日本は「海外から必要な燃料資源・原料を輸入し、高い技術で作った製品を海外へ輸出する」というスタイルで経済成長をしてきました。
一度にたくさんの物を輸送すること、さらにその際のコストを考えると、時間はかかっても船を利用することが効率的です。そのような要因もあり、日本では古くから海運業が盛んでした。海外貿易の規模が拡大するにつれ、船もどんどん大きなものになり、さらなる発展を遂げ現在に至っています。しかしそのような海運業界は、就活生にとってあまり身近ではないかもしれません。
しかし貿易に興味のある人なら、知っておいて損はない海運業界に今回はスポットを当ててみたいと思います。
平成25年7月から平成26年6月までの間において、日本郵船や商船三井、川崎汽船をはじめ、第一中央汽船やNSユナイテッド海運など対象19社を合わせた状況は以下の通りです。
・売上高:5兆9,043億円
・経常利益計:1,668億円
・総資産額:7兆2,945億円
また労働者数は5,151人、その平均年齢は39.4歳です。さらに、平均年収が746万円と高収入な点は特筆すべきことと言えるでしょう。
リーマンショック以前の平成19年までは、中国からの輸入をはじめ特にアジアの新興国を中心に、資源の輸送が大幅に増加。そのため、海運業界はかなり景気の良い状態が続いていました。しかし平成20年秋、アメリカにおけるリーマンショックが引き金になって、世界中が不況の波に飲み込まれたことは記憶に新しいですが、日本の海運業界も例外ではなかったのです。
好景気の際に新しい船を大量に造ったにもかかわらず、その後に需要が大幅に減ったこと。また、燃料価格が跳ね上がったことなどを受けて、業績は急降下しました。それから数年をかけ、現在は少しずつ回復傾向を見せ始めています。アメリカで生産されるシェールガス輸送などに力を入れたこともあり、平成25年には業績アップする企業が増えました。
日本を代表する海運会社として、日本郵船と商船三井、川崎汽船が挙げられます。それぞれの企業について、その特徴を詳しく見ていきましょう。
<日本郵船>
平成25年7月から平成26年6月期の売上高は約2兆3,000億円。業界におけるシェアはおよそ38%という一大企業です。 創立は明治18年(1885年)9月29日。平成27年(2015年)3月31日現在の従業員数は陸上33,091名、海上429名です。
郵便汽船三菱会社と共同運輸会社が合併し日本郵船を設立。グローバルな海上輸送事業を中心とした総合物流事業やバルク(ばら積み貨物)、またLNG(液化天然ガス)をはじめとしたエネルギー輸送事業などを展開しています。船を使った輸送だけでなく、航空機輸送や一般貨物輸送事業も実施。食料品をはじめとした生活必需品、電化製品など様々な物資を輸送しています。
また、海外38ヵ国に400を超える物流事業拠点を有する点も特徴的です。グローバル化や多様化するニーズに対応している世界的な企業でもあります。事業拠点間の輸送網を最大限活用し、さまざまなサービスを展開。それだけでなく、トラックや鉄道による陸上輸送も行っています。
<商船三井>
平成25年7月から平成26年6月期の売上高は約1兆7,300億円。業界におけるシェアはおよそ29%です。従業員数は陸上606人、海上284人となっています。
鉄鉱石や石炭、穀物などさまざまな資源をばら積み輸送するドライバルク船サービスや、油送船サービス、LNG船サービスをはじめとした自動車船サービス、コンテナ船サービス、ターミナル・サービスなどを行っています。また、客船サービスやフェリー、内航サービスも充実。世界一周のような長期クルーズだけでなく、イベントにも使えるワンナイトクルーズや船上コンサートなど、ニーズに合わせた様々な企画を提案している企業です。
昭和58年(1983年)からはLNG輸送に参入。年間輸送量600万トンを中東から日本へ輸送する、巨大プロジェクトの契約締結に大きな役割を果たしました。LNG船の所有・管理・運航ではトップのシェアを誇り、さらに船を含めた設備拡充と安全運航によりたくさんの人の暮らしを見えない部分で支えています。また、フィリピンに船員養成学校を運営し、人材の育成にも力を入れている企業です。
<川崎汽船>
平成25年7月から平成26年6月期の売上高約1兆2,200億円、業界におけるシェアは20.7%の企業です。設立は大正8年(1919年)で、およそ100年の業歴を有します。従業員数は680名で、内訳は陸上が503名、海上が177名となっています。
他の企業と同様、ばら積み船(ドライバルク船)による石炭、鉄鉱石、穀物、製紙原料等の輸送サービスのほか、自動車船、LNG船、油槽船によるサービスを行っています。さらにエネルギー資源開発では海上油田・ガス田の生産掘削設備への物資輸送だけでなく、設備を移動する際のアンカー巻き上げや曳航作業などにも従事。製油所や石油化学プラントといったインフラ設備を輸送する重量船でのサービスも行い、日本への資源の安定供給に大きな役割を果たしています。
これら上位3社の従業員数を見ても分かるように、海運会社ではその人員の大部分を占めるのが陸上で働く社員です。これは、就活生ならば意外に感じるかもしれません。本業である船を使った輸送を行う部門はもちろん、間接的な事務部門として人事総務、財務経理、企画、広報、法務、情報システムなどにかかわる部門が存在。これらも企業を運営するうえで欠かすことのできない業務を担っています。