そろそろ就職活動のことを考え始める、2018年卒の大学生。今年の夏、早速インターンシップに参加してみたという人もいるでしょう。そうはいってもまだ解禁前だし、何から手をつけたらいいのかと悩む学生は多いもの。今回は、JOBRASS新卒を運営するアイデムの人事担当者である田村憲一さんに、話を聞きました。
動きが早い学生と、情報解禁になったところで動く学生と、二分されています。動きが遅い学生も増えているのは、ここ数年就職状況がいいので、ちょっと油断している部分もあるのかなと。とはいえ、11月12月から少しずつ動いている感じです。
大学のキャリアセンターでは、ESの書き方や就活のすすめ方などの情報提供をしてくれます。最近増えているのは、1DAYインターンシップに参加して、就職のイメージを固めていこうという学生。
早く動きを開始すると、考えを整理する時間がたくさんあるため、面接などで自分の思いを伝えるという点では成長しているので、そこに関しては有利だとは思います。でも早ければ早いぶん、テクニカルな方向に走っている学生も少なくありません。グループワークではこう、面接ではどう振舞うべきなど、自分がやりたいことよりも“お作法”みたいなところばっかり研究してしまう。土台になる部分がないままに走ってしまっている学生も多いです。
企業情報などを集めるのも大事ですけれど、「働くこと」についての情報をもっと多く集めたらいいのになとは思いますね。
よくよくみてみると、自分のまわりに「働く」って一杯あって、働いている人もいっぱいいるのに、そういった人たちから情報収集せずに、本を読んだりしてしまう。たとえば何気なく見ている一つのHPでも、ものすごく人の手がかかっている。HPをみたときに、ここにどういう人が関わって、どういう仕事をしてできているんだろうということを考えていくと、「働く」っていうことのヒントがあったり、「働く」というイメージが見えやすくなるのかなと。
こういう仕事をするのって、どういう勉強が必要なんだろうと調べると、新しい感動が出てきて、情報も得られる。繰り返し繰り返し考えるということが大切です。
世の中のいろんなことの裏側に目を向けていくことが、就活において後々大きな“違い”になります。最初から、この会社に入りたい理由を考えろ!っていっても無理じゃないですか。テクニカルなことはいったんおいて、「働く」ということについて、丁寧に、自分の心のなかから沸き起こってくるものをみつけることが必要なのかなと思いますね。
私は面接もやっています。学生からみると面接では「試される」という印象がありがちですが、面接官側の本音でいうと、もっと「対話」をしたいと思っているんです。その学生がどんなときに心が動かされて、刺激されているのか。内面から沸き起こってくるものをすくい取って話をしたいなと思います。
緊張感などで、リラックスして話ができないことがあるのは仕方がないと思うんですが、その人を突き動かすのが何なのかがわからないと、うちの会社に入って毎日やりがいをもって楽しくやってもらえるかな、仕事を任せられるかなっていうことが心配になるものです。
毎日あるいは毎週、日報や週報を書いてもらっていて、一日の気づきを書いてもらうときに、グループでものごとをすすめるノウハウの気づきを書く人と、“働くとしたらこういうことにつながるんだろうな”と想像する人に二分されます。どちらに期待するかというと、後者ですね。経験を具体的に「働く」ということに置き換えて考えるとどうなるのかなという物事の考え方は、頼もしいです。
印象に残っているのは、「お父さんみたいになりたいです」と言った学生。これまで父親の仕事に興味はなかったんだけど、就職を考えるにあたり、お父さんに話をきいてみたら「すごい」と感じたそうです。そこで振り返ってみると、気付かなかったけど、お父さんはこのときこう導いてくれたんだと思ったとのことで。
誰かに与えられたのではなくて、自分から動いて、見つけて、自分の言葉で伝えようとしている姿をみたときに、この学生は社会で働く時にも、自分で切り開いていけるんじゃないかなという期待を持ちました。働くっていうことを、自分で考えよう、自分なりに解釈していこうという気概をすごく感じましたね。
想像の範囲が狭いというか、企業にいろんな部門があって、いろんな仕事があって、いろんな役割があるということを想像できない学生が多い。例えば食品メーカー希望の学生にきくと、「食は基盤で、なくてはならないものなので関わっていきたい」とか言うけれど、「そこで何をしたいのか」まで考えていない。実際仕事をしてみると、業界も大事だけれど、「そこで何をやるか」が大事です。実際のしごと目線で、職種目線で考えたほうがいいですね。
私は入社21年目になります。入社時、こんなにいると思っていなかったし、当然いやなこともありました。でも何故残っているかというと、会社の考え方、目指す方向に共感できているからということが大きいです。業界っていっても会社によってカラーって違ってくるので、それぞれのカラーにそって自分がどこに合っているのかなということが大事なんだと思います。
経営理念や、展開しているサービスが自分のビジョンに合っているかどうかも見るのは良い方法です。経営理念を検証して、実際の商品やサービスがそれに沿って展開されているのかとか。よくみると、いろんな情報がそこで拾えると思うので。
働く人に実際に会うことも大事ですが、実際にその商品やサービスを手に取ることです。実際に手にとって見ると、他社との違いがよくわかります。表現の仕方などの“実感”を商品から得ていく。もちろん直接触れられるもの、触れられないものはあると思いますが、それなしには志望動機は語れないかなと感じています。
自分はどこで、どういう働き方をしたいのか。田村さんがアドバイスするのは、それを考えるには、さまざまなものごとの裏側にある「仕事」に思いを馳せてみるということです。そこで自分が感じたこと、考えたことを突き詰め、そして企業を調べていけば、「やりたいこと」「入社したい会社」が見えてきそうです。