日本とはユーラシア大陸を挟んで反対側に位置するトルコ。トルコの人口最大の街イスタンブールは、ボスポラス海峡を挟んでアジアとヨーロッパの両方を擁しています。ボスポラス海峡には3つ橋がありますが、真ん中の橋は日本の建設会社が架けたものです。また、アジアとヨーロッパをつなぐ海底トンネルを掘ったのも日本の建設会社でした。2つの大陸をつなぎ、暮らす人々に多大の貢献をする、何世紀も残っていく仕事、建設会社の仕事にはロマンがあります。とは言え、もちろん橋ばかりでなくビル、道路などを作るのも建設会社の仕事です。就職先として考える場合、建設会社はどういった業界でしょうか、どんな企業があるのか、志望動機はどのような点に気を付けた書いたら良いでしょうか。
(※こちらの記事は、2016年4月12日に公開したものを更新しています。)
大きなくくりで建設業界というと、公共工事や土木工事などを含む建設業、住宅建設を行う住宅建設業、不動産開発及び売買・賃貸業務を行う不動産業からなる業界を指します。建設業界の大手企業はすべての業態をおこなっていることもあります。今回は、公共工事や木工事などを行う建設業を中心に考えてみたいと思います。空港や港湾、ダム、橋、道路といった公共事業や、ショッピングモールやプラントなどの商工業施設等を主に請け負っている企業です。
国土交通省の資料によると、建設業許可業者の数は日本全国で50万近くあります。2017年には、464,889社でした。2割ほどが個人業者で、ほとんどが地元で営業している建築業者になります。全国展開をしているゼネコンは50社ほど、その頂点に立つのが、スーパーゼネコンと呼ばれる建設大手5社です。「大林組」「大成建設」「鹿島建設」「清水建設」「竹中工務店」の5社です。
アベノミクスによる公共事業の発注増、2020年に東京で開催予定の世界的なスポーツ祭典を受けて、建設業界は好況に沸いていると言われています。大会開催のために、鉄道網や道路網といったインフラの整備が進むと思われ、試算ですが、建設業界には4,745億円の経済波及効果が見込まれています。そのため、最近の建設業界では人手不足が深刻になっています。この問題を打開するために取り組まれているのが、新たな建築資材の開発です。約50年前にもタイトな工期を技術革新で乗り切ったという建設業界。ユニットバスは、当時開発されて主流になった技術だそうです。タイルを張りバスタブを据えてといった作業工程を根底から覆す画期的なイノベーションでした。そういった技術革新が今また必要になっています。
最近は、海外展開も盛んになっています。2017年には1,958件、1兆8,510億円の海外受注の実績をあげています。大手ゼネコンや海外受注が盛んな企業は、現地法人を世界各地に設け、各国で公共事業にも参加しています。受注先としては、アジア地区が7割を超えていますが、北米・中南米でも受注数が増えています。
建設業全体として取り組んでいる課題の一つが環境への取り組みです。業界団体が自主行動計画を策定し、「開発時の生物多様性の保全」「建設施工段階におけるCO2排出量の削減」「建設副産物(建設時に発生する土や木材、汚泥など)の再利用や適正処理」といったテーマで環境活動に取り組んでいます。
建設業界の頂点にあるのは、一兆円を超える売り上げ規模を持つスーパーゼネコン5社です。国内海外を問わず、土木・建設すべての業務を行うメガ企業です。各社の特徴を見てみましょう。売上高と経常利益は2017年3月の実績です。
■大林組:売上高1兆9,006億円・経常利益1,439億円
1892年創業、札幌から福岡まで日本全国に支店・営業所を構えているほか、ロンドンやサンフランシスコ、台北など海外にも多くの拠点を持っています。大阪城の改修、六本木ヒルズや東京スカイツリーなどシンボル的な建物を数多く手掛けています。キャッチフレーズは、「時をつくる こころで創る」。技術開発に力を入れており、開発力は国内トップクラスといわれています。
■大成建設(連結):売上高1兆5,854億円・経常利益1818億円
1873年創業、日本だけでなく世界各国で国家的プロジェクトやランドマークの建設をおこなっており、キャッチフレーズである「地図に残る仕事」を現実化しています。トルコのアジアとヨーロッパをつなぐトンネルも大成建設が施工しました。国内でも横浜ベイブリッジ、東京都庁第一庁舎、九州国立博物館など、数多くの有名な建物を作っています。
■鹿島建設(連結):売上高1兆8,306億円・経常利益1797億円
1840年創業、超高層ビルの先駆けとなった霞が関ビルをはじめ多くの超高層ビル建築を手掛けています。最高裁判所や東京駅丸の内駅舎の保存・復元といった歴史的構造物の保全にも力を入れています。ユニークなデザインのフジテレビ本社ビルや国立新美術館も鹿島建設によるものです。
■清水建設(連結):売上高1兆5,194億円・経常利益1241億円
創業1804年、キャッチフレーズは「子供たちに誇れるしごとを」で長いスパンをイメージした企業活動がうかがえます。医療機関の建築に強みを持っていると言われますが、横浜スタジアムや伊丹空港なども建設しています。
■竹中工務店(連結):売上高1兆2,959億円・経常利益1153億円
創業1610年、400年以上の歴史を持つ会社です。スーパーゼネコンの中で唯一上場をしていません、また、大阪に本社を置いているのも竹中工務店だけです。プロ野球チームが活躍する5つのドームをはじめ、数多くの大型ビルや工場を手掛けています。
建設業界は世界的スポーツの祭典やリニア新幹線などの特需で活況となっており、人材不足となっています。技術や経験を持つ人材が求められているため、大手各社は新卒採用を増やしています。就職を志望する方々にとって追い風の状況ですが、やはり、だれでも採るというわけではありません。建築関係でとれる資格があるなら取っておきましょう、資格や免許があるならかなり有利になります。志望動機には、自分の経験やスキルをどのように会社で活かしたいのか、どのように貢献できるのかを具体的にまとめるようにしましょう。そのためには、企業に関する情報をしっかり集めるようにしましょう。OB訪問、会社説明会に参加したり、会社案内をしっかり読み込むといったことも必要です。
これは、大成建設の内定をとった先輩の志望動機です。参考にしてみてください。
「社会基盤を支えるような大きいものに携わりたい、モノづくりをしたいと考えていましたが、ただ一つとして同じものが無い「場所」を作ることに魅力を感じ建設業界を志望しました。誰かをワクワクさせたりホッとさせたりすることの出来るお気に入りの場所や誰かにとってなくてはならない場所を作る仕事に自分も関わりたいと思います。多くのゼネコン各社の中でなぜ御社かというと、OB訪問をした際に、ジョブローテーションが他社より充実していて自由な社風が良いと伺い、働きやすそうだと思ったからです。また、スーパーゼネコンで唯一創業家経営でなく、社員の会社だということで、そんな御社であれば、将来経営陣となる道筋も開かれていて責任ある仕事ができると思いました。」
参考URL
OCAJI https://www.ocaji.or.jp/overseas_contract/