特別講師:丸山マルコ
2001年3月大学卒業後、メーカー会社に就職。
以後、さまざまな企業で人事担当者として経験を積み、現在は人材業界で新卒向けの講座を多く行っている。
プライベートでは2児の母。
就活中の皆さんは、未来にどんな夢を描いていますか?
「自分の良さを活かして楽しみながら仕事をしたい」「キャリアを積んでどんどん成長したい」そんなキラキラしたイメージを膨らませている人もいるのではないでしょうか。しかしその一方で、もしいつか「結婚」や「出産」をしたら両立できるのかという心配もあり、どんな働き方が良いのか迷ってしまう人も多いかと思います。そこで今回は、私(2児の母)の実体験をまじえつつ、女性の就活について考えてみたいと思います。
私が就職活動をしたのはもう14年も前になるのですが、「海外と関わる仕事がしたい!」と思い、就職活動をして、あるメーカー会社に入社しました。しかし、入社してもなかなか思うような仕事をさせてもらえず(といっても、入社半年では当たり前なんですけどね)、たった半年で辞めてしまったんですね。そこからは、紆余曲折ありながら企業の人事担当者として新卒採用にも関わるようになり、現在は人材業界の会社で働いています。
そのような経験を経て私が学んだことは、「自分の大切にしている価値観は変化する」ということです。これから就職活動をする上で、「こんなはずでは! こうでなければ!」と思うことも多々あるかもしれません。でも良いも悪いも含め、自分に来た流れをどれだけ前向きに受け入れられるかで、その後の変化が楽しくなっていくということをお伝えできればと思います。
では、これから皆さんに二つの質問をしますので、よく考えてみてください。
Q1
女性にとって働きやすい会社とは、どんな会社だと思いますか?
Q 2
自分自身にとっての働きやすい会社はどんな会社ですか?
下記から自分の大事にしたい項目を3つだけ選んでください。また、なぜその項目を選んだのか? その理由も併せて考えてみてください。
□仕事とプライベートのバランスを大事にしたい
□自己実現のために働きたい
□自己成長したい
□誰かの役に立っているという実感をもちたい
□社会貢献性の高い仕事をしたい
□仕事を通して何かを極めたい
□勤務時間・休憩に余裕がある環境で働きたい
□縛られない自由な働き方をしたい
□国際的な仕事をしたい
□何かに挑戦するような仕事がしたい
□好奇心を満たせる仕事をしたい
□安定した職場に勤めたい
□達成感が得られる仕事をしたい
□何かを創造したい
□自立したい
□高収入を得たい
□何かを指導するような仕事をしたい
□誰かに奉仕する仕事をしたい
□自宅近くの職場に勤めたい
□仕事を通して何かを探求したい
□やりがいのある仕事をしたい
□出産しても長く働きたい
□人間関係が良い職場に勤めたい
□福利厚生の整った職場に勤めたい
□大企業で働きたい
□自分に合った雰囲気・風土の職場に勤めたい
□ベンチャー企業で働きたい
□中小企業で働きたい
いかがでしょうか?
Q1では、「育休が取れる」「残業が少ない」「女性が多い職場」「女性が活躍している」「男女均等の評価制度」などをイメージした方が多かったかもしれません。
Q2の回答は、人によって本当に様々だと思いますが、おそらく、Q1とQ2で選んだ内容が、必ずしも一致していないことに気付くと思います。Q2で選んでもらったものは、皆さんの“思い”や“欲求”ですね。これが就職活動でいう「自己分析」に当たります。
その上で、それができる会社ってどんな会社? ということで、Q1を考えていくんですね。Q1は「業界研究」にあたります。
企業選びは、「こういう働き方がしたい! これがやりたい!」という皆さんの想いが土台にあって、初めてスタートできるものですよね。そういった意味では、Q2で出た軸がQ1よりも重要ということがわかっていただけるかと思います。
しかし、多くの学生さんとお話をすると、「育休はとれますか?」「結婚しても長く働きたいんですけど、そういう会社はどんな会社ですか?」そういった質問が相次ぎ、驚かされます。もちろん「プライベートと仕事の両立」という理想があるのは素晴らしいことですが、最も重要なのは「どういう環境に身を置くか」ではなく、「そのために今自分が何をすべきか」ということだと思うんです。
元人事担当者の立場から面接時のアドバイスをさせていただくと、待遇や福利厚生から働きやすい会社を探したとしても、まずはQ2の自分が今大事にしたいことをアピールすることが大切です。ですから、良い環境を探すことばかりに目を向けるのではなく、自己分析をしっかりとしていきましょう。
もし志望先が育休制度の整っていないという会社だとしても、みなさんの働きかけで制度を変えていけるかもしれません。ですから、制度が整っていないからといって、すぐに「この会社は辞めておこう」という選択をするのではなく、あくまでも皆さんのやりたいことを大事にしてほしいなと思います。
私が学生さんに伝えたいのは、「自分が大事にしている軸は、ライフステージによって変化するんだよ」ということ。むしろ変化は自然なことなんです。ちなみに私の軸の変遷についてお話すると、就活当時の私が大事にしていたのはこの3つでした。
■やりがいのある仕事をしたい
■自己成長したい
■国際的な仕事をしたい
でも今の私が大事にしている軸はこの3つになります。
■仕事とプライベートのバランスを大事にしたい
■自宅近くの職場に勤めたい
■人間関係が良い職場に勤めたい
比べてみると、14年の間に価値観が大きく変わってきたことがよくわかりますね。
このような軸の変化についてもう少しお話したいのですが、皆さんは「クランボルツ理論」というものを聞いたことがありますか? 別名・計画的偶発性理論(プランドハップンスタンス理論)とも言われているものです。
これまでは、自分のキャリアは自分自身で意図的に職歴を積み上げて形成するものという考え方が一般的でした。しかし、この変化の激しい時代において、あらかじめ計画したキャリアに固執することは非現実的であり、「個人のキャリアの8割は予想しない出来事や偶然の出会いによって決定される」という考えが、スタンフォード大学のクランボルツ教授によって提唱されたのです。
これから皆さんも就職活動中や社会人になってから、思い通りにいかないことがあるかと思います。しかしそんなときでも、自分のキャリアにポジティブに捉えていける人は、どんな仕事に就いても幸せに働けると思います。要は「たまたま上手くいっちゃうように自分を仕向ける術」を身に付けていようということなんですね。
クランボルツは、「キャリアの8割は偶然によって決まる」と言いながらも、その偶然性を呼び込むのは自分の“意志”であり、“行動”であると説いています。皆さんも、「たとえ思い通りにならなくても思いに固執しすぎない」、「変化を呼び込む行動をする」という2点を、ぜひ頭の片隅に留めておきましょう。
今回は女性の就活についてお話してきましたが、いかがでしたか?
自分が大事にしていた軸は、ライフステージと共に変わっていって当然。今日選んだQ2の「自分自身にとっての働きやすい会社」という軸も、就職活動中に変わってOKなんです。これから皆さんもいろんなことがあるかと思いますが、ぜひ人との縁や出会いを大事にして、自分の人生に上手に取り入れていってくださいね。
※この記事は、2014年7月17日に当社アイデムで行われたセミナー『スタート前に知りたい!女性のための就活対策講座』の内容の一部を抜粋し、再編集したものです。