Q)僕はいわゆる“まんなかへん”の大学です。高学歴だからといって、社会に出たら「使える」人間なわけではない、という意見はよく見聞しますが、就活ではまだまだ学歴が重用されるのではないでしょうか。ベタですが、就活における学歴の意義について、考えを聞かせてください。
A)「意義について」とおっしゃっていますが、それを知ったところで面接のシステムが変わるわけでもないので、あなたが本当に聞きたいことは「大学の“格”が高くなくても面接に通って、社会人としてうまいことやる方法を教えてください」だと解釈しますね。それについては後ほどお応えしますが、まずは意義から。
“大学名=大学の格”は、一次審査としてはもっとも手っ取り早いんですよ。とりあえず、18歳までに培ってきた地頭は大学名だけでとりあえずは分かる。あとは、上位校の学生はやはり論理的思考力が身についていたり、理解できるようになるまで勉強を続けられるガッツなどがあります。そもそも天才なのかもしれませんし。大人数が受験するものですから、「ある程度信頼できる指標」といった意味で書類選考段階では、大学の格が重視されます。なお、選考が進んだ場合は、2つの考え方があると思います。甲乙つけがたい魅力的な人物が二人来た場合、一人が東大、もう一人が中堅私立大学だとしましょう。
その時は「同じように感じの良い2人だから、勉強できる東大生をとるか」という考えと、「同じように感じが良い2人だが、この東大生、東大の中ではたいしたことなく、こちらの中堅私大生は彼の大学ではトップクラスなのでは? だったこっちの方がいいかな」という考えです。手堅い会社は前者のような考え方をするでしょうが、これから伸びようとする会社だったら後者を選ぶかもしれません。
これが「意義」です。ただ、大学の中にも特別な存在があって、体力が必要な業種とかであれば、大学の“格”よりも体育会にいた、とか体育大学の学生の方が優遇されるかもしれません。だから、まずはあなたの大学が何か特別な見られ方をされているか、ということを考え、その強い分野を受けることが大切です。それこそ神社に就職するのであれば、国学院大学は強そうですし、特定の国との貿易に力を入れる会社であれば、東京外語大が強いかもしれない(まぁ、本当のことは分かりませんが)。
というわけで、ここから本題。あなたの大学のレベルでこの先やっていけるかといえば、やっていけるでしょう。まず2017年の就職活動市場は売り手市場なので、とりあえずはどこかに入れると思います。だから、就活ではそれほどビビらなくていい。数多く受けておけばどこか通るのではないでしょうか。氷河期であればあるほど、上位校がその底力を見せ、格差が生まれるのですが、今年はその格差がそれほどないと聞きます。
それでも心配ならば、とにかくOB訪問(別の大学出身社員でもいい)をしまくって、面接対策をその人から伝授してもらってください。それぐらいをやっておけばいいです。今から学歴は変えられないし、付け焼刃的に突然面白い体験をする必要もない。
あと、社会に出てからの話ですが、一緒に仕事を長くするような人や、同じ部署の人とは出身大学がどこか、などの話はすることがあります。そりゃあ、会話のネタの一つになりますし、もしかしたら共通点を発見できるかもしれませんから。ただ、社会人になって、いい大学を出たから優秀かというのはあなたが指摘する通り、あまり関係ないんですよ。
IT系の企業は同期同士を競争させ、どちらが先に子会社の社長になるか、事業責任者になるか、などの勝負をさせますが、上位校以外の若者が同期最速で社長になってしまったりする。それは、ガツガツとした出世欲を持ち成功に向けてギラギラした人のみがなしえるもので、それは大学の格とは関係ない。そんなことを多くの会社と接した経験から思いました。本当に、社会でうまくやっていくには、ガツガツっぷりと根性と時の運と人との出会いしかありません。そこに学歴は滅多に関係してきません。ただし、「三菱は慶應閥が強い」などの話はよく聞くわけで、伝統的大企業に入ると、そうした学閥争いで優位な大学出身者に実力では劣っていても出世争いで負けることはあるでしょう。
私の知り合いの東大出身者は三菱系に入ったのですが、同期が自分よりも早く出世したことについて「あのヤローは慶應だからオレより仕事できないのに出世しやがった、グヌヌヌヌ」と臍を噛んでいました。だったらそんな会社辞めちゃえよ、と言いかけましたけどね。あと、私が仕事をするモノカキ界隈では、早稲田出身の編集者が多いので、早稲田出身のライターは少し可愛がられているかな、とも思います。スケールの小さな学閥がここでも存在するのでした。
中川淳一郎(なかがわじゅんいちろう)
編集者
1973年生まれ。東京都立川市出身。1997年一橋大学商学部卒業後博報堂入社。
CC局(現PR戦略局)に配属され、企業PRを担当。2001年に無職になり、以後フリーライターや編集業務を行ったり、某PR会社に在籍したりした後ネットニュースの編集者になる。
著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書) や『内定童貞』(星海社)など。