今の時代、転職も当たり前。最初から「一生その会社で働くつもり」という人は、昔に比べて減っていることと思われます。でも、「新卒」というカードが一度きりなのは、今も昔も同じ。そして転職経験者のうち、多くの人に共通するのは、「最初に就職した会社があったからこそ、次が決まった」ということです。
最初に就職した会社で叩き込まれた社会人ルールや経験が次の会社で評価されたり、また理想と違った現実を突きつけられ、改めて「働く」ということを考え直したことから転職につながったり……。やはり最初の就職は大事なのですね。とはいっても、本当に大事なのは「就職先」よりも「最初の就職で、“何を学ぶか”」ということ。
今回JOBRASS編集部では、40歳平均年収が約1800万円という高賃金会社を入社3年目で辞めたHさんに、話を聞いてみました。Hさんが言う、「そこに入社した理由」と転職した理由、そして「最初の就職が大事な理由」とは?
高賃金ランキング常連企業にいたHさん。東洋経済オンラインが集計した、上場企業約3600社の40歳社員の年収ランキング(2015年) ではダントツ1位の1793万円!! ちなみに40歳推計年収の平均は約550万円だというから、3倍以上にもなる。
Hさんがいたのは、ハードな勤務で有名な企業だったが、高収益率のビジネスモデルで高年収が実現していた。マーケティングと徹底的な営業管理で、それを実現しているといわれている。“何かものづくりをしたかったけれど、就活時、具体的にものづくりにどう関わればいいかがピンとこなかった”というHさんは、「営業力をつければ、その後もどうにかなると思って」あえて飛び込んだ。
「日本一といわれるくらい、管理が厳しい会社でした。例えば“徹底した5分前行動”。約束の4分前に行ったら、『1分遅れた。1400人の会社だったら、1400人分の1分を無駄にしたということになる』と、どれだけその“1分”が大事かどうかを説かれるんです。インターネットも、ひと月に使っていい時間が決まっていました。使うボールペンの数なども。
確かに、給料はめちゃくちゃいいです。それでも僕がやめた理由は、『自分で何も新しいものが生み出せない』という矛盾をかかえるようになったんです。あまりにも機械的で、自由度がない。そうなってくると、脳みそが考えなくなってきて、これはヤバいな、と。もともと何かを作りたい、生み出したいという願望があったので、だんだんジレンマが生じてきました。
同期と転職について話すようになりました。そして、同期が受けると話していたインターネット企業に、僕も応募したんです。規模は小さい会社でしたが、勢いとこれからの可能性が感じられ、ここだったら自分が成長できそうだなっていう予感がありました。自分のアタマを使った仕事ができそうでした。
新卒のときに学生が見られるのは“経験”ではなくて“スペック”しかありません。でも、中途であれば、2年半であっても一旦どこかで働いてからいくと、そこが評価してもらえました。
僕の場合、最初の会社の営業力が半端ないことで有名だったので、『その会社で営業をしていた』というと、それが“経験”になったんです。それがなかったら、転職もできていませんでした。人気過ぎて、新卒の僕のスペックでは、とても入れなかった企業です。あと、厳しい反面、それぞれのルールになるほどと納得できる理由がちゃんとあったので、そういう考え方を知ることができたのも良かったと思っています。僕がそのままを人に対して押し付けることはありませんが、やっぱり時間は厳守だし、無駄遣いはよくないし」
最初にHさんがボンヤリ考えた「営業力をつければどうにかなる」という目論見は、Hさんにとって“正解”だったのだ。
「やっぱり、最初に就職する会社は社会人として最初の基礎になるところですし、自分にとってその後の社会生活を送るものさしになるんです。よく“3年はいろ”といいますが、年数や就職先よりも、どこであれ、最初の会社で、“いかにがむしゃらにやるか”が大事なんだと思いますね。“どこで働くか”といったことよりも、“なぜ働くのか”を考えて、自分らしい就職活動ができればいいですね。