商社は就活において、例年人気ランキング上位に必ずと言って良いほど選ばれる業界です。しかしそんな商社が実際にどんな仕事をする会社なのかは、意外と知られていません。ここではそんな商社の中でも、特に5大総合商社と呼ばれる会社の概要を解説していきます。
商社の仕事は、物資の売り買いにおける仲介業務が中心です。例えばある国で生産した製品を大量に買い付け、日本国内の小売業へ卸します。広義の意味で、卸売業とも言えるでしょう。そして、特定分野の製品を専門に扱う会社が専門商社、いろいろな品種・分野を多岐にわたって扱う会社が総合商社であり、中でも売上高の上位5つが「5大総合商社」と呼ばれます。
※( )内は2013年度売上高
1.三菱商事(20兆2,072億円)
2.伊藤忠商事(12兆5,516億円)
3.丸紅(10兆5,091億円)
4.三井物産(10兆496億円)
5.住友商事(7兆5,027億円)
通常の商売では、ある程度特定の分野・商品を扱うよう専門化をした方が、ノウハウや知識・経験の蓄積上から効率が良いように思われるでしょう。実際、特定の商品を扱う専門商社と呼ばれる会社は、世界中にたくさんあります。
しかし、総合商社はすべてを扱う会社です。昔の財閥などの背景から、極めて広い取扱商品・サービスを国内外にある多くの拠点、あるいはネットワークを駆使して有機的に結び付けます。全世界を網羅するビジネス総合力で勝負しており、日本独自の業態と言われている業界です。中でも5大総合商社は「ラーメンから航空機・ミサイルまで」と例えられるほど、私たちの生活に身近な商品から国家レベルの大規模な製品まで扱います。まさにグローバルで多様、ダイナミックな業界と言えるでしょう。
大手総合商社になると、扱う品目は2万点以上とも言われます。機械や金属、エネルギー、繊維、化学、食糧、建設など、素材・原料から身近な商品サービスまで、あらゆるものを扱う企業です。
元々、総合商社は海外などから安く物を買い、国内で高く売って利益を得る「トレード」という輸出入ビジネスを中心に活動してきました。売り手と買い手両者のニーズを知り、調整して販売を仲介する仕事です。これは、現在も商社の軸となるものと言えるでしょう。
加えて最近では、「事業投資」というビジネスモデルも重要な企業活動として行われています。これは、例えばある国で資源開発したい会社に商社が投資を行って経営に参画。商社自らが持つ情報やネットワークを使い、事業を大きくして利益を得るものです。総合商社の持つ総合力という強みを活かした事業投資型のビジネスモデルは、今後さらに増えていくと言われています。これも、多くの国々に現地法人や支店、駐在員事務所を持つ総合商社だからこそ実現するビジネスと言えるでしょう。
※( )内は平成25~26年データの従業員数
<三菱商事(6,358)>
略称「商事」。大正7年に三菱合資会社から独立して誕生。元々は筑豊炭田の石炭販売からスタートしました。金属・機械・エネルギー・生活関連の事業で9割を占める、業界トップの商社です。
<伊藤忠商事(4,235)>
略称「伊藤忠」。麻布の卸売としてスタート。大建産業から伊藤忠商事と丸紅に分割されて現在の姿に。繊維系が強いと言われていますが、バランスが取れていると評されることもあります。
<丸紅(4,289)>
略称も「丸紅」。伊藤忠商事同様、大建産業から分割されてスタート。食糧・パルプ・エネルギー・電力に強いと言われています。
<三井物産(6,160)>
略称「物産」。明治9年発足、三池炭田の石炭輸出からスタート。金属・機械・エネルギーで売上の7割を占めています。
<住友商事(5,228)>
略称は「住商」。源流は大正8年設立の大阪北港(株)と言われています。不動産経営からスタート。金属・輸送機・資源エネルギー・生活関連・建設不動産など、扱う分野はバランスよく持っています。
これら5大総合商社に豊田通商(略称「豊通」)、双日(略称も「双日」)を加えて、「7大商社」と呼ぶこともあります。
総合的な事業を展開しているため、各社の特徴を一言で表すことは難しいでしょう。同じ会社内でも、扱う品目が異なれば全く雰囲気・仕事内容が違うと言われます。そのため業界研究においては、インターネット上の情報だけでなく、実際に商社で働いている商社マンから話を効く機会を得ることが重要です。
業種でいえば、商社マンは営業職です。海外も含め、グローバルに多くの人や会社と付き合いながら、扱う製品について仲介を行います。そのため、人のコミュニケーションが好きであること、また、向上心の高い人が向いている仕事と言えるでしょう。さらに、新たな分野へのチャレンジに貪欲な人や、アイデアマンなども必要とされます。
尚、全企業における2013年データでは、5大総合商社のうち三菱商事の売上が1位のトヨタ自動車に次いで2位となっています。さらに伊藤忠商事が3位、丸紅が6位、三井物産が7位と続き、日本の売上上位10企業のうち商社が4社もラインクイン。これだけの規模ですから、社員1人が担当する仕事でも10~100億円単位を扱うこともあり得ます。