IT……よく使う言葉ですが、ITとはいったい何でしょうか。「朝、携帯の目覚ましで起きて、アプリで電車の時間を調べて、Suicaを使って電車に乗り、電車の中で授業の休講がないか大学のサイトを確認」この作業のすべてを可能にしているのがITです。IT業界とはどのような仕組みになっているのでしょうか。業界研究をしてみましょう。
ITという言葉は、「Information Technology」の頭文字をとった造語です。日本語に訳すと、「情報技術」です。「情報技術」と聞いて、まず思い浮かぶのはコンピューターやスマートフォンではないでしょうか。コンピューターやスマートフォンは、外側である機体、本体だけでは動きません。プログラムやアプリケーションといったソフトウェアがあってはじめて動きます。コンピューターを使ったシステムやインターネットを使わない企業はほとんどないので、そのサービスを提供する事業も必要です。IT業界は大きく4つの業種に分けられます。
■ハードウェア業
ハードディスクやコンピューターといった電子回路を内蔵した機器や装置、電子部品を製造するメーカーです。パソコン、スマートフォン、タブレットを作っているメーカー、最近開発が著しいスマート家電のメーカーも含まれます。
SONY、Panasonic、東芝、富士通、NEC、日立製作所といった企業があります。
■ソフトウェア業
コンピューターやスマートフォンに搭載されるソフトウェアやアプリケーションの開発、組み込みを行う事業体です。ゲームソフトウェアの開発や販売を行う企業も含まれます。ソフトウェアには、コンピューターを動かすOS(オペレーティングシステム)、OSの中で様々な作業を行うのを可能にするOfficeシリーズやAdobeシリーズといったアプリケーションソフト、OSとアプリケーションソフトの間に位置するミドルウェアソフトの3種類に大別されます。最近は、セキュリティソフトの開発も重要性が高まっています。
マイクロソフト、オラクル、NECソフトウェア、富士通ビー・エス・シーといった企業があります。
■情報処理サービス業(システムインテグレータ)
情報システムの企画や設計、運営・保守を行う業種です。ユーザーにとって最適な情報システムを構築するために、顧客の業務内容を調査、分析したうえで課題を解決できるようなシステムを企画、設計します。また、必要に応じてハードウェアの調達やプログラムの開発を行うことも。システム導入、運用、保守も含め、企画から導入後のサービスまでを総合的に行います。ITコンサルティングともいえます。
NTTデータ、日立ビジネスソリューションズ、新日鉄ソリューションズといった企業があります。
■インターネット関連サービス業
インターネット通信を提供・管理する事業体とインターネットに関連するサービス業があります。インターネット関連の事業体には、ポータルサイトやサーバー運営業、アプリケーションやコンテンツを提供する事業体・プロバイダー、インターネット利用をサポートする事業体が含まれます。
Yahoo!、楽天、サイバーエージェント、DeNA、Google、Facebookといった企業があります。
IT業界は4つに大別できますが、ハードウェア業は電気製品のメーカーが多く、IT業界というよりもメーカーとして認識されています。就活の際にIT業界というと、情報処理サービス業を指します。
情報処理サービス業の業界規模は、7兆1,766億円(平成25〜26年)、前年比プラス5.54%、平成21年以降、毎年売り上げが増加している業界です。
情報処理サービス業、システムインテグレータの職務内容は、どういったものでしょうか。まず、顧客の業務内容を把握・分析し、認識された課題、問題点を解決することのできるシステムを、ソフトウェアやハードウェアといったIT機材を使って構築します。さらに、システムの健全な運用のために必要な教育、保守といった業務も行います。システムインテグレータの職務には、こういったものがあります。
■営業
営業はどんな業種にもありますが、システムインテグレータの営業は、顧客の業務内容、経営状況を把握し、現状分析を行ったうえで、適切なソリューションを提案します。
■設計
顧客に最適なシステムを設計します。システムの効果の検証も行います。
■プロジェクトマネージメント
システムの開発に関連する業務を行います。予算やスケジュールの管理を行い、関連分野の取りまとめを行います。コンサルティング業務を行うこともあります。
■スペシャリスト
IT機器や技術のスペシャリストです。システム構築のために必要なサポートを行います。設計に基づいて、プログラムの開発やテスト検証を行い、システムを構築します。
■顧客サービス
システムを納品後、管理や運用、教育などを行います。システムの保守や、問題が起きた場合には復旧を行います。
情報処理サービスを提供している企業には、どういったところがあるのでしょうか。母体となる企業があることが多く、その観点から3つに分けられます。
■メーカー系
日立、NEC、東芝、富士通といったハードウェアメーカーの傘下にある会社です。母体メーカーの提供するハードウェアと組み合わせたソリューションを提供できるという強みがあります。日立ビジネスソリューションズ、NEC傘下のキーウエアソリューションズといった企業があります。
■ユーザー系
銀行、商社、運輸、交通、流通、どんな分野の企業もコンピューターシステムを使っています。これらのコンピューターシステムのユーザーである企業を母体とする会社です。母体となっている企業の業種に精通しているので、専門性を活かしたソリューションの開発に強みがあります。業界最大手のNTTデータ、商社を母体とする伊藤忠テクノソリューションズ、住商情報システム、銀行の傘下にある三菱総研DCS、広告会社の電通の傘下にある電通国際情報サービス、製鉄メーカーを母体とする新日鉄ソリューションズ、といった企業があります。
■独立系
母体とする企業がない会社です。ベンチャー企業も多く、親会社という制約がないので、幅広い顧客に対して、自由にシステム構築ができるという強みがあります。トランス・コスモス、大塚商会、CSKシステムズといった企業があります。
売上高で見ると、最大手はNTTデータ(1兆5,118億円)です。続いて、大塚商会(6,057億円)、野村総合研究所(4,059億円)、伊藤忠テクノソリューションズ(3,819億円)、ITホールディングス(3,610億円)となっています。NTTデータは、15%近い業界シェアを持っています。
最近の傾向としては、国内から海外へのシフト移動が進み、積極的なM&Aが行われています。NTTデータは、2020年までに海外売り上げ1兆円構想を掲げ、2014年にはスペインのエヴェリス、2015年には米国のカーライル・アンド・ガラガー・コンサルティンググループを買収しました。
また、最近本格的に多分野で活用されるようになってきているクラウドサービスや大容量の情報処理サービスといった市場は今後さらに成長すると見込まれています。
IT業界、特にシステムインテグレータは、包括的な業務を行っています。営業にも、コンサルティング業務にも、システムの運用にも、最も重要なのは、コミュニケーション能力です。プロジェクト管理能力、リスクマネージメント能力といったものも必要です。もちろん、IT技術や機材に関する知識は必要になりますが、それは、入社後に教育がある会社がほとんどです。常に新しいものが生まれる業界ですから、知識欲が旺盛、新しいことを学んで実行するのが得意な人が向いているのではないでしょうか。
<参照元サイト>
https://www.jisa.or.jp/it_info/statistics/tabid/769/Default.aspx