毎年、就職活動生に人気のテレビ業界。特にキー局と呼ばれるフジテレビ、テレビ朝日、TBS、日本テレビは非常に人気です。「テレビが作りたくて……」「テレビが好きだから」という志望動機だけではなかなか入社できないほどテレビ局の業務範囲は広くなっています。今回は各局の特徴を比較してみました。
フジテレビはフジ・メディア・ホールディングスの連結子会社で放送事業を担っています。
放送事業を担う放送グループはニッポン放送、ビーエスフジなどとともに、ホールディングスの売り上げの46.4%を占めています。その他、ポニーキャニオンなど映像音楽グループ、共同テレビジョンなど制作グループ、ディノス・セシールなどの生活情報グループ、扶桑社など出版グループ、都市開発グループ、広告グループの計7グループ21社で構成されています。
フジテレビというと、「めちゃめちゃイケてる!」や「SMAP×SMAP」などのバラエティ、
月曜9時のドラマ「月9(ゲツク)」枠の確立、「めざましテレビ」「とくダネ!」といった情報番組など人気長寿番組が目立ちます。
その中でも特に「踊る大捜査線」に代表されるドラマ、映画、さらにスピンオフなど、ある作品をドラマだけではなく映画、キャラクターなどメディアミックスさせることを得意としています。
フジテレビの代表作ともいえるドラマ「HERO」は2001年に「月9」枠でドラマ化、その後、2時間ドラマ(2006年)、映画化(2007年)を経て昨年2015年には再度映画化され、昨年の実写邦画興行収入ではNo.1となりました。
今年2016年には、HERO同様月9で放送された「信長協奏曲」が映画化、1月に公開されヒットが期待されています。
最近では当たり前となった映画放映・テレビ放送前に多くの情報番組やバラエティなどで番組宣伝を行うメディアジャック、これを本格的にはじめたのもフジテレビといわれています。
このようにフジテレビの強みは「枠を超えた作品(メディア)展開」ということができるでしょう。
例えば、「テラスハウス」。
元々フジテレビはかつて「あいのり」という恋愛バラエティをヒットさせていました。その経験値を基に、新たなリアル恋愛バラエティ「テラスハウス」を制作。登場人物たちは、一般人、タレント、モデル、スポーツ選手など決して有名ではありませんでした。しかしそのリアリティはテレビ離れといわれる若年層にヒットし、映画化までに至りました。現在は、フジテレビが番組制作で協力している動画配信サービス「ネットフリックス」で新シリーズがスタートさせるなど、メディアを変え、コンテンツを生かす取り組みを行っています。
みなさんならば、「お台場」「イベント」「スポーツ番組」「めざましテレビ」…フジテレビが持つリソースをどのように活用し、コンテンツをヒットさせたいと思いますか?テレビ業界を受けたいみなさん一度考えてみましょう。
▼その他、フジテレビのこれまでの軌跡は採用サイトのコンテンツに記載されています。確認してみましょう。
https://www.fujitv.co.jp/saiyo/about/enkaku.html
▼JOBRASSには社員インタビューも掲載されています。
https://jobrass.com/gakusei/SCST03502/20012/35258
テレビ朝日はテレビ朝日ホールディングスの連結子会社でテレビ放送事業を担っています。
81.9%の売り上げを誇るテレビ放送事業のほかに、「ケツメイシ」「湘南乃風」などのアーティストが所属するテレビ朝日ミュージックが担う音楽事業や、イベント事業、ショッピング事業があります。
テレビ朝日というと、「徹子の部屋」、「ドラえもん」、「ミュージックステーション」などの老若男女が楽しめる番組が目立ちます。その中でも特にバラエティ、とりわけ深夜枠への評価が高くなっています。その勢いのはじまりはやはり「アメトーーク!」。
「ドラえもん芸人」「キングダム芸人」「人見知り芸人」など、あるテーマに基づき、有名人が語り合うといったトーク番組ですが、その編集技術やタレントにはテーマごとのコアなファンからも定評があり、「アメトーーク!」で紹介された作品はブームを呼ぶといったことも多くあります。アメトークはDVD売り上げ、視聴率も高くいまや日本のバラエティ番組の代表格となっています。
深夜バラエティ枠はアメトークのみならず「マツコ&有吉の怒り新党」「夜の巷を徘徊する」「ぷっすま」なども人気番組です。
また、テレビ朝日は「深夜バラエティ」として番組がヒットすると「ゴールデンタイム」と呼ばれる番組放送時間へ変更することが多く、番組プログラムの変動も多いのが特徴的です。「しくじり先生 俺みたいになるな!!」「Qさま!!」などがまさしくその例です。深夜で固定のファンを獲得、ゴールデンタイムへ進出、視聴率などが芳しくなかった場合は番組終了し新たな番組へという、このサイクルはテレビ局の中でも最も早いといわれています。
このようにスピーディに新たな番組やアイデアを生み出し、世の中に展開することができているのは、「相棒シリーズ」や「報道ステーション」、「TVタックル」など安定した人気長者番組を多く制作しているからとも言えます。
テレビ朝日はバラエティ・ドラマの他にも、「世界水泳」などのスポーツ、「ミュージックステーション」などの音楽といった文化それぞれに強い番組を持っていることも特徴です。
「伝統」と「若手の感性」のバランスの良さがテレビ朝日の強みと言えるでしょう。
TBSは東京放送ホールディングスの連結子会社で放送関連事業を担っています。
その他、通信販売、イベント企画などを行う映像・文化事業、赤坂サカスのイベント、赤坂BLITZ・赤坂ACTシアターの運営など不動産事業を行っています。
TBSというと、2015年はなんといっても「下町ロケット」「天皇の料理番」など骨太なドラマがヒットしました。TBSは元々「ドラマのTBS」と呼ばれるほど、ドラマには定評がありましたが、最近「半沢直樹」や「下町ロケット」「天皇の料理番」など若年層だけではなく、中年層も視野に入れた作品作りを強化させ、評価を得ています。天皇の料理番は、東京ドラマアウォード2015連続ドラマ部門グランプリ、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞を受賞、フランス・カンヌで惹かれた国際コンテンツ見本市「MIPCOM」のバイヤーズ・アワードでもグランプリを受賞しました。
「半沢直樹」の最終回視聴率は42.2%と平成のドラマ作品では1位(歴代では2位)になるなど、社会ブームとなりました。ちなみに歴代視聴率1位は「積木くずし・親と子の200日戦争・」最終回(45.3%)、3位「ビューティフルライフ最終回」(41.3%)とTBS作品がトップ3を占めています。バラエティでは「マツコの知らない世界」や「ぴったんこカンカン」が人気を博しています。
日本テレビは日本テレビホールディングスの連結子会社でコンテンツビジネス事業を担っています。その他、ティップネスなどの生活・健康関連事業、汐留および麹町地区のテナント賃貸収入をはじめとする不動産賃貸事業を行っています。
テレビ事業とともにコンテンツビジネスを担う、映画事業では「ホットロード」や「寄生獣」「バケモノの子」などを制作、テレビドラマからの映画として「ST赤と白の捜査ファイル」もヒットしました。またイベント事業では「ルーヴル美術館展」など文化作品の展覧会も好評を博しています。
日本テレビというと、視聴率の好調ぶりが目立ちます。2014年度(2014年3月31日~2015年3月29日)の世帯平均視聴率はともに全日・ゴールデンタイム・プライムタイムでいずれも(日本テレビ・NHK・TBS・テレビ朝日・フジテレビの中で)トップになっています。2015年上半期(2015年3月30日~9月27日)でもトップをとっています。
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▼視聴率に関する用語
・全日……6時から24時までの時間帯
・ゴールデンタイム……19時から22時までの時間帯
・プライムタイム……19時から23時までの時間帯
※ゴールデンタイム、プライムタイム、全日の3つの時間帯で視聴率のトップを獲得することを「三冠」と言う
▼ユーザー(視聴者)の年齢層に関する用語
・F1層…20~34歳の女性
・F2層…35~49歳の女性
・M1層…20~34歳の男性
・M2層…35~49歳の男性
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日本テレビはこの好調を「オールファミリー向けの番組がすべての年齢層の視聴率を押し上げたため」とアニュアルレポートで分析しているように、日本テレビの強みはまさに「全世代に受ける王道の番組作り」と言えるでしょう。特に「家族全員で楽しめる番組」が徹底されているのは「笑点」「真相報道バンキシャ!」「ザ!鉄腕!DASH!!」「世界の果てまでイッテQ」が続く日曜日の夜の番組で、すべて高視聴率です。
バラエティだけではなく「ZIP!」「スッキリ!」「ヒルナンデス!」など主婦層に受ける報道・ワイドショーも定評があります。
また2014年4月に「Hulu」の日本向け事業を開始し、定額制動画配信サービスに参入しました。(※動画配信サービスについてはこちらの記事も確認してみましょう→ネットフリックス、Hulu、dtv―― 動画配信サービスを通して就活生が考えておきたい3つの視点
日本テレビのコンテンツだけではなく他局のコンテンツも配信することで、2015年3月にはユーザー数が100万人を突破しています。オリジナルコンテンツとして「THE LAST COP」を制作。第1シリーズをテレビ放送、続編をHuluで配信するという新たな試みを展開しています。今後は地上波放送の作品の続編やスピンオフなどの配信を強化することで、コンテンツの普及をめざすなど、新たなアプローチをしています。
いかがでしたか?いまやテレビ局はテレビ内だけの事業だけではなくイベント・不動産・映画など様々な取り組みを行うことで利益を確保しています。
振り返ると、例えばフジテレビは1997年本社屋を新宿区河田町からお台場へ移転しました。
いまや「お台場」は観光地の一つとなり、「お台場合衆国」「お台場冒険王」といったイベントも夏の一大イベントとなっています。
それは社屋全体、お台場全体がメディアであり「見たいテレビ」から「見に行きたいテレビ」へという発想からうまれたものです。
ほかの局でも「汐留パラダイス」「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION」「デリシャカス2015」などイベントを開催し、テレビ局自体をイベント化しています。
このように土地、コンテンツ、そして人―― テレビ局が持つ資産をいかに活用していくか、これが各局が共通して持つ今の、そして永遠の課題でしょう。