かわいいペットの寝顔、息をのむような絶景、おいしそうな食べ物、その時を切り取って残せる写真。最近は、手軽にインスタグラムやfacebookで共有できるのでなおさら楽しくなっていますよね。趣味は写真、という人も多いのではないでしょうか。日本のカメラは素晴らしい、と世界中で認められていますが、どのように開発が始められ進展してきたのでしょうか。現在のデジカメに関して業界研究をしてみましょう。
カメラの心臓部であるレンズの開発(光学産業)は、軍需産業と切っても切れない関係にありました。20世紀の初頭、帝国陸軍や帝国海軍で使われる光学機器はドイツ等の外国産のものでした。カメラはライカ、と言われていたことを考えると、ドイツは光学産業で世界の最先端だったのでしょう。しかし、すべてを輸入に頼っていた状況を打破すべく、双眼鏡や測遠機、望遠鏡といった光学兵器開発が軍を主導に始められます。1917年にはニコンの前身である日本光学工業株式会社が設立されました。戦時にはさらに多くの光学機器メーカーが光学兵器生産に従事させられることになりました。第二次世界大戦時には、潜水艦や軍艦に搭載された照準器等の光学機器は国内で生産されていました。
戦後、光学メーカーは蓄積された技術を、民需カメラを製造することで活かしました。1948年に、日本光学(後のニコン)は、日本第一号カメラを発売しました。最初から性能が評価されたわけではなかったようですが、改良を続けて新たな機能が付加されたカメラを発表し続けます。1959年に発売された35mm一眼レフカメラNikonF世界最高のカメラという評判を得ました。同じ年にキヤノンもキヤノンフレックスという一眼レフカメラを発表しています。実は、日本初の一眼レフカメラは1952年に旭光学が発売したアサヒフレックスでした。同時期に多くのメーカーが切磋琢磨し、新たな機能を追求していったおかげで、現在世界市場の8割を日本メーカーが占めるという状況を作り出すことができたのです。
●デジタルカメラ製造の推移
デジタルカメラの製造状況を見てみましょう。一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)の発表した、昨年、2014年の生産出荷実績です。
※( )内は前年比
•レンズ一体型カメラ(いわゆるコンデジ、コンパクトデジタルカメラ):台数が2,960万台(64.7%)金額が約3,592億円(73.3%)
•デジタル一眼レフカメラ(ミラーレスを除く):約1,055万台(76.3%)金額が約4,683億円(84.1%)
•ノンフレックス一眼レフカメラ(ミラーレスカメラ等):約329万台(99.5%)金額が約1,371億円(112.6%)
デジタルカメラの販売台数は、スマートフォンの発展とともに減少傾向にあります。特にコンパクトデジカメは昨年比が3分の2というかなり厳しい数字になっています。常に手元にあるスマートフォンのカメラできれいな写真が取れるようになればなるほど、あえてカメラを持ち歩く必要がないと思うようになるのは無理のないことでしょう。facebookやインスタグラム、Twitterといったソーシャルメディアにアップするのも、スマホからならあっという間にできます。そうなると、コンパクトデジタルカメラの減少傾向は食い止められないのかもしれません。実は最大だった2010年に比べると、およそ20%まで減少してしまっています。各メーカーともハイエンドユーザーを想定した、機能追及の商品を開発しています。台数の昨年比に比べて金額の昨年比の減少幅が少ないのはそういうことなのです。
その傾向は、ミラーレスカメラではっきりしています。ミラーレスカメラは、光学式ファインダーを取り除くことで軽量小型化した一眼レフカメラです。一眼レフカメラの画質とコンデジに近い軽さという機能性で堅調の売り上げを維持しています。やはり、一眼レフ開発の過程に見られたように、新たな機能の追及が、デジタルカメラがスマホに駆逐されることなく生き残っていく道のようです。
とはいえ、カメラメーカーはスマートフォンのカメラの心臓部に当たるイメージセンサーも製造しています。SONYは、CMOSイメージセンサーの世界市場でナンバーワンメーカーです。2014年時点では世界シェアの40%を占めていました。スマートフォン市場の規模を考えると、非常に大きい数字です。
●デジタルカメラのシェア
デジタルカメラの世界シェアの85.0%(2013年販売台数実績)、一眼レフカメラの98.6%(2013年販売台数実績)を日本メーカーが占めています。なんと、世界で使われているカメラのほとんどが日本製だとは素晴らしいですね。
デジタルカメラ市場の世界シェアは、1位がCanon(25%)、2位がNikon(23%)となっています。一眼レフカメラも、Canonが43%、Nikonが35%となっています。
次に、デジタルカメラのメーカーを見てみましょう。
デジタルカメラメーカーは、国内に8社あります。販売シェア順位は、デジタルカメラの売上台数が最高だった2010年以降、ほとんど変動が見られません。Canon、Nikon、SONYの3大メーカーが実に70〜80%近い販売シェアを維持しています。
各メーカーの特徴を見てみましょう。
●Canon
デジタルカメラ業界のトップ企業です。デジタル一眼レフカメラでもナンバーワンのシェアを持ちます。ミラーレスを除く一眼レフカメラでは、5割のシェアを誇ります。業務用カメラとしても人気のメーカーです。Canonのカメラはオートフォーカスが早い、肌や髪といった人物の色合いを魅力的に表現できる特徴があるといわれています。
デジタルカメラ部門以外に、半導体液晶露光装置や医療機器も製造しています。
●Nikon
デジタルカメラ、デジタル一眼レフカメラで、Canonに次ぐシェアをもっています。業務用カメラとしても良く使われています。元々軍用機材を作っていた伝統からか、丈夫さに定評があります。長く使っても修理の必要がほとんどないそうです。水深15mの水圧に耐えられる防水ミラーレスも開発しています。業務用機材としても定評があり、NASAの公式カメラとしても使用されているとか。
●SONY
デジタル機器の世界ブランド企業です。デジタルカメラでは3番目、ミラーレスカメラでは第2位のシェアを持っています。「技術のソニー」と言われているだけに、カメラでも、世界最小・最軽量といった業界をけん引する新機能を打ち出しています。スマートフォンのイメージセンサーといった新たな技術を必要とする製品の開発にも優れています。
●FUJIFILM
代表的なフイルムメーカーです。デジタルカメラの時代に代わってからは、フイルムメーカーとして蓄積した色彩表現能力を活かした色の表現に優れたコンパクトデジタルカメラを製造しています。一眼レフはミラーレスに特化して製造しています。
●Panasonic
ライカと提携している高品質なレンズが特徴です。ミラーレス一眼を2008年に世界で初めて開発しました。現在も世界で3番目のシェアをミラーレス一眼カメラでは占めています。電機メーカーとして蓄積してきた技術力が活かされた、使いやすさが魅力です。
●OLYMPUS
ミラーレス一眼ではナンバーワンのシェアをもちます。コンパクトデジカメから、ミラーレスに移行しつつあります。軽くて色のバリエーションも多く女性ユーザーに人気があります。水中カメラも含め、防塵防滴仕様のカメラのラインアップも豊富です。
●CASIO
日本で最初のデジタルカメラを市販したメーカー。レンズ交換式のカメラは作っておらず、コンパクトデジカメに徹しているメーカー。ハイエンドタイプのコンパクトデジカメは画面の大きさや連写機能に特徴がある。
●RIKOH
一眼レフを最初に開発したPENTAXですが、現在はリコーの扱うブランド名となっています。一眼レフでは、国内で3番目(ということは世界でも3番目ですが)のメーカーです。レンズの種類が豊富なのも特徴の一つです。
参照元サイト
https://www.digi-came.com/jp/modules/classics4/