就職活動を始めると、「自分らしさを教えてください」「あなたの人となりがわかるようなエピソードをお話しください」といった質問をエントリーシートや面接で聞かれることがあります。就活セミナーでも、「自分らしい就活をしてください」と言われたりします。「自分らしさ」とは? どうやって見極めたらいいのでしょうか。
<ダイジェスト>
就活で言う「自分らしさ」とは?
「自分らしさ」を見つけるには?
面接やエントリーシートで聞かれる、「自分らしさを教えてください」といった質問の意図はなんでしょうか。企業は、就活生に「自分らしさ」を尋ねて、どういったことを知りたいのでしょうか。企業の立場に立って考えてみましょう。
ただ、ここで企業側が求めるであろうと思う自分をつくる必要はありません。というよりも、自分ではない理想像のようなものをつくりあげて、その人物になりきって語るのはNGです。企業側は、ステレオタイプの理想像を求めてはいません。企業の存在意義は、経済活動を通して利益を上げること、と言いましたが、そのためにはいろいろなタイプの人がいた方が良いのです。ですから、自分なりにつくりあげた理想像は必要ありません。あなたが働き始めた時に困ったことに陥らないためにも、自分ではない人を演じるのはやめましょう。企業は、あなたがどんな人で、仕事を行う際にどういった考え方で向き合い、どういった行動をする人なのか、といったことを知りたいのです。あなたが働き始めたとして、一緒に働きたい人なのかどうかを知りたいと言っても構いません。
では、あなたはどうでしょうか。志望先の企業で働きたい理由があるはずです。その理由が妥当なもので、あなたがその企業で働くことが双方にとってふさわしいものだと思っているのなら、あなたでない誰かを創りあげる必要はなく、あなた自身を表現できれば良いはずです。自分が、どういった局面でどんな風に感じて、どのようなことを行うか、という「自分らしい」行動、考え方を伝えなくてはなりません。
就職活動で「自分らしさ」を伝えるには、前もって「自己分析」をすることが不可欠です。「自分らしさ」は、自分の中のことだからその場で話せばよいというわけにはいかないのです。まず、自分のことを知る必要があります。そのために、手助けとなる方法を挙げてみます。試してみてください。
1. 以下に挙げる項目それぞれを10個ずつ書き出してください。
・自分の長所、得意なこと
・自分の短所、苦手なこと
・自分が人と違うと思う点
10個もないと思うかもしれませんが、10個探してください。もし、もっとたくさん見つかってしまったら、一度書き出してから、10個まで減らしてください。自分をきちんと棚卸しないと、なかなか10個にできません、その過程が重要なので、必ず10個ずつにしてください。また、自分で見つけられないと思っても、最初は人に相談せずに、自分だけで考えて下さい。
2. 家族や仲の良いお友達5人に、以下の項目を2つずつ挙げてくれるように頼んでください。誘導はしないようにしましょう。
・あなたの長所、良いところ
・あなたの短所、嫌いなところ
・あなたの面白いと思うところ
そう思う理由や、どういったことがきっかけでそう思うようになったのかも聞いてみてください。きいたらすぐに、それぞれをメモしておいてください。
3. 自分で見つけたことと、他の人から指摘されたことを突き合わせてみてください。同じものもあれば、全く違うものもあるかもしれません。また、自分では短所だと思っていたことを、お友達は長所で挙げたりするかもしれません。
・同じもの、ほぼ同じ内容のものは一つにまとめます。
・違うものは、自己分析を深める良い材料です。
自分が短所だと思っているものが長所であがってくるといった、項目が違うものは、見方を変えれば、違う印象になるということです。
自分だけが気づいていて、他の人からは出てこなかったこと。これは、他の人には2つしか聞いていないために、出てこなかっただけかもしれません。もしくは、あなたがあまり見せないようにしている点なのかもしれません。
他の人から言われたけれど、自分では気づいていなかったこと。これは、自分では納得できないと思うことが含まれているかもしれません。でも、他の人にはそのように見えているわけですから、どうして相手はそのように思うのか、自分が気づいてないだけでそのような面があるのか、それとも、自分があえてそのように見えるような行動をとっているのか、考えてみてください。
4. リストの項目の脇に、それを物語るエピソードや経験を書き込みます。
例えば、こういったリストができたとします。
長所 | 慎重(友達A、父、母) | この二つはまとめる。 | 大学の履修届に丸2日かける。 |
根気がある(自分、妹) | |||
正義感が強い(父、友人B) | 不公平だと思うと怒るから、実はまとめられる? | 猫をいじめていた上級生と喧嘩をしたことがある。 | |
短所 | 怒りっぽい(自分) | 行列に横入りをされたりすると顔にも出るし、文句も言う。 | |
飽きっぽい(妹) | 自分では思わないけれど… | お菓子つくりに凝っていたけれど、最近は作っていない。 | |
とろい(自分、母) | 何とかしたいけれど、幼いころからでなかなか変わらない。 | 着替えにも時間がかかる | |
違うところ | 食べ方がきれい(父、母、友人A) | 自分では気づかなかった… | 食事の仕方も、お箸の使い方もきれいだそう。 |
日本舞踊を習っていた(自分) | 小学校1年生から高校2年生まで | 所作がきれいになると言われるけれど? |
このリストは、「自分らしさ」のネタ帳です。すべて、あなたの中にあるものですから、胸を張って、「自分らしさ」を語ってください。ある程度の数を用意したのは、企業によって、社風によって、一番合うと思う部分をアピールするのに使えるからです。また、話を深めていくために、いくつかの項目を組み合わせて使うこともできます。例えば、こういった感じで話すことができるかもしれません。
「私は、幼いころから動作が少し鈍いというかゆっくりな面があります。着替えにも時間がかかり、母はずいぶん苦労したそうですが、母はせかすことなく時間をかけて育ててくれました。私は小学校の頃から日本舞踊を習っていましたが、日本舞踊はゆったりとした動きのように見える動作一つ一つに細かく気を使い、美しく見せなくてはいけません。今でも、機敏とはいえませんが、自分なりに一番良い手順を考えながら色々な作業を根気よく積み上げていけるようになったのは、そのおかげだと思います。」
いかがだったでしょうか?就職活動を進めていくにあたって企業ごとに求める人物像が異なるため、「偽りの自分を作らなければならないのではないか?」と思われる人もいらっしゃるかしれません。しかし、就職活動は、就活生と企業のマッチング図るものです。そのため、就活生にも企業を選ぶ権利があります。今回の学んだことを意識し、自分らしさを存分に出して納得のいく就職活動にしましょう!