活字離れ、新聞離れといわれ始めて久しく国内での新聞発行部数は下がり続けていますが、実は、世界で見ると2016年の新聞の発行部数は、前年比で5%増えています。世界で最も発行部数が多いのは日本の読売新聞、2番目は朝日新聞、日本は世界でも有数の新聞大国なのです。影響力を考えても、新聞社は就職志望者にとっても花形の業界です。ただ、難関でもある新聞社、志望動機はどのような点に気を付けて書いたら良いでしょうか。考えてみましょう。
(※こちらの記事は、2016年7月6日に公開したものを更新しています。)
新聞社の採用サイトをみてみると、職種の案内があります。多くの会社に、記者部門、ビジネス部門、技術部門があるのがわかります。新聞社というと、まずは記者が思い浮かぶかもしれませんが、当然ながら記者だけで新聞は成り立ちません。新聞のクオリティをあげるために良い記事、ひいては良い記事を書く記者が必須であるのは確かですが、新聞社のクオリティは他の職種でも上げることができます。
新聞社にも、会社の運営部門、経営管理に当たる部署があります。人事、採用、研修等を行う総務部門、決算業務や会計監査、資材調達等を行う経理部門等です。新聞社の収入源の柱の一つ、広告の営業や、広告の紙面割をする広告部門は重要な部門の一つです。もう一つの収入の柱である購買者を増やすための販売戦略部門も、新聞社の持続性を維持するために不可欠な部門です。新聞社の活動の一つである、文化・スポーツ・教育活動を企画運営するのも、販売前略部門の仕事になります。新聞社を支えているのは事務職です。
最近の新聞社で重要性を増しているのが、技術職です。新聞社は、今はすでに紙だけで新聞を出しているわけではありません。ウェブにも経営資源が投入されています。ウェブと紙では、ニュースの見せ方も読者のニュースへのアプローチも変わってきます。記事の内容だけでなく、見せ方も重要であり、どのようにして収益につなげていくかを、データを解析しながら、発展させていかなくてはなりません。デジタル戦略は多方面にわたり、今までの新聞社の枠にははまらない、今後の新聞のあり方とも関わってくる重要な仕事です。一方で、持続可能性や環境問題は新聞社にとっても、恒常的に取り組まなくてはならないテーマとなっています。
例えば、タブレットやスマホで新聞を読めるニュース配信アプリの開発。読者がよむ際にも、記者が記事を入力する際にも使いやすいアプリの設計をし、メーカーと一緒につくりあげていくという仕事。新聞の通常の印刷技術では廃液が出てしまうので、その廃液が出ない新しい印刷技術の開発をするという仕事。新聞記事は良質な情報、データに裏打ちされていなくてはならないという信念のもと、新聞社の積み重ねてきた経験、作業をコンピューター化、IT化するという仕事。これらの仕事すべて、技術職の方たちが取り組み、達成してきた仕事です。
記者は、名刺一枚で誰とでも会うことができ、様々な人と出会い、取材を重ね、事実を掘り起こして真実に迫る、とてもやりがいのある仕事です。記者職にも、色々あります。取材したことを文章にする取材記者は、政治、経済、社会、国際などの分野で専門性を身につけていきます。好奇心や行動力がある人に向いている仕事です。様々な出来事を、写真に残していくのが写真記者です。人を動かす記事の多くには、写真がついています。日本語には、「百聞は一見にしかず」ということわざがありますが、まさにその瞬間をカメラで写して読者に伝える写真記者の仕事は、人の心に訴え、人を動かす力があるものです。新聞にとって大事なものの一つが、正しい日本語です。取材記者たちが書いた記事が、内容にふさわしい表現になっているか、内容が正しいかを確認するのが、校閲記者です。新聞の信頼を支える「番人」です。
新聞社に入ってどんな仕事をしたいのか、という点も志望動機を書く際には考えましょう。新聞社の採用は、職務によって分かれているところも多いです。事務職なのか、記者職なのか、技術職なのか、それによって、志望動機はだいぶ変わってきます。自分の目指すもの、その新聞社に入ってからやりたい仕事像というのが違っているはずだからです。
新聞社に内定をもらった先輩方の志望動機を見てみましょう。参考にしてください。
・読売新聞社:記者
「新聞業界は斜陽産業だといわれていますが、報道という分野においてもっとも影響力を持っているのは新聞だと思います。その新聞業界で最も規模の大きい読売新聞で働くことで、日本だけでなく、世界の情報提供に携われることにやりがいを感じました。御社の説明会で、『個性豊かな社員が多い』とうかがいました。個性豊かな社員の皆さんの中で、刺激を受けながら自分も成長し、世界をまたにかける記者になりたいと思います。」
・朝日新聞社:事務職
「新聞社で働くことは、昔からの私の夢でした。高校生の頃、担任の先生から、御社の新聞の切り抜きを頂きました。内戦と干ばつで深刻な飢餓の起きたスーダンで、餓死寸前の子どもを狙うハゲワシの様子を捉えた写真記事でした。先生は、この写真を撮った記者が、写真を撮るという作業にかまけ、子どもを助けなかったという批判に遭い、自殺してしまったこと、事実を伝えることの難しさや大切さを教えてくださいました。それ以来、新聞に関わる仕事がしたいと思ってきました。大学に入ってから、大学祭実行委員会で働きながら、自分は、委員会や委員の仕事を支えることにやりがいを感じました。新聞社でも、記者をはじめ、新聞に関わる人々の仕事を支える方が、私の適性であると考えました。御社の構築されている素材データベースにより、関連記事を検索できるシステムや、入力端末の整備など、記者の仕事をサポートする業務の濃さにも魅力を感じています。デジタル事業においても、情報発信するだけではなく、紙面をそのまま掲載するなど、新聞という製品にこだわりを持っていると感じました。これらに共感し、記者をはじめ新聞に関わる全ての人のこだわりを支えたいと思っています。」
・毎日新聞社:技術職
「私は、小さいころからとにかく新聞が大好きでした。新聞を読むことで、子供でも大人でも好奇心を刺激される、そんな風に思えたのは毎日新聞でした。しかし、私自身は、文章能力がなく記者になるのは無理、不向きだと思います。しかし、会社説明会やOBの方にお話を伺った際に、記者以外にも新聞に携われる職業があることが分かり、魅力を感じました。「好きを仕事にする」をかなえて、毎日新聞を読んで好奇心を刺激される人を増やすべく、頑張りたいと思います。」
・共同通信社:記者
「私は、国中、世界中に自分が書いた記事が届けられるような仕事がしたいと思っています。御社は、国内、国外問わず、広く取材、報道できる環境をお持ちです。OB訪問の際に会社訪問もさせていただきましたが、働いている方々が魅力的で、社風の雰囲気の良さを実感することができました。そんな魅力的な方々と切磋琢磨しながら、働きたいと思い志望いたしました。」
・日本経済新聞社:営業
「日本の社会を動かしているのは多くのビジネスマンであり、日本経済を支えるオピニオン層に向けて情報を発信していくことが、日本全体を明るくしていく契機になるのではと思いました。御社の新聞は、専門的でありつつも、広範囲に分かりやすく編集されており、人生を豊かに彩ってくれるツールであると思います。その点を、より多くの一般の消費者へ広めたり、より様々な企業へ広告用媒体として提案したりしたいと思います。」