「DAKARA」「伊右衛門」「ザ・プレミアム・モルツ」「金麦」など酒類・清涼飲料水で有名なサントリーホールディングス。毎年、就職活動生が選ぶ人気企業ランキングの上位に名前が挙がっています。しかし、大企業のためなかなか企業全体を把握することが難しいのも現実です。今回はサントリーの事業内容・グループ会社の違い、今後の課題などをわかりやすくまとめていきます。
ひとことで言うと:サントリーは食品事業・酒類の事業を中心に337社が所属
サントリーグループは、純粋持株会社制を導入しており、グループの規模としては
◎サントリーグループ
グループ会社:312社(2017年12月31日時点)
従業員数:37745名(2017年12月31日時点)
連結売上高:2兆4203億円(2017年1月1日~2017年12月31日)
連結経常利益:2536億円(2017年1月1日~2017年12月31日)
◎サントリーホールディングス
男女比 男性78%/女性22%
平均年齢 41.3歳
となります。
サントリーグループは以下のような構成となっています。
サントリーグループホールディングス株式会社(持株会社)
L【食品事業】サントリー食品インターナショナル…日本、欧州、アジア、オセアニア等のエリアで清涼飲料の販売・製造
L【酒類】
L ビール事業 サントリービール…ビール類の販売・製造
L スピリッツ事業 サントリーワインインターナショナル/ビームサントリー…世界中でスピリッツ(蒸溜酒)の販売
L 【その他】
L 健康食品事業 サントリーウエルネス
L 中国事業 サントリー(中国)ホールディングス
L 機能会社 サントリーMONOZUKURIエキスパート/サントリービジネスシステム
(※上記の図は各事業を手掛ける企業の抜粋です。その他の事業も併せ、全312社所属しています)
このようにサントリーグループは食品、スピリッツ、ビール、ワイン、健康食品などさまざまな分野に展開し、サントリーブランドを広めています。
ひとことで言うと:「やってみなはれ」精神を受け継ぎ、国内外の飲料商品を展開。
サントリーは、1899年・創業者鳥井信治郎が、大阪に鳥井商店を開業し、ぶどう酒の製造販売を始めたところから歴史がはじまりました。1929年、日本で最初の本格ウイスキーを「サントリーウイスキー白札」、1937年「サントリーウイスキー角瓶」を発売しました。1963年に「サントリー株式会社」に社名を変更すると、サントリービールの製造発売を開始しました。1986年に麦100%生ビール「モルツ」の販売を開始しています。
サントリーはお酒だけではなく、1964年には「サントリーウーロン茶」、1993年缶コーヒー「BOSS」2000年「DAKARA」2004年「サントリー緑茶 伊右衛門」2006年「特定保健用食品『黒烏龍茶』」など、幅広い世代が楽しめる飲料を展開してきました。
また国内外の同業との事業展開も進めていることも多々見受けられます。
1980年にはペプシ系ボトラー会社のペプコム社を全株取得し、アメリカの清涼飲料市場に参入、2001年には日本リーバ株式会社との「リプトン」ブランド紅茶飲料の共同事業の合意により、リプトンを発売、2005年にはスターバックスコーポレーションとの提携により、チルドカップを発売、コンビニでもスタバの味を楽しめるようになりました。
2000年代は海外展開も積極的に行っており、「サントリー(中国)ホールディングス」「サントリー食品ヨーロッパ」を設立、2014年にアメリカのBeam Incを買収したニュースはグローバル・海外事業展開に力を入れる象徴的な出来事ともいえそうです。
元々はぶどう酒からスタートしたサントリーもいまや、老若男女関わらず楽しめる商品を、自社・他社、国内外問わず、多角的な視野から商品開発・企画・販売を行っています。そのような姿勢は、サントリーの象徴ともいえる創業者・鳥井信治郎の「やってみなはれ」という精神を受け継いでいるとも言うことができます。
現在、サントリーホールディングスの代表取締役社長を務めるのは、新浪剛史氏。2014年から着任しているのですが、ローソン取締役社長から転身した、というニュースが話題になりました。今後、新浪氏の手腕が問われています。
それでは各事業の売り上げを確認していきましょう。
(※2017年12月期 決算概況(連結)から引用しています)
◎サントリーホールディングス 2017年12月期(2017年1月1日~2017年12月31日)売上
・売上高 2兆4202億円(前年同期比 102.6%)
・営業利益 2536億円(前年同期比 100.3%)
・経常利益 2268億円
・純利益 2114億円
◯飲料・食品セグメント (サントリー食品インターナショナルなど)
▼売上高 1兆2264億円(前年同期比 102.2%)
…ブランド強化や新規事業の創造に取り組み、国内外での展開を強化
トピックス:
・7月「新 クラフトボス」を発売
・新ジャンルビール「頂」発表
◯酒類セグメント(ビームサントリー社、サントリービール、サントリーワインインターナショナルなど)
▼売上高 7225億円(前年同期比104.8%)
トピックス:
・「-196℃ストロングゼロ」が安定的人気を維持
・「ほろよい」前年比110%⇒ノンアルコール市場での成長
ひとことで言うと:「サントリーブランドを世界へ」
決算概要やサイトをみてみると、酒類だけでなく清涼飲料水も世界で広げることを重要視していることが分かります。
決算概要で、“知名度も高くブランドが知られている国内事業では、そのブランドを確固たるものへ、ブランド価値の向上をつとめていきます。そして国際事業では、事業基盤の強化、コスト削減をはかり、収益性の向上、エリア統括機能を強化していく”と書かれているように、飲料自体は、人々にとってかかせないもの、と考えると飲料メーカーは他のサービスより安定していると考えられがちですが、国内に目をうつすと、人口減・各メーカーの競争激化もあり、決して安定しているとはいいきれません。
実際、桃の天然水などを展開してきたJTは2015年9月に飲料部門から撤退しました。JTが発表したプレスリリースを見てみると飲料市場の現状がよくわかります。
「飲料市場全体が成熟し、事業規模が優劣を決する構造にあることや商品ライフ サイクルが短期化する中で、安定的且つ継続的な収益基盤を確保するためには、積極的な販促活動で規模を追求しつつ、高品質・独自性を追求した商品を短期間で開発し続けることが不可欠な厳しい事業環境にあります。
このような状況を踏まえ、将来の成長戦略について検討を重ねた結果、JT グループの中長期的な成長に貢献していくことは困難であると判断し、経営資源の配分な ど全体最適の観点から、2015 年 9 月末を目途にJT 飲料製品の製造販売事業から撤退することと致しました。」
▼2015年2月4日 プレスリリースより「JT 飲料製品の製造販売事業からの撤退について 」
https://www.jti.co.jp/investors/press_releases/2015/pdf/20150204_J01.pdf
この文章からも国内だけで、飲料業界を闘いぬくことは難しくなってきていることは明らかです。
そこで各社に求められていることは、国内においては「新商品の確立」「既存ブランドの付加価値の提供」そして「海外への展開」となります。
この課題に対してサントリーは積極的に取り組んでいるといえます。
国内での【新商品の確立】においては、「ジムビール」のように「本格的な味を家庭で」をテーマとした商品が増えることで需要が拡大したことや、透明なノンアルコールビールテイスト飲料「オールフリー オールタイム」を発売したことも注目を集めました。透明かつ初のペットボトル容器での発売によって、オフィスでの業務中やランチなど、昼間の飲用市場を開拓する可能性を見出しています。
また、【海外への展開】についても、ヨーロッパに加え、ベトナムやオセアニアなどへも展開したことで、成熟したと思われていた清涼飲料水やコーヒーなどのジャンルで大きく成長しました。
◯なぜキリンではなくサントリーなのか
サントリーの競合他社は
飲料部門:「コカ・コーラ」「アサヒ飲料」「伊藤園」「キリンビバレッジ」など、
ビール・お酒部門:「アサヒHD」「サッポロHD」「キリンHD」など
になります。今後の展開の方向性を調べて、どの部分に共感するのかを自分なりに伝えられるようにしましょう。
◯なぜ飲料メーカーなのか
ESなどを見ていると、「商品を通して幸せを与えたい」といった主旨の文章を書く人がいますが、
そうした概念的な志望であると、どの業界でもできることでは?と突っ込まれてしまいます。
自分なりのエピソードがあるのならば、それを正直に書くべきです。
◯集団の中でどのような役割を担ってきたか
みなさんの身近な商品だからこそ身近な企業ですが、サントリー自体はグローバル企業になろうとしています。この競争が激しいこの業界だからこそ、プロジェクトや事業をリードしていく人間が求められていると考えた方がよいです。「やってみなはれ」という言葉が採用ページに多用されていることからも、「挑戦」することに臆さない人物が求められそうです。
冒頭に述べたようにサントリーは毎年人気の企業でかなりの倍率となります。しっかりと企業研究、OBOG訪問を重ね、試験に挑みましょう。そして何よりサントリーに入って、何を成し遂げたいのか、見つけることが大事です。
引用ページ
https://www.suntory.co.jp/company/philosophy/
https://www.suntory.co.jp/company/financial/securities.html
https://www.suntory.co.jp/recruit/fresh/