突然ですが、コーヒー好きの人に質問です。あなたはコーヒーを飲みたいときによく行くお気に入りのカフェはありますか。
私は、時間が空くと積読状態の本を一冊もってお気に入りのカフェに行きます。カフェといっても、セルフサービス形式のお店ではなく、ゆったりとした雰囲気の中で自分の時間を楽しめる馴染みのカフェです。一方、待ち合わせの前に寄るのは、便利なところにあるチェーン店のカフェをよく利用します。出てくるコーヒーの味がわかっているので安心ですし、土地勘がない人と待ち合わせをするにも見つけやすいからです。コーヒー1杯といっても、飲むところによって味も店の雰囲気も違い、奥が深いですよね。
では、コーヒーが私たちの口に入るまでにどういったプロセスがあり、どういった業界が関わっているのでしょうか。
1980年にドトールがセルフタイプの1号店を出した時に、ドリップ式ブレンドコーヒーが1杯150円でした。これは当時、外で飲めるコーヒーの平均額のほぼ半額で価格破壊! という状況だったということです。ところが、35年経った今、コンビニでも煎れたてのおいしいドリップコーヒーを100円で飲むことができます。おいしいコーヒーが安く飲める、それは嬉しいことですが、それはどういう仕組みなのでしょうか。どういった業界が関わってくるのでしょうか。コーヒーが私たちの口に入るまでの過程を見てみましょう。
●コーヒー豆の生産地
日本ではコーヒー豆がほとんど取れない、ということはご存知のことと思います。コーヒー豆は99.9%輸入です。コーヒーの産地は、北緯25度から南緯25度の間の熱帯と亜熱帯地方に集中しています。イエメン、タンザニア、ケニア、エチオピアといった中東か、アフリカ諸国、ジャマイカ、キューバ、ブラジル、コロンビア、メキシコ、グアテマラ、コスタリカといった中南米諸国が多い生産国です。近年ではベトナムやインドネシアも生産量を増やしてきています。産地によって品種が異なり、味の特徴が違ってきます。
苦味と酸味のバランスは人によって好みが違い、自分で淹れるならいろいろ試してみるのも楽しいものです。しかし、チェーン展開しているお店になると、決まった味を作り出すレシピがあり、同じ味を再現しなくてはなりません。気候によっても左右される味や収穫量、自然が相手の原材料調達は、リスクを考えると分散させる必要があります。コーヒー豆の調達という点では、食品を扱う商社のような存在が必要になってくるのです。
●コーヒー豆の流通
日本は、世界第4位のコーヒー消費国であり、輸入割合では第3位です。ブラジル、ベトナム、コロンビアの順に量が多く、40か国以上の倉荷からコーヒー豆を輸入しています。
コーヒー豆は、生産者から仲卸業者、輸出業者を経て、輸入国側の輸入業者の手に渡り、輸入業者からロースターといった加工業者や、自家焙煎をするカフェといったお店に卸されます。
また、調達を商社が担っていることもあります。例えば、100円で入れたてのコーヒーが飲めると人気の「セブンカフェ」ですが、使用している豆は総合商社大手の三井物産がブラジルから調達しています。4億5千万杯を年間で売り上げる大ヒット商品の安定供給のために、三井物産は現地に調達会社を作り、巨大農場と専属契約を結んで安定供給できるシステムを作りあげました。
●コーヒー調達に関わる主な業界と企業 ※( )内は売上げ高
・総合商社:三菱食品(2兆3,373億円)、三井食品(7,538億円)、丸紅食品(396億円)
・コーヒー生豆専門商社:石光商事(343億円)、ワタル(167億円)、日本珈琲貿易(80億円)
●コーヒーの加工
コーヒー豆は、周りの果肉や果皮をとった生豆の状態で出荷。グリーンコーヒーとも言われるように、生の状態では緑色をしています。
生豆は加熱処理、焙煎することによって生豆の成分が化学変化を起こし、私たちに馴染みのあるコーヒーの味や香りが生み出されていきます。焙煎加工をする専門のロースター業者がいますし、専門店が独自に焙煎処理を行うことも。大手のロースター業者には、ユニオンコーヒーロースターズ、アライドコーヒーロースターズといった企業があります。焙煎後、いろいろな形で処理され、以下の商品となります。
•コーヒー豆として
焙煎後、充てん・包装され、コーヒーを挽いて入れるお店、商店から消費者へ。二次加工用の原料として工場等に流通していきます。
•レギュラーコーヒーとして
焙煎後、ブレンドされ、粗びき、中挽き、細挽きなど、商品ごとに細かさを変えて粉砕。その後、充てん包装され、製品となります。
レギュラーコーヒーの人気ブランドは、ドトールコーヒー「バルファン」、キーコーヒー「スペシャルブレンド」、UCC上島珈琲「ゴールドスペシャル」、スターバックス「ハウスブレンド」、AGF「マキシムちょっと贅沢なコーヒー店」など。
•インスタントコーヒーとして
焙煎、ブレンド、砕かれるところまではレギュラーコーヒーと同じ。粉砕された後、抽出機でコーヒー液が作られ、その後の処理は次の2通り。
インスタントコーヒーの人気ブランドは、ネスカフェ「ゴールドブレンド」、AGF「ブレンディ」、ネスカフェ「香味焙煎」、キーコーヒー「みんなで楽しむインスタントコーヒー」、UCC上島珈琲「ザ・ブレンド114」など。
1. コーヒー液をマイナス40度で凍らせたのち、細かく砕き、真空凍結によって水分を取り除いてコーヒーの結晶を抽出するフリーズドライ方式。
2. コーヒー液を、噴霧し熱風で水分を蒸発させ、粉末状になったコーヒーを顆粒状にするスプレードライ式。
どちらかの方法で粉末状にされたのち、充てん・包装され、製品となります。
•缶コーヒー等の液体のコーヒー
抽出機でコーヒー液が作られるところまでは、インスタントコーヒーと同じ工程です。その後、糖分や乳成分といったコーヒー以外の成分と調合され、殺菌。その後、缶やペットボトルに充てん・包装され、商品となります。
缶コーヒーの人気ブランドは、アサヒ飲料「金の微糖」、ドトールコーヒー「ブラックコーヒーレアル」、UCC上島珈琲「ブラック・無糖」、サントリー「ボス無糖ブラック」、キリンビバレッジ「ファイア引き立て微糖」。
•パウダータイプ
持ち運びも簡単で、味もいろいろ出ていて人気のパウダータイプですが、抽出までは、インスタントコーヒーや缶コーヒーと同じ工程です。抽出後、噴霧乾燥されてから、砂糖やクリーミングパウダーなどと調合され、充てん・包装されます。
タイプも様々な商品が出ていますが、それぞれの商品や、味の調合をしてレシピを開発し製品化しているメーカーのおかげで、カフェに行かなくてもいろいろな味のコーヒーを手軽に楽しむことができるようになりました。
●加工コーヒー業界、主なメーカーと売り上げ高
1. キリンホールディングス(2.1兆円)
2. アサヒグループホールディングス(1.7兆円)
3. サントリー食品インターナショナル(1.2兆円)
4. 味の素(1兆円)
5. UCCホールディングス (3,348億円)
6. キーコーヒー(536億円)
朝はまずコーヒーを飲んでから、バイトの休憩時間には缶コーヒーを、友達との待ち合わせはカフェで、夜レポートが終わらなくて眠気覚ましにコーヒーを飲む……など、コーヒーはホッと一息をつく時など、飲みたくなるもの。
家で飲む時には、お気に入りのマグカップがあるという人もいるのではないでしょうか。コーヒーはエスプレッソ用のデミタスカップ、カフェオレ用の口が大きいタイプのコーヒーカップと、飲むコーヒーによってコーヒーカップの種類が変わってきます。また最近は、エスプレッソマシーンやバリスタなど、自宅で本格的なコーヒーが飲めるマシーンも多様なものが出ています。じっくりと手入れしないと味が変わってしまうと言う人もいます。お湯を注ぐポットにもこだわりがあり、注ぎ口の形が重要だと主張する人もいます。
たかがコーヒー、されどコーヒー。こだわりを持つ人にとっては、コーヒーポットやドリッパー、フィルターといった周辺器具や食器メーカーも大切。さまざまな業界が携わって、私たちは好みのコーヒーを飲むことができるんです。
コーヒーを飲んだり、軽食をとったり、時間をつぶしたり、待ち合わせ場所にしたり……いろいろな利用方法があるカフェ。用途によって使い分けている人も多いかもしれません。カフェにもいくつかの業態がありますよね。
昔ながらの喫茶店、コーヒー専門店は個人経営が多いですが、朝食セットが話題のコメダ珈琲や、コーヒーの味にこだわった星乃珈琲店など、他にない特色を打ち出してチェーン、フランチャイズ展開するお店もあります。また、スターバックスやタリーズといった外資系、ドトールも含めたセルフサービス形式のお店は店舗数も多く、あちこちで見かけるようになりました。さらには、ほぼ街角毎にあるように感じるコンビニでも、コーヒーを買って飲むことができます。「街カフェ」「お家カフェ」といった表現も定着しているようです。
「コーヒーが好き」「カフェが好き」「コーヒーを美味しく提供したい」「カフェで過ごす快適な環境・空間を創りたい」という人は、ぜひこの記事を参考に業界研究を深めていってください。
●カフェ大手の売り上げ状況
スターバックスコーヒー 1,256億円
ドトール 734億円
コメダ珈琲 430億円
参照元サイト
https://coffee.ajca.or.jp/data
https://www.agf.co.jp/