毎年人気企業ランキングなどで、上位に名を連ねる鉄道業界。
安定、福利厚生の充実などの業界イメージ、業務領域も鉄道におさまらず不動産、広告、ITなど幅広くなってきていることもあってか、多くの学生が志望する業界となっています。
ライバルが多いからこそしっかりと研究をしておきたい、鉄道業界。今回はその中でも人気のJR東日本、JR西日本、JR東海についてまとめてみました。
「鉄道に関わる仕事がしたい」と考えたときに選択肢として挙げられるのは主に「JR」と「私鉄」です。元々国鉄と呼ばれ、国の事業であったJRは現在「JR北海道」「JR東日本」「JR西日本」「JR東海」「JR四国」「JR九州」に分割されています。(JR東日本、JR東海、JR西日本は完全民営化され上場済み。その他3社は現在も国が資本を保有)JRという枠組みは同じですが、それぞれ別々に事業運営、採用も行っています。
一方、私鉄は
「鉄道事業」-「JR」=「私鉄」
と考えるとわかりやすいでしょう(※地方公共団体が運営する事業を除く場合もあります)
関東では、銀座線・丸ノ内線などでおなじみの「東京メトロ」、神奈川・箱根方面と新宿を結ぶ「小田急電鉄」、渋谷と横浜間をつなぐ東急東横線などを持つ「東京急行電鉄」、新宿と東京・多摩方面を結ぶ「京王電鉄」、神奈川を中心に運営されている「相鉄鉄道」などをイメージしましょう。
関西では、大阪・奈良間を中心とする「近畿日本鉄道」、大阪・神戸間を柱とする「阪急電鉄」、大阪・京都間をつなぐ「京阪電気鉄道」などをイメージするとわかりやすいでしょう。
★私鉄72社が加盟している業界団体「日本民営鉄道協会」のHPを見ると、基本データを確認することができます。
https://www.mintetsu.or.jp/index.html
・JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)グループ
売上高:2兆7561万円
営業利益:4275億円
社員数:58500人(2015年4月1日時点)
主なエリア:関東、甲信越から東北
事業内容:
(1)運輸業(67.2%)
……鉄道事業・モノレール事業、バス事業、車両製造事業
(2)駅スペース活用(14.4%)
……駅構内・駅周辺、「KIOSK」エキナカ商業施設「エキュート」、コンビニエンスストア「New Days」、車内販売など
(3)ショッピング・オフィス事業(9.2%)
……「ルミネ」「アトレ」「エスパル」などショッピングセンターの開発
(4)その他(9.2%)
……Suica電子マネー、広告代理業、情報処理業、清掃装備・駅業務運営業など
※カッコ内は2015年3月期収益の割合
※その他、会社概要については公式サイトを確認しましょう
https://www.jreast.co.jp/youran/
・JR西日本(西日本旅客鉄道株式会社)グループ
売上高:1兆3503万円(連結)
営業利益:1397億円(連結)
社員数:30,234人(単体)(2015年4月1日時点)
事業内容:
(1)運輸業
……鉄道事業(新幹線・在来線)(64.3%)
★2015年3月~北陸新幹線開業
(2)流通業(16.3%)
……エキナカ事業(セブン-イレブン・ジャパンとの業務提携)
(3)不動産業(6.5%)
……ショッピングセンター、駅ビル運営など
(4)その他(12.9%)
……「日本旅行」「ホテルグランヴィア」など観光業/
クレジットカード「J-WESTカード」、電子マネー「ICOCA電子マネー」など
※カッコ内は2015年3月期収益の割合
※その他、会社概要については公式サイトを確認しましょう
https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/
・JR東海 (東海旅客鉄道株式会社)グループ
売上高:1兆6722万円
営業利益:5065億円
社員数:18,231名
事業内容:
(1)運輸業(77.4%)
……東京、名古屋、大阪間を結ぶ日本の交通の大動脈である東海道新幹線、及び名古屋・静岡地区の都市圏輸送を中心とした12線区の在来線を運営
(2)流通業(13.5%)
……「ジェイアール名古屋タカシマヤ」の運営、「東海道新幹線開業50周年」を記念したイベントの開催など
(3)不動産業(2.4%)
……名古屋駅における「JRゲートタワー」、商業施設「キュービックプラザ新横浜」、「アスティ静岡」、「アスティ岐阜」などの運営
(4)その他(6.8%)
……ホテルブランド「アソシア」、広告業など
※カッコ内は2015年3月期収益の割合
※その他、会社概要については公式サイトを確認しましょう
https://company.jr-central.co.jp/company/about/index.html
※アニュアルレポートはこちら(JR3社の財務状況も掲載されています)
https://company.jr-central.co.jp/ir/annualreport/_pdf/annualreport2015.pdf
★HELP⇒アニュアルレポートの読み解き方
https://gakusei.jobrass.com/info/ir/01.html
<参考:東西大手私鉄>
・東京メトロ(東京地下鉄株式会社)
売上高:3998億円
営業利益:972億円
従業員数:9,126人(2015年3月31日現在)
事業内容:
(1)鉄道事業
銀座線(浅草~渋谷間)
丸ノ内線(池袋~荻窪間/中野坂上~方南町間)
日比谷線(北千住~中目黒間)
東西線(中野~西船橋間)
千代田線(綾瀬~代々木上原間/綾瀬~北綾瀬間)
有楽町線(和光市~新木場間)
半蔵門線(渋谷~押上〈スカイツリー前〉間)
南北線(目黒~赤羽岩淵間)
副都心線(小竹向原~渋谷間)
(2)流通事業
……駅直結の「Esola池袋」や駅構内の「Echika」「Echika fit」「Metro pia」を展開。
(3)不動産事業
……渋谷ヒカリエ(共同ビル)、渋谷マークシティ(共同ビル)商業施設、住宅、ホテルを運営
(4)広告・IT事業
・近鉄グループホールディングス
売上高:1兆2337億円
営業利益:564億円
社員数:29,434人
事業内容:
(1)運輸事業
……鉄道事業/バス事業/物流事業/海運事業
(2)不動産事業
……分業事業/賃貸事業/リフォーム事業
(3)流通事業
……百貨店事業「あべのハルカス」/ストア事業/駅ナカ事業/サービスエリア事業
(4)ホテル・レジャー事業
……ホテル・旅館事業「近畿日本ツーリスト」/旅行事業
(5)文化事業
・JR東日本のこれから
2020年までのグループ経営構想として「~限りなき前進~(EVER Onward)」を掲げています。安全・サービス品質・地域との連携強化を方向性とした「変わらぬ使命」、「技術革新」「新たな事業領域」「企業風土」を方向性とした「無限の可能性の追求」の二つを柱とし、事業を促進していきます。
鉄道事業においては2015年度末の北海道新幹線開業、生活サービス事業としては新宿駅新南口ビル、船橋ビル。横浜駅西口駅ビルなどの再開発も行っていきます。また、海外鉄道コンサルティング事業も展開していく予定です。
詳しくはこちら>https://www.jreast.co.jp/investor/everonward/pdf/all.pdf
・JR西日本のこれから
中期経営計画2017では「めざす未来~ありたい姿~」をビジョンに掲げ、3つの基本戦略として「安全・CS・技術」を、事業戦略として「新幹線 高める」「近畿エリア 磨く」「西日本各エリア 活かす」「事業創造 伸ばす」をたてています。これに加え、北陸新幹線と北陸エリアの活性化、「JUSUA osaka」、「訪日観光客需要の獲得」に注力していくと発表しています。
・JR東海のこれから
JR東海は
1)東海道新幹線……「安全対策・強化」「エクスプレス予約などの営業施策」
2)リニアによる中央新幹線の推進……首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ
3)技術力の強化
4)名古屋駅の「JRゲートタワー」の推進
を主に掲げています。JR東日本・西日本と比較すると利益率が高く、負債比率が低い、JR東海に求められていることは「安全安心」「新たな技術の推進」とも言えるでしょう。
詳しくはこちら>https://company.jr-central.co.jp/ir/annualreport/_pdf/annualreport2015.pdf
▼「●●」する学生が求められている
各グループの採用サイトから求める人物像を確認してみると
・JR東日本「変化を恐れることなく、いまを超えられる人」
・JR西日本
「事業活動を通じて、西日本の地域活性化に貢献するという弊社のミッションに意義を感じ、責任感、使命感を持って、チャレンジを続けることができる方」
(https://www.westjr.co.jp/press/article/2014/02/page_5215.html)
・JR東海「自らの頭で考え、自らの身体で行動する「自律的」な人」
と、「挑戦」する人が求められていることがわかります。
鉄道業界のみならずインフラ業界全般で言えることなのですが、「JRならば絶対につぶれないだろう」というイメージや福利厚生など「安定」に魅力を感じる学生が非常に多くいます。しかし各社は共通して、鉄道事業であり、不動産であり、技術であり「開発」を進めていきたいと考えています。
JRが持つ資産を発展させていきたい、会社を良くしていきたい、そしてインフラだからこそできる「日本を良くしていきたい」というまさに「使命」を持ち「挑戦」ができる学生が求められていることがわかります。選考を受ける際は「他者のために行った活動」のみならず「自身が挑戦したこと」などを振り返って望むようにしましょう。
▼「安全・安心」と「事業展開」のバランスをとる
とは言え、鉄道業界の主要な事業は「鉄道」です。鉄道事業に関わる中で必要な意識は「安全」であることです。
例えば、経費削減のために駅の人員を削減したとしましょう。
安全確認を行う人が不足し、業務負荷がかかると、安全な運行が危ぶまれます。
例えば、早く帰りたいからといって、自分が運転する電車の発車時間を1分はやめたとしましょう。
全ての沿線、乗客に少なからず影響が出てきます。
「そんなのありえない」と思うでしょうが、一人の意識がぶれてしまえば、絶対に起こらないとはいえないのです。
鉄道に関わるのであれば、収益だけではなく「多くの人の命を預かっている」「安全に運行する」という強い意識を持った人員が必要です。「徹底して守るべきこと」「発展していくべきこと」をそれぞれバランスよく考えるべきでしょう。
▼企業の役割・選考方法をしっかりと把握する
同じJRでも「JR東日本」と「JR東海」の事業領域は異なります。また、今後の展開の方法や指針も異なります。説明会などで企業の事業内容をしっかりと把握した上で「理念に共感できるか」といった視点で企業をみていくことも重要でしょう。
また、冒頭に述べたように倍率が高い業界のため、ひとつひとつの選考のハードルは高くなります。
筆記試験やエントリーシート、面接などの対策はしっかりと行うようにしましょう。