「インバウンド」
この言葉を、あなたはこの一年で何度耳にしましたか?
「インバウンド」とは、外国人旅行者を自国へ誘致すること。一般的には“訪日外国人旅行”のことを指し、最近メディアでも盛んに取り上げられていますよね。去年(2015年)は過去最高の1,973万7千人の外国人が日本に訪れ、45年ぶりに訪日外客数と出国日本人数が逆転したと話題になりました(*1)。
実際、都市や観光地などを歩いていると、外国人から道を聞かれるという方も多いのではないでしょうか。しかし、儲かる企業が増えている一方、外国人向けのサービスや人材確保が追いつかないなど、新たな課題も出てきています。
そこで就活生の皆さんに意識してほしいのが、変化していく業界の中で「私ができることはなんだろう?」と考えるということ。
今、政府は2020(平成32)年の新たな目標を4,000万人台に引き上げる方向で動いているとも言われています(*2)。その年には東京で国際的なスポーツの祭典が控えており、今後ますます世界から注目が集まることでしょう。また、最近は増えてきたとはいえ、外国人観光客が世界第一位のフランスと比較すればまだ1/4にも満たない(2014年時点 *3)のですから、安全なイメージのある日本は、これからも伸びていく可能性が十分にあるはずです。
このように期待感が高まる中、今まさに旅行業界をはじめとした各業界・企業が「インバウンドビジネスに強い社員を一から育てたい」と、若い人材に期待を寄せています。このタイミングで新卒入社することは、これからキャリアを積むための第一歩として、大きなチャンスであることに間違いありません。
そこでJOBRASS編集部では、「インバウンドビジネス」に焦点を当て、以下のポイントについて調べてみました。
【1】 インバウンドの現状――注目度が高まる「ニューツーリズム」とは
【2】 旅行業界の新たな課題
【3】 新卒に期待されていること
皆さんもこの記事を元にじっくりと業界研究に取り組み、ぜひ他の人にはない自分だけの志望動機を考えてみてください。もちろん、インバウンドは「旅行業界」に限らず、「観光」「飲食」「宿泊」など、様々な業界にも影響していることですので、少しでも興味のある方はぜひ参考にしてくださいね。
インバウンドビジネスはマーケットの変化が急速です。ですから、これから積極的に関わっていくならば、各業界の基礎知識はもちろん、常に最新の情報を収集していくことが重要です。まずは現在(2016年3月時点)注目が集まっている「ニューツーリズム」について知っておきましょう。
「ニューツーリズム」とは、独自性をもつ地域に訪れ「体験」「学習」「交流」などを楽しむ新しいタイプの旅行のこと。従来型の旅行会社の商品は、いわゆる観光地をめぐるものばかりでしたが、最近はもともと観光地でなかった地域で、テーマやストーリーを重視しながら旅行する人が増えてきました。
そのため、現在は東京や京都などの有名な都市だけでなく、地方にまで足を延ばすのがブームになっています。例えば、以下のようなものです。
『エコツーリズム』
観光旅行者が、自然観光資源について知識をもつ人から案内または助言を受け、自然観光資源の保護に配慮しつつ、楽しみながら知識や理解を深める活動。
(例:富士山登山学校、屋久島の原生的な森林をめぐるツアーなど)
『グリーン・ツーリズム』
農山漁村地域で自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動
(例:農作業体験、農産物加工体験、農林漁家民泊、食育など)。
『ヘルスツーリズム』
自然豊かな地域を訪れ、そこにある自然、温泉や身体に優しい料理を味わい、心身ともに癒され、健康を回復・増進・保持する新しい観光形態。
(例:熊野古道ウォーキング、薬膳ツアーなど)
『スポーツツーリズム』
スポーツを「観る」「する」ための旅行に加え、スポーツを「支える」人々との交流や、旅行者が旅先で多様なスポーツを体験できる環境の整備も含むもの。
(例:瀬戸内しまなみ海道の国際サイクリング大会など)
この他にも
「人気の漫画の舞台となった道を見に行きたい」
「鶴の折り紙の折り方を学びたい」
「雪の中、温泉に浸かるサルを見に行きたい」
「日本のギャルメイクを学びたい」
「流しそうめんを体験してみたい」
……など、様々なニーズがあります。
これからの旅行業界は、リピーターの外国人でも「行ってみたい!」と思わせるユニークな企画が求められています。しかし、旅行会社が仕入れから販売まで行うには幅が広すぎて細部まで行き届かず、従来のようなやり方が難しくなってきています。
そこで近年は、地域を良く知る地元の人たちに観光資源を発掘してもらえるよう働きかけつつ、これまで培ってきた販売力を活かす方向にシフトしていっています。しかし、こうした地域主導の商品開発をしていく場合、「お客さまと地域の中間に立ち、どのように存在価値を見せていけるのか」が、今後の新たな課題となってゆくでしょう。
また、最近の旅行者は、旅行会社のパッケージツアーなどを使わず、「ブッキング・ドットコム」(*4)「エアビーアンドビー」(*5)などの多言語に対応したネット予約サービスを利用して、宿泊先を決める人が増えています。また、飲食は「オープンテーブル」(*6)を利用すれば人気のレストランが予約できますし、「キッチハイク」(*7)で現地の一般人から家庭料理を教わって楽しむ人も少なくありません。観光も「ボヤジン」(*8)で探せば、ユニークな現地のツアーが簡単に見つかります。
このような中、旅行業界も従来の方法だけにとらわれず、「新しいビジネスモデルを生み出す」ことも模索していく必要があるでしょう。もちろん、大手企業では“企業招待”や“国際会議”などインバウンドによる大口取引があるところもありますが、その他に各社でどのような企業努力が行われているのかポイントを絞って調べてみるのもオススメです。
また、最近は「フリープラス」(*9)などインバウンドに特化した旅行会社も出てきています。あなたがもし、アウトバウンドよりもインバウンドに興味のあるのなら、そういった企業にも注目して調べてみると良いでしょう。
もちろん、これまでのようにアウトバウンド(日本人の海外旅行)の需要もなくなることはありません。しかし、冒頭でもお話したように、45年ぶりに訪日外客数と出国日本人数が逆転しています。
そして、この急速な変化によって旅行業界がいま抱えているのは「人材」に関する問題です。インバウンドビジネスは最近になって急成長してきた分野ですので、まだ現場で経験を積んでいる人が少なく、サービスが追いついていないのです。
そのような課題を抱えている企業にとって、新卒採用は状況を変えていくチャンスとなります。ここで意欲のある若手をインバウントに強い人材に育てられれば、今よりずっと充実したサービスが提供できるようになり、売上アップにもつながりますよね。つまり、あなたがここでチャンスをつかめば、近い将来、業界をリードするような存在になれるかもしれません。
もちろん、そのためには語学力が不可欠ですが、すぐにこれを習得しようと思っても時間がかかります。ですから今は、語学力は入社後も学び続けるものと割り切り、若手ならではの強みに目を向けてみましょう。
例えば、入社した企業で先輩方も経験したことのないような「インバウンドに関する新たな問題」が浮上したとしますよね。そんなとき、若さならではの柔軟な発想力を活かし、誰よりも足を使って解決策を提案する姿勢は大切です。多くの旅行会社は、変化の状況が激しい中で、機転をきかせて自ら積極的に動いていくような人材を求めているのです。
もちろん、旅行業界はハードだと言われていますから、はじめは窓口でのクレーム対応や、地道なティッシュ配りなどの業務もあるでしょう。企画をしたいと入社する新卒社員は多いので、なかなか希望の部署に配属されないというのもよく聞く話です。しかし、どんな仕事でも大切なのは「お客さまに喜んでもらいたい」という意識。どうしたらそれが実現できるのか、常に考え行動していれば、きっとチャンスが巡ってくるはずです。
「インバウンド」に注目してお話してきましたが、いかがでしたか?
今回は記事の都合上、大まかなアウトラインのみとなりましたが、興味を持った方はぜひ「インバウンド」をキーワードに、もっと踏み込んで調べてみることをオススメします。特に2015~16年のニュースは目をとおしておきましょう。気になるポイントを一つひとつ紐解きながら業界研究を進めていくうちに、具体的な「志望動機」や「自分ならではの視点」が見えてくるはずです。
そしてもし、旅行業界を志望する理由が「外国と日本の架け橋になりたい」「語学力を生かしたい」という方は、旅行業界だけに絞らず、インバウンド増加で影響を受けそうな他業界にも目を向けてみるのも一つの手です。いずれにしても、様々な可能性が広がっている分野ですので、ここでしっかりと自分のキャリアビジョンを考えながら、就職活動を進めていってくださいね。
【参考サイト】
*1
日本政府観光局(JNTO) 2016年1月19日 報道発表資料
https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/20160119_1.pdf
*2
産経ニュース 2016年3月8日
「目標数倍増! 2020年来日外国人観光客数「4千万人台」に設定へ」
https://www.sankei.com/politics/news/160308/plt1603080003-n1.html
*3
日本旅行業協会 各国の外国人旅行者受入数(2014年)上位40位
https://www.jata-net.or.jp/data/stats/2015bis/11.html
*4
ブッキング・ドットコム Booking.com
https://www.booking.com/country/jp.ja.html
*5
エアビーアンドビー Airbnb
https://www.airbnb.jp/
*6
オープンテーブル OpenTable
https://www.opentable.jp/start/home
*7
キッチハイク KitchHike
https://ja.kitchhike.com/
*8
ボヤジン Voyagin
https://www.govoyagin.com/?lang=ja
*9
フリープラス FREEPLUS
https://www.freeplus.co.jp/