減少傾向がプラスに転じ、攻めの時代を迎えている百貨店業界。積極的に新卒採用を行っている業界のひとつです。志望動機を書く際に業界研究・企業研究は必須! 百貨店の志望動機を書く際に押さえておくべき業界の動向、企業の特徴といった考えるべきポイントを見てみましょう。
(※こちらの記事は、2016年3月22日に公開したものを更新しています。)
百貨店業界の規模は、7兆7511億円(2017年度)。2014年には増税前の需要増や外国人観光客の爆買いの影響を受け売上高もピークを迎えたものの、2016・2017年と落ち着きを見せている状況です。
・業界再編の動き
2007年頃より業界再編が進みました。2007年にまず、松坂屋ホールディングスと大丸が統合し、業界2位のJ.フロント リテイリングになりました。同年、阪神百貨店と阪急百貨店が統合しエイチ・ツー・オーリテイリングに、翌年には三越と伊勢丹が統合して最大手の三越伊勢丹ホールディングスが誕生しました。業界5位にあたるのは、セブン&アイ・ホールディングスの傘下にある百貨店グループで、そごうと西武デパートが中心になっています。
東京・銀座では、2017年にプランタン銀座がマロニエゲートと名称統一や、GINZA SIXの登場など百貨店業界に大きく影響を及ぼすニュースが続きました。
・スクラップ&ビルト
各グループ内でも再編が進められました。各社不採算店の閉鎖を進めており、2010年には四条河原町阪急と西武有楽町店が閉店、12年にはそごう八王子店も閉店しました。一方で、集客が見込まれる都市の中心部では、増床・開店の動きが活発になっています。この5年ほどの間に、大阪の梅田地区では、まず大丸梅田店が従来比1.6倍に増床しました。さらに、阪急うめだ本店は7年かけて従来比1.4倍に増床しリニューアルオープンしました。2012年には、60階建ての超高層ビルあべのハルカスに、あべのハルカス近鉄店が開店しました。博多でも2011年に、博多阪急がJR博多シティ内に開店しました。
海外展開に関しても同様に、非採算点の閉鎖、採算地域へのテコ入れが行われています。高島屋は、大型店であるシンガポール店に力を入れ、三越も台湾で現地の企業と「新光三越百貨店」を展開しています。
・2020年を見据えたインバウンド需要
百貨店業界は市場縮小が長く続いていましたが、アベノミクスの影響や、外国人観光客による「爆買い」の恩恵も受け、2013年以降は上向き傾向になっています。業界のキーワードも、外国人客への対応を表す「インバウンド観光」がポイントになってきています。外国人客に対応できる、言語を話せる要員の補強も進んでいます。
志望動機には、その企業を選んだ理由が必要になります。そのためには、志望する百貨店の特徴、独自の取り組みといったことを押さえておきましょう。各社それぞれ、どういった取り組みを行っているでしょうか。
・企業理念
百貨店や百貨店グループそれぞれには企業理念があります。発表されている企業理念を確認してみましょう。それから、お店に行ってみて、その企業理念がお店にどのように反映されているかを考えてみましょう。自分なりの志望動機を書くことができるのではないでしょうか。OB訪問や会社説明会も、企業理念が一貫しているかどうかを判断するチャンスです。
・独自の売り場つくり
百貨店というと、割とどこに行ってもそれほど違和感なく見て回れる感じがありましたが、ターゲットを特化して便利さを追求した売り場づくりを行う百貨店が増えてきています。博多阪急は、20代女性を対象にショッピングだけでなく、ヘアアレンジやメイクといったサービスも受けられる「ハカタシスターズ」という売り場を展開しています。志望する百貨店に行って、どういった売り場づくりをしているのかは、必ず確認するようにしましょう。
・店舗別のバイイングや採用
そごう・西武は、婦人服部門に店舗バイヤーを置いており、現場主導のバイイングを行っています。博多大丸では、グループ採用とは異なり、独自の新卒採用も行っています。転勤を希望しない方は、店舗別の採用があるかどうかも確認してみるといいかもしれません。
・体験型イベントの強化
商品を売るだけでなく、イベントやサービスに力を入れる百貨店が増えています。松坂屋名古屋店では、中日ドラゴンズの始球式に参加権を入れた福袋を発売するなど、地域に密着したサービスを行っています。大丸大阪店には開店時にポケモンセンターを誘致し、家族連れや若者の集客に成功しました。志望する百貨店がどういったイベントを行っているかも、確認してみてください。
百貨店は、お店を見て歩くことも企業研究になります。業界研究、企業研究をした上で、志望動機を書きましょう。志望企業の特徴を押さえて、自分の経験を絡めながら志望動機を考えてください。百貨店別に志望動機例を挙げてみます、参考にしてください。
・そごう・西武
「私は、高校時代から続けているアルバイトで接客の楽しさ、奥深さを学び、それを仕事にしたいと思いました。特にファッションに興味があり、それに携わることができる百貨店で働きたいと思いました。御社では、店舗別のバイイングをされていると会社説明会で伺いました。地域のお客様を大事にされているお店で働きたいと思い、御社を志望しました。」
・高島屋
「地域都市論のゼミで、都市・地域に人が期待を持って訪れる心の拠り所が必要であると学びました。海外に行った時に、幼いころから慣れ親しんだ高島屋を見つけてホッとしました。百貨店は、その地域の「心の拠り所」になれる場所だと思います。百貨店独自のラグジュアリーな空間を維持しつつ新しい形態の店舗づくりを行って地域の活性化に貢献もできます。私は、大好きな高島屋を盛り上げたい、お客様にも私の感じる楽しみを提供したいと思い、御社を志望しました。」
「幅広い商品や人と関わることができ、活躍できるフィールドやキャリアが多様なので、ずっと興味をもちながら仕事ができると思い百貨店を志望しました。御社の、新しいことに挑戦しながらも、変えてはならないものは変えないという芯の通った高島屋ブランドを確立されている点に感銘を受けました。その社風や社員の皆さんの会社への愛情を感じ、自分もここで働きたいと思いました。」
・阪急・阪神
「就職活動をしていくなかで、ただ商品を売るのではなく、「ライフスタイル」や「空間」を提案するという百貨店の仕事に興味を持ちました。数ある百貨店のなかで、御社は地域に根付いていると感じる店舗が多く、そうしたところで仕事をすることは街づくりや地域の活性化に関わることにつながり、やりがいがあると思いました。」
「私は、目に見えるものを扱いたいと思い、様々な商品を扱う小売業を志望してきました。学生時代に、宝塚阪急の食品売り場でアルバイトをしていたので、最も身近に感じていたのが御社です。社員の方々の働き方を間近に見て、私もそのように働きたいと思うようになりました。」
・伊勢丹・三越
「御社のセミナー、OG訪問をする過程で、「仕事の成果が目の前のお客様を通してすぐに実感できる」仕事であると言われたのが心に響きました。仕事の成果が目の前のお客様を通してすぐに実感できる、自分の工夫や努力、そして熱意が認められる瞬間を確認できるということに魅力を感じました。逆に、認められない場合にもすぐにわかり、変えていくこともできます。そのスピード感、現実味のあるところで働くことで自分も成長することができ、やりがいを感じることもできると思いました。」