ほとんどの企業で、エントリーシートや面接などの際に「学生時代に頑張ったこと」や「自己PR」を聞かれます。しかしこの2つについて、就活生の中には違いが分からず、混同してしまっている人が少なくありません。質問の意図や伝えるべき内容が異なりますので、その違いをしっかり理解しておきましょう。
例えば「学生時代に頑張ったことは何ですか?」という設問に、どのような回答を考えるでしょうか。中には「頑張ったことは1つで良いのか」と疑問を持つ方がいるかもしれません。できるだけ自身のことを伝えるため、いくつものエピソードを盛り込みたいと考える方も多いはずです。
この質問によって採用側が知りたいこととは、学生時代にどのようなことに取り組み、それによってどのような能力を身につけたのかということ。そして、入社後にその能力をどのようにして仕事へ活かそうと考えているかを判断しています。そのうえでは、「なぜそれを頑張ったのか?」
という理由についても関心を持っていることでしょう。質問に対して適切に回答するには、まずこうした採用側の意図を理解することが必要です。
エピソードにおいてはただ「辛かったこと」「苦労したこと」とその結果を告げるだけでなく、その中での出会い、あるいは困難をどのようにして乗り越えたかの過程を伝えます。それによって、就活生の性格や志向性なども理解することができるのです。
企業の人物評価では、過去に達成した成果やスキル・能力はもちろん、その人の行動特性や思考力なども評価対象にしています。
例えば「TOEICで900点以上を取った」という成果があれば、それまでの勉強は頑張ったこととして十分に有意義なテーマとなるでしょう。しかし企業が知りたいポイントは、その結果だけではありません。なぜTOEICの試験を受けたのか。そしてどのようにして900点以上獲得したのかという過程。またその中で遭遇した困難や、それを乗り越えるための工夫などを見ています。
また何かを成し遂げることで、今現在にそれがどう繋がっているのか。また、今後就職してからどのように活かしたいと考えているのかも、非常に大切なポイントと言えるでしょう。このように、行動特性や思考力を踏まえて記述することでこそ、「頑張ったこと」が採用側にきちんと伝わります。
では次に、自己PRについて考えてみます。そもそも就活時に企業が自己PRを求めるのは、なぜなのでしょうか。これは、企業の存在意義を考えると答えが見えてきます。
企業というものは営利を目的としています。その活動目的は社員に給料を払うことではなく、株主に対して利益を還元することが第一となるでしょう。そのためには、常に利益をあげていかなければなりません。つまり会社の利益をあげるために、経営者も社員も一丸になってそれぞれの役目を果たしていくわけです。企業は利益をあげるために、その収益に貢献できる人材を求めて採用活動を行っています。
このことから、企業が就活生に自己PRを求める理由は、そこから見えてくる事柄が自社の利益に結びつけられるか否かを判断することにあると言えるでしょう。現在のみならず入社後の可能性を含め、自社の利益に貢献してくれる人物なのかを自己PRから確認しています。
自己PRにおける一番の目的は、あなたの強み・能力がその企業にとって必要であるということをアピールすることです。つまり自己PRのテーマは、直接的に「志望する企業の仕事内容において、自身の強み・能力がどう活かせるのか」を説明できなければいけません。
例えば「私の強みは、いつもニコニコと朗らかで、誰とでも友達になれることです
などいう自己PRはどうでしょうか。一見すると、コミュニケーション能力のアピールになっているようにも思えます。しかしビジネスの場で対峙する相手は、決して友達ではありません。友達との交友関係と、ビジネスにおける良好な人間関係とは異なるのです。その強みが企業の利益に繋がるかと聞かれれば、残念ながら弱いと言わざるをえないでしょう。
自己PRでは、直接的に企業の利益に繋がる、あるいは実務に活かせる強み・能力をアピールすることが大切です。そのうえで、根拠となる具体的なエピソードを盛り込んでみてください。例えば「営業のアルバイトで社員以上の成績をあげた」「サークルで100名規模のイベントを成功させた」「留学経験を持ちTOEICではスコア900を持っている」などは、入社後の戦力性も感じてもらうことができるでしょう。
何を伝えるべきかを理解するには、まず入念な企業研究が大切です。たとえ同業界であっても抱えている課題や状況は異なり、同時に求める人材も違っています。志望企業が何を求め、そこに何が活かせるのか。この双方がマッチしなければ、いくら素晴らしい強み・能力も魅力的とは感じてもらえないでしょう。
「頑張ったこと」は過去の経験であり、自分という人となりを表すもの。そして自己PRは、さらに実務と紐付ける中で、企業にどのような貢献ができるかという具体的な提示です。似て非なるものですので、採用側の意図を理解したうえで適切な記述を心がけてください。