近年、大学職員になりたいと志望する人が増えているようです。就活生の皆さんも、普段から学生生活の様々な場面で、職員の方々にお世話になっていますよね。中には「自分も卒業したら大学で働きたい」と感じている人もいるのではないでしょうか。しかし、実際にどんな仕事をしていて、給与や採用倍率はどうなのか、まだまだ知らないことも多いかと思います。
そこで今回JOBRASS編集部では、大学職員という職業の実態に迫り、以下の5つの疑問を調査してみました。
1.「大学職員になるメリット・デメリットは?」
2.「どんな仕事があるの?」
3.「受かるためにはどうしたらいいの?」
4.「国立/私立大学の給与は?」
5.「大学職員の採用倍率は?」
皆さんのお役に立てそうな情報を、できるだけ多く集めてみましたので、大学職員の仕事が気になっている人は、ぜひ参考にしてくださいね。
大学職員になるメリットは、多くの民間企業と比べて残業が少なく、有給休暇がとりやすいところだと言われています。実際、大学職員の方に話を聞いてみると、家族と過ごしたり趣味を楽しんだりする時間の余裕があり、仕事とプライベートを両立しやすいとのことでした。
また、民間企業のように売上目標のノルマや競争がない分、プレッシャーは少ないという声もよく聞かれます。ただそういったメリットは、中途採用の人が前職と比較して実感することなので、新卒から入社した場合は気付きづらいかもしれません。
デメリットとしてたまに耳にするのは、売上目標など数字を掲げてチームワークで達成するといった機会がないため、「さびしい」「物足りない」という意見です。しかし、大学職員には学生生活をサポートするという使命があり、大きなやりがいや誇りを感じている人も多くいます。ですからそのような環境に不満を感じる人は、大学よりも民間企業に勤めるほうが向いているのかもしれません。
大学職員と言っても、その仕事は多岐に渡ります。
以下は、国立大学法人等の職員の業務一覧ですが、私立大学も似たような内容となります。
■事務
【総務・人事】
経営企画を担い、組織のマネージメントをする業務
1.教授会・評議会等会議、入学式、卒業式の運営
2.規則の制定、改廃
3.広報、情報公開関係
4.組織改変、大学評価に関すること
5.職員の採用、昇任、異動,給与、研修、福利厚生など
【財務・会計】
組織運営に必要な財務上の計画や管理をする業務
1.組織を運営するために必要な予算の要求及び執行
2.各種物品の契約・購入・管理
3.授業料や検定料、入学金等の収入金の出納 他
【学生支援】
学生の入学から卒業までを学業面・生活面から支える業務
1.大学入試センター試験や個別学力試験の実施
2.学籍管理、修学指導、試験や成績の処理
3.奨学金や授業料免除、学生の健康管理、生活指導
4.学生の就職関連 他
【研究推進】
学術研究の振興助成に関する業務
1.受託研究や民間との共同研究等の外部資金受入
2.知的財産の管理
3.寄附講座、寄附研究部門の設置・運営 他
【国際交流】
海外との学術交流、留学生交流を推進する業務
1.海外の大学、研究機関等との学術交流事業
2.外国人研究員等の受入、教職員の海外派遣
3.留学生の受入、学生の留学 他
【医療支援】
大学附属病院の医療や患者への支援、及び病院経営に関する業務
1.外来患者の受付、入退院の手続、医療情報の管理
2.診察、入院料金の計算および収納
3.地域連携医療、病院再開発計画の策定
4.経営にかかる情報の収集・分析 他
■図書
【図書】
教育・研究のための図書関係や学術情報資料に関する業務
1.図書の貸出、閲覧、複写、検索業務
2.図書・雑誌の購入、受入、分類、目録の作成 他
■電気、機械、土木、建築、化学、物理、電子・情報、資源工学、農学、林学、生物・生命科学
【施設系技術】
キャンパスを計画し、維持する業務
1.キャンパスマスタープラン将来構想の作成
2.新築、耐震改修等の計画、調査、設計、積算、検査
3.工事の発注、監督 他
【教育系技術】
教育・研究を技術面からサポートする業務
1.学生の実験・実習への技術支援や助言
2.研究・実験機器等の設計、開発、維持、管理 他
国立大学は平成16年4月から法人化し、文部科学省が設置する国の機関から「国立大学法人」という独立した機関となりました。そのため、国立大学の職員になるためには、国家公務員試験ではなく、「国立大学法人等職員採用試験」を受けることになっています。
選考の流れは、第一次試験を全国7つの地区(北海道、東北、関東甲信越、東海・北陸、近畿、中国・四国、九州)ごとに行い、第二次試験は各国立大学法人等により行います。
■関東甲信越地区(国立大学法人等職員採用Movie)
以下は、各地域の採用試験に関するページです。職員採用試験に関する様々な情報などを見ることができます。
■北海道地区 国立大学法人等職員採用試験
https://www.hokudai.ac.jp/jimuk/soumubu/jinjika/saiyo/01_info/01_index.html
■東北地区 国立大学法人等職員採用試験
https://www.bureau.tohoku.ac.jp/shiken/
■関東甲信越地区 国立大学法人等職員採用試験
https://ssj.adm.u-tokyo.ac.jp/
■東海・北陸地区 国立大学法人等職員採用試験
https://www.sssj.jimu.nagoya-u.ac.jp/
■近畿地区国立大学法人等職員統一採用試験
https://www.kyoto-u.ac.jp/siken/
■中国・四国地区国立大学法人等職員採用試験
https://home.hiroshima-u.ac.jp/jinji/shiken/index.html
■九州地区 国立大学法人等職員採用試験
https://www-shiken.jimu.kyushu-u.ac.jp/index.htm
■一般社団法人 国立大学協会
https://www.janu.jp/univ/employment/
私立大学の場合は、大学の設置者である学校法人が独自に職員募集を行い、採用試験を行っています。筆記試験は大学によって異なりますが、一般常識、小論文、適性検査などがあるようです。
以下は、文部科学省のHPに掲載されている全国の私立大学一覧です。こちらから各大学の採用情報ページをご覧ください。
■文部科学省 私立大学一覧
https://www.mext.go.jp/b_menu/link/daigaku4.htm
また、大学職員の採用募集に関しては、様々な人がリアルタイムに近い求人情報をまとめたサイトがいくつも存在します。もし本当に大学職員になりたいのであれば、自分が行きたい大学のHPをチェックするのはもちろんのこと、同時にそういった情報も上手く活用し、貴重なチャンスを逃さないようにしましょう。
国立大学の職員は、非公務員になったものの、基本的には国家公務員に準じています。各大学の平均年間給与額などは、文部科学省が毎年公表しています。平成26年度の全国立の職員の平均年収は、42.6歳で572万9千円(*1)でした。
私立大学職員の年収は、給与を公開しているところが少ないものの、一般的には国立大学職員の給与より高いというイメージがあります。しかし私立は、少子化で赤字経営の大学もかなり増えているため、実際は大学によって千差万別です。これから志望する際は、給与だけでなく、将来的に安定が見込める大学かという点も考慮しておくべきでしょう。とはいえ、今後も集客が期待できる大学は、必然的に競争率も高くなるのが悩ましいところです。
参考までに、平均年収を公開している法政大学の情報を見てみたところ、2014年度の職員の平均年収は、41.60歳で989万1,556円(*2)でした。ただし、法政大学は比較的高いと言われている大学ですので、これを基準と思わず、個別に調べることをおすすめします。
また、立命館大学では3月1日に新卒採用サイトを全面リニューアルしており、勤務条件に年収例が記載されています。これによると、30歳既婚・子ども一人で手当と賞与含め650万円(*3)のようです。
国立大学は、特に新卒と既卒は分けずに求人を出しています。
倍率は学校や職種によりますが、参考に各地区の平成27年度「事務系」の採用人数と全校の合格者数から、採用倍率を出してみましょう。
■事務系 事務
【北海道地区】
第一次試験 申込者数……1,565人
全校(7校)合格者数……39人
倍率……約40倍
【東北地区】
第一次試験 申込者数……2,686人
※平成27年度情報なし
【関東・甲信越地区】
第一次試験 申込者数……12,139人
全校(27校)合格者数……119人
倍率……約102倍
【東海・北陸地区】
第一次試験 申込者数……3,978人
全校(12校)合格者数……49人
倍率……約81倍
【近畿地区】
第一次試験 申込者数……4,796人
全校(13校)合格者数……26人
倍率……約184倍
【中国・四国地区】
第一次試験 申込者数……3,521人
全校(10校)合格者数……33人
倍率……約106倍
【九州地区】
第一次試験 申込者数……6,282人
※平成27年度情報なし
もちろん、第一次試験に合格した全ての人が第二次試験を受けるわけではありませんし、各大学により志望者数も変わるのであくまで参考程度となりますが、地区ごとに平均して計算すると、上記のように約40倍~184倍という結果でした。
一方、私立大学に関しては、近年は申込者数を公表しているところが珍しく、全体的な調査が難しい状況です。
あくまで一つの例となりますが、立教大学の運営元である学校法人立教学院の採用実績(*4)を見てみましょう。(※ただし、この学院は大学以外にも小・中・高も運営しており、職種は学校業務全般の事務総合職です。こういった募集は私立に多い事例です。)
■立教学院 採用実績
【2016年】
採用内定……4名
応募者数……774名
倍率……193.5倍
【2015年】
採用内定……7名
応募者数……503名
倍率……71.8倍
2015年と2016年では倍率の差がかなりありますね。しかしどちらにしても、とても簡単に受かるものではないようです。とはいえ、立教学院は人気のある学校ですので、平均より倍率がかなり高い可能性も考えられます。
今回は大学職員の実態について調査してみましたが、いかがでしたか?
平成28年の国立大学法人等職員採用試験は、受付期間が6月29日~7月13日(水)、第一次試験が8月21日です。このように難関であるということを考えると、志望先を大学に絞らず、試験前に民間企業の内定を持っておくのが得策かもしれません。
大学職員の試験を受けるにしても、民間企業の就活と同様、最終的には面接による人物評価です。いずれにしても、自己分析や大学研究をしっかりと行い、志望動機を具体的に言えるようにしておきましょう。
【参考サイト】
*1
文部科学省「国立大学法人等の役職員の給与等の水準(平成26年度)
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/27/09/__icsFiles/afieldfile/2015/09/30/1360845_02.pdf
*2
法政大学 役員(常勤)・専任教職員の報酬・給与水準
https://www.hosei.ac.jp/gaiyo/johokokai/keiei/kyuyo_suijun.html
*3
立命館大学 新卒採用サイト
https://www.ritsumeikan-trust.jp/recruit-staff/
立命館大学 勤務条件
https://www.ritsumei.ac.jp/mng/gl/jinji/condition/index.html
*4
立教学院 採用情報
https://recruit.rikkyogakuin.jp/data/