自動車販売台数で世界トップクラスのトヨタ自動車をはじめ、日本が世界に誇る自動車産業。就職先としても人気の業界です。それだけに、志望動機をどのように書くのが悩んでしまいそうです。自動車業界の志望動機はどのように書いたら良いのか、自動車メーカーに内定した先輩方の志望動機も含めてご紹介します。
(※こちらの記事は、2016年4月5日に公開したものを更新しています。)
自動車業界の志望動機を書く際には、今後の展望を含めた業界研究を自分なりにしっかりとしましょう。自分の経験や特質を交えながら、その企業で働きたい理由、そこでなければいけない理由を明確に伝える必要があります。その企業で自分がどのように働きたいのかというビジョンを描くためには、その企業や業界が今後どのようになっていくのかというのを、自分なりに整理しておく必要があります。
自動車業界と一口に言いますが、基幹となる自動車メーカーに始まって、部品メーカーや販社、中古車販売業者など、多くの業界を含んでいます。また、自動車業界は、日本市場のみではなく、世界市場で展開しているため、国内メーカーだけがライバルではありませんし、世界情勢の影響も受けやすい業界です。自動車業界を志望する際に、押さえておきたい項目をいくつか考えてみましょう。
・為替市場の動向
海外市場の比率が高い自動車業界は、円安の方が利益率が高くなります。為替市場の動向は、ダイレクトに売り上げ実績に関わってきます。
・環境問題
CO2排出量基準の世界スタンダードが決められたりと、環境問題は自動車産業に直接かかわってきます。トヨタは、CO2排出量がゼロの水素燃料電池車「MIRAI」を販売していますが、まだ生産量が少ないために、更なる開発が望まれています。ホンダも、新型燃料電池自動車を開発しており、各社の新型自動車開発も、企業研究の際に押さえておくと良い項目です。
・世界情勢
海外市場は広いですが、戦乱や経済動向の変化による影響を受けざるを得ません。生産拠点としている国に騒乱が起きた場合には、供給面でも問題が出てきます。とはいえ、生産拠点の海外移転は、さらに進んでいくと予測されています。市場としては、最大の市場である中国から、南米・東南アジアの新興諸国へのシフトが加速していきそうです。
・業界の再編
自動車産業でも、業界再編が進んでいます。トヨタ自動車は、ダイハツ工業や日野自動車を子会社化し、いすゞ自動車やマツダ・スズキとも業務提携を行っています。今後どのように動いていくのかは、就職先企業を選ぶ際に直接の影響がありますから、必ず押さえておきたい項目です。
部品メーカーに関していえば、生産の効率化とコスト削減のために車種を超えた部品設計の共通化が進むと考えられています。海外メーカーとの競争力を高めるために、国内自動車メーカーは、共同でエンジンの基礎研究を行うといった取り組みも始めています。
・自動車業界のトレンド
世界の自動車業界で、今後10年間の主なトレンドは、デジタル化やインターネット化を含む「コネクティッドカー技術」「ハイブリッド電気自動車」「バッテリー式電気自動車」といわれています。自動運転車も、今後10年の間に実用化するという計画が出されていますが、新たな技術開発がどの方向に行くのか、興味深いです。
自動車メーカー各社は、エンジン開発の基礎研究といった分野で協同する一方、それぞれに特徴のある企業運営を行っています。企業理念もそれぞれ異なり、社風も異なっています。企業研究をきちんと行って、志望動機を書くようにしましょう。
代表的な自動車メーカーから内定をもらった先輩方の志望動機例をご紹介しますので、参考にしてみてください。
・トヨタ自動車(2017年度連結売上高29兆3,795億円、販売台数1,044万1,000台)
世界一の販売台数を誇るNo1企業です。ダイハツや日野自動車を傘下に置き、圧倒的なシェアを誇ります。豊富な経営資源(ヒト・モノ・カネ・ノウハウ)を持っており、オール・セグメントの自動車を製造することができ、全方位のフル・ライン構成という強みを持っています。企業理念として、「クリーン」「安全」を通して社会に貢献することを掲げています。ビジネスモデルの改善に取り組み続けており、ハーバードビジネススクールの教材としても扱われるなど、ビジネスの仕組み自体も世界の注目を集めています。
「いいクルマをつくろうというトヨタのクルマづくりの理念に共感し、御社であれば、壊れない信頼される自動車を作れると思い志望しました。昨年、御社のインターンに参加させていただき様々な社員の方のお話や考えを伺うことができたのですが、もっと高品質な自動車を多くの人に提供したい、という意識が徹底されていたことがとても印象的でした。私は、学生フォーミュラに参加した経験から、壊れない、誰からも信頼される自動車を実現したいと考えるようになりました。そのためには、関わる人みんなが妥協せずによりよいものをつくるという意識を持つことが必須だと思います。高品質なものづくりに定評があり、モノづくりのシステムにこだわられ、もっといいクルマを作ろうという意識が徹底されている御社であれば実現できると思い志望しました。」
・日産自動車(2017年度連結売上高12兆円、販売台数577万台)
日産自動車は、世界的にはルノーと提携し、日産・ルノーとして展開しています。外資系の自由な雰囲気があり、他社に比べて女性の活躍が目立つ会社でもあります。
「私の夢は自動運転により年齢や身体的な問題など関係なく、安全に目的地まで人を運ぶことができる自動車を作ることです。私は幼少時から自動車が好きで、ミニカーを集め、自動車の絵を描いていました。自動車は非常に便利で、身近に存在する最も自由度の高いモビリティですが、乗れないと、移動範囲が制限されてしまいます。自動運転技術は自動車の便利さ、楽しみをより多くの人に届けることができる技術であると思います。御社は、自律移動の手法に独自の技術をお持ちです。その点で、私の研究と近いものを感じ、御社を志望いたしました。」
・ホンダ(2017年度売上高15兆3,611億円、販売台数519万台)
自動車だけでなく、オートバイや汎用製品も作っており、これらに関しては、世界NO1シェアを誇るメーカーです。ロボットや小型ジェット機の開発なども行っています。創業時から自前主義で人を育て技術開発を進めるという社風があり、技術力は世界的に高い評価を得ています。
「私の夢は、世界中の人に車に乗る楽しさを伝えることです。私はバイクを持っていますが、バイクに乗り、アクセルを回したときに感じるバイクとの一体感やエンジン鼓動、道を走ることの楽しさから、通学路がとても楽しい時間に変わりました。乗り物は単なる移動手段ではなく、乗った人を楽しませ心を豊かにするものだと感じました。学んだ知識を活かし、自分が感じたこの楽しさを作る側として多くの人に感じてもらえる仕事がしたいと考えるようになりました。近年、自動車では燃費が最も重要とされ、各社が燃費性能を競い合うなか、御社は燃費だけでなく、乗る楽しさを大切にされていると感じたからです。例えばCR-Zは、ハイブリットでありながら、楽しい走りを追求した車だと思います。OBの方とお話した時にも、ホンダらしい車とは何かとお聞きしたところ、環境に優しい燃費の良い車であっても車の本質である走る楽しさが感じられる車だとおっしゃいました。私も、乗る人に楽しんでもらえる車作りをしたいと考え御社を志望しました。」
・三菱自動車(2017年度売上高2兆1,923億円、販売台数121万台)
2013年以降右肩上がりに売り上げを伸ばしており、続いたリコールの影響を脱し、今後の展開が楽しみな企業です。自動車業界で初めて電気自動車の開発を行うなど、技術開発にも力を入れています。
「私は、モノの価値が移動によって生まれてくるところに興味があり、輸送機器を中心に就職活動を行っております。その中で自動車業界を志望する理由は二つあります。一つ目は、自動車は最も身近にある輸送機器で、日常生活と密接しているところです。二つ目は、私の父は、自動車部品の小売店を経営しており、幼い頃から身近にあった自動車に愛着を持っているからです。特に御社の電動自動車を世界で初めて量産するというチャレンジングな姿勢と環境に優しいクルマを作るという高度な社会貢献精神に共感し、志望いたしました。」