毎年、就職活動生に人気の出版業界。
そのなかでも大手出版3社である「小学館」「集英社」「講談社」は毎年応募者が殺到します。ジャンルが幅広いためなかなか調べきれない出版業界を、3社の比較を通して学んでいきましょう。
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従業員数:725名/男子465名・女子260名(2016年10月1日現在)
創設年:1922年(大正11年)8月8日
資本金:1億4700万円
売上高:1025億円(2016年2月期)
理念:出版物が世の全ての悪いことを無くすことはできないが、人の心に良い方向を生み出す、何らかの小さな種子をまくことはできる。人生の中で大きく実となり、花開く種子をまくという仕事が出版であり、これが当社の理念です。
公式サイト:https://www.shogakukan.co.jp/
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小学館は「幼稚園」「小学1年生」「小学館図鑑NEO」など子供向けの本を得意としています。なかでも「ドラえもん」や「ポケットモンスター」「妖怪ウォッチ」など子供に人気なキャラクタービジネスを展開していることが強みです。
その証拠にオリコンが調査した2016年 年間本ランキングでは「妖怪ウォッチ 3 スシ/テンプラ オフィシャル完全攻略ガイド」ゲーム攻略本部門第1位にランクインしています。(https://www.oricon.jp/files/2016/12/20161201_2-1.pdf)
グループ会社には、ドラえもんがキャラクターとなっているドラキッズに代表される未就学児向けを中心とした教育事業、キャラクターライセンス事業などを展開する「小学館集英社プロダクション」があり、今後もキャラクターを本に留まらず教育、保育、イベントなどにもよりコンテンツの領域を広げていくことが考えられるでしょう。
また、少女向けコミック誌をみてみると、小学低学年女児を中心に人気を集めているカードゲーム「アイカツ!」のトレーディングカードや本格的な「漫画道具セット」など付録が話題となり、小学館が出版する「ちゃお」は2015年7月~9月で約49万部を発行しており、ライバルである「なかよし(約12万部)」「りぼん(約19万部)」と比較しても圧倒していることがわかります。
(※一般社団法人 日本雑誌協会
https://www.j-magazine.or.jp/magadata/index.php? module=list&action=list&cat1cd=2&cat3cd=29&period_cd=30)
また、その他注目しておきたい動向としては、今年2017年8月にDeNAとデジタル事業を行う共同出資会社、株式会社MERYを設立することが公表されました。記事の作成~編集~校正を小学館が、ネット上のマーケティングをDeNAが行い、両社の強みを生かした事業の展開が期待されています。
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従業員数:754名(男性421名・女性330名)2016年6月1日現在
創設年:1926年(大正15年)小学館より娯楽誌出版部門として分離、集英社設立。
(※集英社は小学館が筆頭株主であり、「一ツ橋グループ」に所属)
公式サイト:https://www.shueisha.co.jp/
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集英社は、出版大手3社の中で売上高が最も高い業界最大手の出版社であり、「ワンピース」や「HUNTER×HUNTER」、「約束のネバーランド」「ハイキュー!!」などヒット作品を生み出す「週刊少年ジャンプ」などマンガ部門が強みです。
オリコンが調査した2016年 年間本ランキングマンガ部門では1位,2位をワンピースが独占、トップ10のなかで8作品が集英社の作品です。なかでもワンピースは国民的なマンガ作品で、「最も多く発行された単一作者によるコミックシリーズ」として2015年6月15日にギネス世界記録に認定されたほどです。また、連載中の作品だけではなく「ちびまる子ちゃん(りぼん)」「こちら葛飾区亀有公園前派出所」「ドラゴンボール」「スラムダンク」など過去の作品に根強いファンが存在し、現在もDVDBOXや完全版、コミック、映画など展開しています。またジャンプのキャラクターのグッズを扱う「ジャンプショップ」(全国10店舗)やジャンプ5誌(週刊少年ジャンプ、少年ジャンプ+、Vジャンプ、ジャンプSQ.、最強ジャンプ)による合同イベント 「ジャンプフェスタ」などジャンプブランドの展開の強化を進めています。コミックの他に、「Seventeen」「non-no」「MORE」「Myojo」などの雑誌も好調です。
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従業員数:914名(2017年1月現在)
創設年:1909年(明治42年)
資本金:3億円
公式サイト:https://www.kodansha.co.jp/
理念:おもしろくて、ためになる
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講談社は週刊少年マガジン、週刊ヤングマガジン、モーニング、イブニング、なかよしなどの雑誌を出版しており、昨今では「進撃の巨人」が大ヒットしています。本作はオリコンが調査した2016年 年間本ランキングのマンガ部門で3位、4位となっています。更に、2015年には映画も公開されました。映画公開の際には、「ほっかほっか亭」や「au KDDI」、「ピザハット」など多くの企業とのタイアップが話題となりました。また、進撃の巨人のほかに「寄生獣」や「新宿スワン」「宇宙兄弟」、「フラジャイル」など講談社が出版する青年誌は社会性のある作品も多く、若者のみならず、大人にも定評があり、軒並み映像化されているのが一つの特徴といえるでしょう。
冒頭にもお伝えした通り、出版業界の規模は約1.6兆円で、IT業界が5.2兆円、建設業界が約46兆円など他業界の規模と比較すると決して大きな業界とは言えません。スマートフォンの普及などにより販売数も減少を続けています。しかし各社はあらゆる工夫を凝らして、売上の増加をはかっています。ここではこれから出版業界を目指すみなさんに意識をしておいてほしい各社の動向を4点に絞ってお伝えします。
1.映画・ドラマ化は当たり前、メディアミックスへ
2015年大ヒットした下町ロケットのように、いまやマンガや小説は紙だけで楽しむだけではなく、映像化は当たり前の光景となってきました。昨今では更に、歌舞伎の演目となった「スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース」、ユニバーサルスタジオジャパンのアトラクション「進撃の巨人進撃の巨人・ザ・リアル 2」など、コンテンツを生かした展開も見受けられます。
2. 読めるのは紙だけではない、電子書籍の強化
紙の本から電子書籍へ・・・といった流れは数年前からありますが、現在は各社デジタル事業部を構え、よりデジタル化の取り組みを強化しています。集英社ではファッション誌11誌が配信されるNews Standアプリを展開するなど各社スマートフォンやタブレットに対応したコンテンツを充実させています。今後は紙だけではなくこうしたデジタルの知識や理解のある人物の採用が予想されます。
3.付録つきから変化、仕様違いの販売へ
2010年ごろ、Cher(シェル)のバックを付録として売り出されたブランドムック本が人気を博したように、雑誌では豪華な付録をつける傾向が高くあります。しかし、昨今では同じ雑誌でも付録がついている仕様と付録がついていないミニサイズの雑誌を同時に刊行する流れも出てきています。これは「内容を重視しているので付録はいらない」「バックの中に入るサイズがほしい」「価格が安い方がよい」といった読者の声に応えた流れです。今後はこうした多様な読者へのニーズに応えた仕様が出てくると予想されます。
4.「懐かしい」を取り戻せ、元コドモへのアプローチ
各社を分析していると「マンガ」コンテンツが強いことがわかるはずです。昔はマンガ=子供が読むもの、というイメージがありましたが、現在は「かつてマンガに夢中だった大人」へのアプローチも強化されています。例えば2015年は「りぼん創刊60周年」だったことから、企画サイト「250万乙女のバイブル 思い出の扉」を開設。さらに、「ママレード・ボーイ」や「天使なんかじゃない」など80~90年代に流行したマンガのグッズを販売、30~40代が思わず「懐かしい」と買ってしまう商品を展開しています。
出版業界に関しては、いまや「紙媒体を発行する業界」考えるよりも「コンテンツをうみだす業界」と考えるべきかもしれません。今後は「読者が持つ多様なニーズにいかにこたえられるか」「コンテンツをどこまで盛り上げられるか」が各社の課題であり、展望といえるでしょう。競争倍率も高く、ライバルも多い出版業界ですが、まずは各社の話を実際に聞いて業界・企業研究をすすめていきましょう。
これまでお伝えしたように、出版業界は応募者のレベルや志望度も高く、採用へは狭き門といえます。そこで必要なのは、企業・業界研究。企業ごとでどのような取り組みをしているのかを早く知っておくことが必要です。また、できればこうしたネット上ではなく採用担当者やスタッフなど実際にそこで働いている人の声を聞いておくことが必要でしょう。
そこでジョブラスでは、11月に集英社が参加する特別セミナーを実施します。インターンシップをこの夏行っていないため、リアルな声を聞くにはとっておきの機会です。さらに本イベントでは、採用担当者だけではなく、「るろうに剣心」や『新テニスの王子様』など、数々の話題作を生み出している「ジャンプスクエア」のスタッフも登壇!この機会にぜひご参加ください。
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