し、ディーゼルエンジンは豊田自動織機に集約、マニュアルトランスミッションの開発はアイシンの子会社に移管すると言った形で、重複した部分を一本化しようとしています。日産は、カルロス・ゴーン体制になってから、すでに系列会社の大半を解体しています。ホンダ系列の再編が進むなら、自動車部品メーカーの顔ぶれにも大きな変化が生じるかもしれません。
自動車部品メーカーの売り上げの大きい企業は以下のような企業です。
▪デンソー:5兆1,082億円(2018年3月時点)
北米、アジア、欧州とバランスよく世界市場でのシェアを持つ企業です。海外市場での成長が高く、2016年には国内と海外がほぼ半々になっています。トヨタグループで国内のシェアトップ企業です。
▪アイシン精機:3兆9,089億円(2018年3月時点)
トヨタグループのナンバーツー企業です。エンジン、ブレーキ、ボディ、電子関連などの高度な技術力を必要とする自動車部品を製造しています。
▪豊田自動織機:2兆39億円(2018年3月時点)
トヨタ自動車の元会社。自動車車両、エンジン、カーエアコン用コンプレッサーなどが売り上げ構成の半分を占めています。
▪ジェイテクト:1兆4,411億円(2018年3月時点)
ステアリング他自動車部品、ベアリングの製造を行っています。トヨタ傘下の企業ですが、自動車部品の身ではなく、風力発電や航空機、鉄鋼・半導体の製造設備にも技術が使われています。
▪トヨタ紡織:1兆3,879億円(2017年3月時点)
自動車の内装・外装、パワートレーン機器部品、繊維関連製品の製造・販売を行っているトヨタ傘下の企業です。
▪カルソニックカンセイ:1兆3,579億円(2016年時点)
日産傘下の大手自動車部品メーカー。自動車用のラジエーター製造で高いシェアを誇る企業です。
▪日本精工:1兆203億円(2018年時点)
芙蓉グループに属するベアリングメーカー。ベアリング事業では世界3位のシェアがあり、軸受けなどの自動車部品の製造販売も行っています。
自動車部品メーカーの志望動機は、今後の業界の動向を見据えた上で、どういった仕事がしたいのか、どういった面でその企業に貢献できるのかという点を考えながら書くようにしましょう。
自動車部品メーカーに内定をもらった先輩方の志望動機を挙げておきます。参考にしてみてください。
▪デンソー
「私は自動車が好きで、大学で学んだプログラミングなどの技術を活かしたいと思い志望しました。私はマニュアル車に乗っています、自分で制御したいと思っているからです。自動車の完成メーカーは、できあがった部品を組み合わせますが、ただ組み合わせるというのではなく、その車の動き、制御系統を司る部品を製造することが、真に車の製造に携わることなのではないかと考え、御社を志望いたしました。環境を考えた、また、乗りやすい環境を考慮したエンジンやトランスミッションなどさまざまな制御システムを開発しておられる御社で、更なる発展に寄与したいと思いました。」
▪アイシン精機
「私の父は自動車メーカーで働いています、そのため、子どもの頃からモノづくりの楽しさ、重要性を感じながら育ちました。大学は文系ですが、文系でもモノづくりに携われるメーカーを中心に、将来性・成長性、グローバル性、やりがいといったことを軸に企業研究を行ってきました。御社は、トヨタグループとして海外を含む広い舞台で幅広いネットワークを持っておられ、非常にスケールの大きな事業に携われるのではないかと思います。今後、新興国が発展を続けることで、ますます自動車の需要は高まると見込まれます。将来性・成長性もある御社で、是非私もその一員として働きたいと思います。」