近年、「BtoB事業」「BtoCマーケティング」という言葉がビジネス用語としてよく使われています。「BtoB」とはBusiness to Businessの略で「企業間取引」のこと。企業や法人を顧客とする取引のことで、B2Bとも呼ばれます。それに対してB2Cとも呼ばれる「BtoC」とは「企業対消費者(customer)間取引」のことで、一般消費者を顧客とする取引を意味します。
一般には、「BtoB取引=下請け業務」というイメージをもたれることもあるでしょう。しかし大手企業のなかには、BtoC事業を切り離してBtoB事業に傾注する方針を打ち出すところもあります。つまり、 BtoBビジネスへの期待は高まっているといえるでしょう。
ここでは企業を顧客とするBtoB企業と、一般消費者が顧客のBtoC企業を比較。就職先としてBtoB企業を選ぶメリットをご紹介します。
<業種の違いは?>
BtoB企業の代表的な業種は、各種素材メーカーです。鉄鋼、紙・パルプ、繊維、化学、ゴム、金属などその種類は多く、主に他企業が商品を作る際に必要な“生産財”をつくる仕事です。社会のインフラを支える業種ともいえるでしょう。素材メーカーの他にも、病院で使われる薬などをつくる製薬会社、企業の事業戦略を立案するコンサルティング会社、企業に商品を卸す卸売業などさまざまな業種があります。
BtoC企業は、例えば家電量販店などの小売業、住宅を販売する不動産販売業、遊園地などの娯楽施設、鉄道会社、保険などの金融サービス業などがあります。消費者の生活に密着した“消費財”を提供する企業といえるでしょう。
<顧客が違えば、仕事も違う?>
BtoB企業の取引ではプロを相手に商売するため、商品の機能と価格が厳しく問われます。法人が相手なので取引金額が大きく、取引先の経営状態を判断する与信管理も大切です。大きいビジネスになると実際に折衝する相手が複数いるケースが多いため、取引に時間がかかるという一面がありますが、いったん取引が決まると取引が長く続くことが多いのも特徴です。BtoB企業の営業職は、長い目で取引を行い長期にわたって信用を積み重ねていく視点が必要でしょう。
一般消費者を顧客とするBtoC企業では、消費者の購買意欲を刺激して流行を作りだすと同時にブランドイメージを高めることによって売り上げを伸ばす戦略がとられます。そのためテレビCMなどの広告が多く、商品や会社の知名度が重要となります。BtoC企業の営業職は不特定多数の顧客を相手に取引をするため、エンドユーザーの多様な要望に臨機応変に対応する力も必要とされます。
就職先として、BtoB企業にはどのようなメリットがあるでしょうか。BtoB企業に就職する5つの魅力をご紹介しましょう。
1)業種が幅広い
先に述べたとおり、BtoB企業は生産財を提供する業種すべてを含みます。四季報に掲載されている33種の分類のうち、鉱業、化学、医薬品、金属製品、機械、倉庫・運輸関連業、卸売業など多くの業種がBtoBに当てはまりますが、BtoCビジネスに当たる業種は主に金融、小売、不動産、情報・通信業などに限られます。BtoB企業を就職先の候補にすることで幅広い業種から就職先を検討できるでしょう。
2)企業規模が大きい
BtoB企業では、企業を相手にして取引するので商品の量が多く、取引金額も大きいのが特徴です。素材メーカーのなかには世界トップレベルのシェアをもつ大企業も少なくありません。規模の大きい企業がすなわち安定した企業であるとは限りませんが、大きな取引を扱うことのできる基盤をもつBtoB企業は不況にも強いという見方もできます。
3)事業が安定している
ブランド力によるところが大きいBtoC企業に比べて、技術力や設備力が強みを発揮するBtoB企業は、流行に左右されることが少ないといわれます。技術力が高い企業は高価格で売ることで高収益を得られますし、設備力が高く大量に商品を製造できる企業は低コストで高収益を生み出すことが可能です。小規模の工場でも独自の高い技術力で安定した経営を実現している企業もあり、“知られざる優良企業”が多いのもBtoB企業の特徴です。
4)社会への貢献
BtoB企業にはインフラ設備に貢献する企業が多くあります。中小の部品メーカーであっても、商品が認められれば世界中で使われることも可能です。メーカーだけでなく商品を過不足なく流通させる卸売業なども産業の下支えとなり、BtoB企業の社員からは “縁の下の力持ち”であるという誇りとやりがいを感じるという声も聞かれます。就職後、仕事に対して高いモチベーションをもてる企業を選びたいものです。
5)就活で競争率が低い
イメージ戦略が重視されるBtoC企業は広告などを出すことも多く、知名度も高いため就活において競争率が高いのが現状です。テレビCMを出す企業はいずれも少数の大企業であり狭き門になりがちですが、有名企業=優良企業とは限りません。BtoB企業は、学生自身が業界紙などを読んで研究しなくては目に留まりにくいため、優良企業を見つけるチャンスが多いといえるでしょう。積極的にリサーチしましょう。
以上のように、BtoB企業とBtoC企業はマーケティング方法や仕事の進め方は違いますが、常に世の中の流れにアンテナを張って顧客の信頼を得るという仕事の本質は同じかもしれません。「ユーザーに喜ばれる仕事」は、BtoB企業でもBtoC企業でも可能です。他の就活生が目を向けることが少ないBtoB企業に注目し、魅力ある企業を探してみてはいかがでしょうか。