就活をしている中で「自己分析」は書類の提出においても、面接をする時でもとても大事な下準備ですよね。その下準備をしっかりと中身の濃い内容でできるか、それとも浅い内容でしかできていないかによって成果は大きく変わると思います。今回は少しでも内容が濃くなって、その後の面接や書類作成に大いに役立つ自己分析の方法としてオススメな「自分史を作る」という事についてお話したいと思います。
自分史はその名前の通り「自分の歴史」です。現在の自分は過去の自分の様々な出来事(歴史)の上に成り立っていますから、それらを紐解く事は自分を改めて知る上でとても大事なことです。
具体的にどんなメリットがあるかというと、
・どんな人間なのか? を客観的にミエル化(図式化)できる
・考え方のクセ、行動のクセを客観的に発見できる
・人生(約20年)の様々な出来事を通じて自分の個性を客観視できる
・現在の自分のクセや特徴のきっかけや因果関係を発見できる
などが挙げられます。
平面的に現在の自分を分析するだけではなかなか効果的とは言えないのですが、「自分史」を作ることで自分自身の事なのに、新たにいろいろと発見できるメリットがあります。
もう一つのメリットとして、「客観的な」という視点も得られます。どうしても自分の事となるとその時の気持ちが先行してしまい、他者から見た冷静な視点が欠けてしまいます。これこそが一番自己分析を難しくしている要因なのです。
採用において企業は「会社にとって役に立つ人間なのか」だけ見ています。何も華々しい経歴を持っているからと言って、それだけで評価をするようなことはありません。「全国大会でベスト4に入った」「部活で100名の部員を率いていた」「海外に留学して国際感覚が身についている」「ヒッチハイクで全国一周を成し遂げた」など、実に素晴らしい実績を持った学生さんも沢山いますが、実際のところ、それら華々しい経歴を持つ学生が企業から内定を貰えているかといえば、必ずしもそうではないのが現実です。
企業はそんな事よりも、「どんな考え方をする人物なのか?」「どんな行動をする人物なのか?」といった、人間的な特徴を特に重視して見ています。その特徴をもとに、自社の仕事を重ね合わせる事で、活躍するか? それとも、活躍しないかを判断しているのです。
エクセルなどでシンプルな表を作成してみてください。
・縦の列は時系列で、幼稚園、小学校低学年、小学校高学年、中学時代、高校時代、現在(大学時代)と書き込む。
・横の行は、出来事、行動、感じたこと、その後成長したことというように、どんな出来事があって、どんなことを考えたり、変化したのかを記入できるようにしてみてください。
書く上で大事なことは2つ。「表を全て埋めるつもりで書く!」「内容は気にせずに、量にこだわる!」という事です。当然ながら最近の事でもある高校や現在の事が記憶から取り出しやすいはずですし、自分の好きだったことは特に記憶が鮮明だったりします。逆に時間のたってしまった小学校の事や、あまり興味を持っていなかった事などは殆ど記入できないかも知れません。
しかしそれでも構わないので、偏っていても気にせずにガンガン書きましょう! そして書けない時はスッパリその日は止めて、翌日以降にまたやれば良いのです。面白いもので、記憶は一つ出てくると、連鎖して新しく思い出したりするものです。僕自身の体験では全く違う事をしている時にふと急に記憶が甦ったりします。テクテクと駅へ向かって歩いている時や、仕事などで単純作業をしている時などにふと記憶の彼方から甦って来たりします。そんな時にもすぐに情報をキャッチできる様に、スマホのメモ機能などを活用して、内容を貯めておく様にしましょう。
また、不思議なもので、全く出てこない時代などもあったりします。そのあたりも当時の周辺環境(家族で引越しをして転校した・飼っていた最愛のペットが死んでしまったなど……)を書き出してみて、考えてみても良いと思います。記憶が出てきにくい理由が見つかるかも知れません。
表に記入する中でネガティブな出来事、悲しいこと、悔しいことも出てくるかも知れません。でもそれらは隠したりせずにできる限りしっかりと書いてみてください。なぜなら紛れもなく今のあなたにとって大事な経験をくれていたはずですし、その経験があったからこそ今の自分の行動や考え方になれたかもかも知れません。
人間は成功体験や幸せな気持ち、安心感だけでは絶対に成長できないものです。ポジティブな体験だけでは、まともな大人から見ればかえって魅力のない人に見えてしまうかも知れません。過去の様々な出来事がある中で、ネガティブ体験もしっかりと思い出して記入しましょう。
粘って書いたとしても、記憶が出てこなくなってギブアップしそうな時は、ぜひ実践して欲しい方法があります。それは「他人の力を借りる」という事です。
まず、誰の力を借りるか? ですが、保護者、兄弟、古い親友がよいと思います。共通点は自分の古い過去も知っている、自分を表面的な関係ではなく深く知ってくれている人たちです。方法は、表に書いてある言葉をそのまま質問形にして自分に投げかけてもらうのです。
例えば、小学校の低学年の時に一番何して遊んでいた? あなた独自の遊び方はあったの? とか、中学時代に一番嬉しかった事は何? とか◯◯の時はなぜそんな事が出来たの? ◯◯の出来事の後、あなたの中で気づいたことはあった? というようにお願いしてみてください。
自分一人だと何もでてこないアイデアも、他の人に質問されると急に脳が活発になり、記憶がたくさん甦ったりします。過去のポジティブな事もネガティブな事も、ぜひさらけ出して答える事で、自分の過去を改めて発見するきっかけになると思います。
とにかく自分史は質より量にこだわって書き出して欲しいのですが、ある程度自分史の全ての枠が埋まってきたなと思ったら、敢えて客観的な視点で読んでみましょう。他人が読んでもわかるような内容にしたり、文章も読みやすく修正しましょう。最終的には就活のレレジュメや面接の場面で話す内容でもあるので、自分だけしか分からない表現では困ってしまうからです。また下記のようなチェックも入れてみてください。
・人生を通じてもっとも時間やお金をかけた事は何だった?
・共通している価値観や行動は何か?
・何度も出てくる単語、行動、気持ちはないか?
最後にこれもオススメな方法ですが、自分史の表にまとめた内容を全体で吟味したあとに、一本の曲線でグラフを書いてみてください。縦軸は上がハッピー、下がアンハッピー、横軸は一番左が0歳、一番右が現在の自分という感じでざっくりとグラフを書いてみてください。そしてそのグラフの高まっている所や凹んでいる部分に吹き出しを書いて「◯◯な状態だった」「◯◯な気分だった」などといろんなことを記入してみるのも良いと思います。この方法は楽しくて理解度も深まるのでオススメですよ。
佐藤 大(さとう だい)
神奈川県出身。採用コンサルタント。就活アドバイザー。神奈川県の自動車販売ディーラーにて人事、採用に関する業務に約8年携わり、累計で延べ3,000名の学生の面接や就職相談に応じる。「人」の持つ可能性や組織に与える影響のの大きさを数多く目の当たりにしてくる中で、さらに追求すべく2015年より独立。高校生、大学生に向けての就職指導、企業の採用支援、採用担当者育成などにに携わり現在に至る。