繊維商社繊維業界と聞くと、多くの方が“アパレル関連”とイメージすると思いますが、近年は視野を広げた動きを見せています。
国内の繊維業界は、中国や東南アジアからの安価での大量輸入、衣料品の伸び悩みなどを背景に縮小傾向に。繊維商社・メーカー各社は生き残りをかけて、従来の医療品繊維を見直し、航空機・自動車内装で需要がある炭素繊維やアラミド繊維など、世界的にニーズのある高付加価値商品にシフトしています。
また、これまでに培った繊維事業でのノウハウを活かし、樹脂や光学フィルムなど電子関連分野をコア事業とするメーカーも増えており、業界内の動向に注目が集まっています。
では、各社の強みや力を入れている分野にどんな違いがあるのでしょうか?
志望される方はどういった点に気をつけて志望動機を書くと良いのでしょうか? 一緒に考えてみましょう。
(※こちらの記事は、2016年6月8日に公開したものを更新しています。)
繊維商社は、繊維と関連するすべてのモノ・情報を収集・調達し、世界市場のトレンドに柔軟に対応します。
主な扱い品目は、テキスタイル、繊維素材、衣料製品、産業用の繊維資材等。素材メーカーと共同で、原材料の加工や生産を行ったり、技術開発を主導したり、新たな素材の企画を行ったりもします。
また、アパレルメーカー・販売店に製品の企画提案を行ったり、生産・加工・物流といった面で積極的に関わったりすることもあります。最近では、衣料以外の分野で使われる産業用資材としての繊維の開発や研究、生産に関わる企業も増えているようです。
商社のメイン業務は、生産者と販売者の間に立って、取次をすること。総合商社であれば、扱い品目が多岐に渡り、高額な取引を行います。専門商社は、その専門とする分野で取引を行います。
ところが、繊維商社は、取引を取り次ぐだけではなく、メーカー的な機能やトレンドを作り出していく発信者的な機能も持っている点が他の専門商社や総合商社と違う点になります。
専門的ネットワークを持つことにより新たな素材を作り出す研究開発分野でも先んじることができたり、世界中のニーズを把握して新たな素材を作り出す企画を立てたり、といった幅広い仕事に携われるのが魅力です。メーカー、マーケティング、販売、取次……と多面的な展開をしています。
繊維商社にはそれぞれに得意分野があります。素材メーカーとの関連が強い企業もあれば、もちろんアパレル系が強い企業もあり、アパレル系の自社ブランドを立ち上げることもあります。
しかし、時代の移り変わりや変化するニーズによって、業界全体が綿花や羊毛を原料とする天然繊維、化学的につくられる合成繊維といった通常の繊維から、自動車や建設資材として使われる特殊繊維分野の開発・販売、炭素素材等の高機能商材の開発・販売へとシフトしつつあります。
では、売上高順に、主な繊維商社を見てみましょう。
▪東レインターナショナル株式会社(2018年3月期決算売上高5,876億円)
繊維業界のリーディングカンパニー東レグループの商事会社。日本を含む世界21ヶ国・地域の販売拠点を活かし、炭素素材も含め、多様な製品とサービスをグローバルに展開。ファインケミカル、炭素繊維、光ファイバー、プラスチック樹脂等多彩な扱い品目があります。
▪蝶理株式会社(2018年3月期決算売上高3,117億円)
繊維、化学品、機械の専門商社。売り上げの約8割は海外関連、海外36か所に事業所があり、海外駐在、海外出張の多い企業です。ファインケミカルや液晶ガラス基板等高付加価値、高機能商材を扱っています。
▪帝人フロンティア株式会社(2018年3月期決算売上高2,156億円)
総合繊維メーカー帝人系の商社。衣料製品、繊維原料・素材、インテリア・建設関連資材、樹脂製品、フイルム製品等の輸出入取引と販売を行っている企業です。
▪豊島株式会社(2017年6月期決算売上高1,860億円)
名古屋に本社を置く創業1841年の老舗企業。世界中から綿花や羊毛などの原糸を買い付け、世界中に販売するとともに、生地の生産や販売を行っています。またアパレルメーカーと企画を立て海外で衣料品を生産、国内市場で販売しています。
▪モリリン株式会社(2018年2月期決算売上高1,053億円)
1662年創業の繊維の総合商社。素材開発にこだわり、生活繊維を通して「豊かな暮らしの創造」を目指している企業。原糸、原料、テキスタイル、衣料製品を全国の販売業者に卸し、輸出入も行っています。
▪株式会社ヤギ(2018年3月期決算売上高1,145億円)
繊維の専門商社。原料から製品として市場で販売されるまでのすべての段階に関わり、幅広く展開している企業。自動車メーカーやハイテク関連を含む多様な分野の企業と関わっています。
繊維商社の志望動機を書くにあたって気を付けたいのは、「業界の特色」です。繊維商社で働くなら、専門的な知識や情報を基に、素材開発や生産から新たなトレンドの企画、流通、販売までを考えなくてはなりません。もちろん、志望先企業の得意分野というのがありますから、どういった点に特色があり、そこで働く社員にどういったことが求められているのか、というのをおさえて、志望動機を書くようにしましょう。単純に、「服が好き」ということだけではなく、自分がどういった点で、その企業に適応しているのか、貢献できると思うのかを、実体験を交えながら書くようにしましょう。
繊維商社への志望動機例を挙げておきます。参考にしてみてください。
▪株式会社蝶理
「グローバルな視点で事業をしておられ、海外にいくつもの事業所がある御社で、世界を股にかける仕事がしたいと思いました。事業内容も化学と繊維、生活に密着しつつ、今後の展開も期待できる分野に及んでおり、いろいろなことに挑戦できる企業であるというのに魅力を感じています。また、会社説明会等で会った社員の方々が魅力的で、かつ、先に進めるような教育制度があると教えてくださいました。人を大切にする会社であるという点にも惹かれ、志望いたしました。」
▪帝人フロンティア株式会社
「私は、提案型営業をしたいと思い業界研究をした結果、商社を軸に就職活動を行っております。御社は、帝人のグループ企業でアラミド繊維、炭素繊維、熱防止フィルムなどの高機能素材を扱うことができます。一方で、モノづくりの企画次第では、グループにとらわれない商品も扱うことができる自由があるとも伺いました。まさに、私がしたい提案型の営業が幅広くできると思い志望しました。」
▪豊島株式会社
「御社の仕事への姿勢に感銘を受け志望いたしました。失敗しても挑戦し続けることができるフィールドがあること、社員の方々がそれぞれ自分の仕事に自信を持っておられ、熱く語ってくださったこと、この二点から、私も御社で働き、業界トップ企業を目指したいと思いました。」
▪モリリン株式会社
「御社は、素材開発力、流通体制の面で強みを持っておられ、企画提案型の仕事を進めるうえでも魅力的な企業だと思います。また、非常に健全な財務体質を持っておられることも、企業としての実直さの表れだと思います。私は、派手ではありませんが真面目に仕事をしていきたいと考えており、御社であれば、納得のいく仕事をさせていただけるのではないかと思い志望いたしました。」
▪株式会社ヤギ
「新たなブランドを作り出すという仕事に魅かれ、最初はアパレルメーカーを考えたのですが、就職活動を進めるにつれて、ODM生産に携わることで、新たな服作りにトータルで関わることができる御社のような業態に魅かれました。素材から始まり、衣料ブランドの企画・販売まで、御社であればすべての段階に関わることができます。また、日本だけでなく海外市場に展開できるという点も魅力でした。」