今年10月期にドラマ続編放送が決まった『下町ロケット』。
原作を読んだことがある方や、2015年のドラマ放送をご覧になった方は、ガウディ篇で命を守る人工弁の開発の様子にドキドキしたのではないでしょうか。医療を支える器具は数多く、多岐に渡っていますが、どれもが、厳しい開発競争の中でさらに良いものになっていき、新たな医療の需要に応えているので、命が救われているのだと再認識させてくれるドラマでした。
医療機器は日常生活で触れる機会こそ無いものの、最近ではドラマ作品などで目にする機会も多いかもしれません。人の命に係わる、とても大事な仕事である医療機器メーカーでの仕事はとてもやりがいがある仕事です。志望先としての医療機器メーカーについて、また、志望動機について考えてみましょう。
(※こちらの記事は、2016年4月7日に公開したものを更新しています。)
医療機器メーカーと一口に言いますが、扱い品目は多岐に渡っています。医療施設で使われるMRやCTといった大型の画像診断装置もあれば、手術で使われるメスやガーゼ、縫合糸といった消耗品まで含まれ、その数は60万点にも及ぶと言われています。そのため、ほとんどの医療機器メーカーは、得意分野を持っており、その分野の事業に絞り込んだ製品を生産していることが多いのです。
また、医療機器メーカーのシェアを考える際には、グローバルな視点で考える必要があります。というのも、世界の医療機器市場に占める日本の割合は1割ほどで、世界シェアトップのジョンソン・アンド・ジョンソンが一社で日本市場規模全体を上回る売上高があるくらい、欧米メーカーが強いからです。就職先を考える際には、外資も選択肢の一つとして押さえておく必要があります。
日本のメーカーは特定分野に強く、例えばオリンパスは内視鏡では世界シェアでトップになっています。また、最先端技術を使った、その企業にしかできない開発商品を持っている企業もあります。例えば、クリノ株式会社は、東北大学発のベンチャー企業で、東北大学が文部科学省のスーパーCOEプログラムのひとつとして2003年から取り組んでいた「先進医工学研究機構(TUBERO)」で行った研究の中から優れた4つの研究成果を事業化したものです。就職先を考える際に、特に興味のある分野があるならば、その分野を得意としているベンチャー企業も視野に入れておくといいかもしれません。
医療機器を販売する際には、幅広い製品をもっていた方が、コスト等の面でもトータルで提供できるので有利になります。そのため、提携・買収によって製品展開の拡充を図る動きがあります。この動きは、グローバルにかつ、異業種間でも行われています。例を挙げると、東芝メディカルシステムズは、病院向けシステム分野でアメリカのマイクロソフトと業務提携をしています。日立メディコは、遠隔画像診断サービスで日本のドクターネットと提携しました。富士フイルムは、アメリカのソノサイトを買収し超音波診断装置の分野に参入しました。オリンパスはソニーと合弁でソニー・オリンパスメディカルソリューションズを新たに発足させました。両社の得意を活かして4K外科手術用内視鏡システムを製品化し、話題になっています。
こういった形で、異業種の参入が盛んになっているのは医療機器業界の特徴の一つです。ニーズが途絶えない、という点で医療機器は安定した成長が見込まれるため、特に電子部品・機械部品のメーカーを中心に新規参入が活発になっています。三菱重工業は放射線治療装置を、パイオニアは内視鏡カメラを、村田製作所は医療機器用小型ポンプを、デンソーは医療機器用センサーを製造しています。住友ゴム工業も、特殊注射用ガスケットを2013年から生産し始め医療機器業界に参入しました。旭化成も、アメリカの医療機器大手メーカーゾール・メディカルを買収し医療分野での活動を始めています。医療機器の開発志望で就職活動をされているなら、医療機器メーカーにこだわらず、医療機器に参入している、またはこれから参入する予定のメーカーも含めて考えられることをお勧めします。
医療機器の品目が60万を超えるため、当然ながら数多くの医療機器メーカーがあります。その中から、日本の医療機器メーカーのトップ3社をご紹介します。日本の医療機器業界では、この上位3社で6割近くのシェアを占めています。各社の売上高、経常利益ともに2017年度の実績です。
■オリンパス(医療事業):売上高6163億円
オリンパスは胃や大腸の検査・治療・手術にも使われる内視鏡分野で世界トップの企業です。先端湾曲機能を搭載した3Dビデオスコープのように世界初の商品も数多く販売しており、内視鏡分野では世界のリーディングカンパニーとなっています。上述したソニー・オリンパスメディカルソリューションズの4K外科手術用内視鏡システムの販売も、オリンパスの販売網を通して行われています。
■テルモ:売上高5878億円、経常利益1086億円
人工肺装置といった医療機器だけでなく、カテーテル、尿検査試験紙といった医療器具・用具、体温計や血圧計といった家庭でも使える医療器具と幅広い製品を展開しているメーカーです。国内だけでなく、160か国を超える国々に進出しています。各国の学会で自社製品の使い方に関する講演や実演を行い、普及に努めています。
■ニプロ:売上高3001億円、経常利益365億円
人工腎臓透析の開発・製造に30年以上関わっており、人工腎臓と透析器の分野に強いメーカーです。医療機器だけでなく、医薬品の受託製造も行っています。最近は、新興国への進出に力を入れており、ミャンマーに現地法人を設立しています。
医療機器業界は、今後も成長が見込まれています。国内では、高齢化が進むにつれて、医療機器への需要は高まりますし、新興国での医療水準が向上するにつれて海外需要も高まっていくと思われるからです。その中で、医療機器メーカーは、技術開発が日進月歩で進む業界ですから、新しい知識を取り入れることに意欲のある方に向いているといえます。志望動機を書く際には、業界の特徴を押さえた上で、志望企業で自分が貢献できると思われる経験やスキルをまとめるようにしましょう。
大手メーカーへの志望動機の例を挙げておきます、参考にしてみてください。
■オリンパス
「医療機器開発において世界に誇る高い技術力を持つ企業で働き、新しい技術を創り出したいという思いで御社を志望しています。私の父は医者で、小さい頃から医療という分野に親近感をもっており、「ものづくり」を通して医療に、そして社会に貢献したいと思っていました。御社は、世界を先駆ける高い技術力をもっておられますから、新しいものを創りだすことを楽しみながら、技術者として刺激のある日々を過ごせるのではないかと思います。」
■テルモ
「御社の「医療を通じて社会に貢献する」という理念に共感しました。私は文系ですが、御社であれば営業職として医療現場の方々と共同で新たな製品を生み出す活動に携われるという点に惹かれました。海外での売上比率も高く、世界中で医療分野で社会貢献をされている御社で、私も新たな医療事業を展開する戦力になりたいと思います。」
■ニプロ
「私は医療を通じてたくさんの人の支えになりたいと思いこの業界を志望いたしました。医療従事者でなくても、御社でなら医療機器・製薬・再生医療の多様な面から幅広く医療に関わることができます。また、少子高齢化が進む中、さらに必要となる商品を扱われている点にも惹かれました。」