私たちの生活に密着した産業の中で、戦後の高度経済成長期から長年にわたって日本の経済をけん引してきた業界。そのひとつに総合電機メーカーがあります。日本の総合電機メーカーはさまざまな新しい技術や素材の利用、そして発想力によって業績を伸ばしてきました。優れた性能や耐久性を持った製品づくりで、世界でも高い評価を受けています。尚、電機産業は扱う製品によって、以下の2つに大別されます。
・白物家電:家庭用洗濯機や冷蔵庫、電子レンジ、掃除機など
・黒物家電:デジタル機器やAV機器など
・重電機器:工場や病院など大型施設で使う産業用発電機や変圧器など
こうした分類に関係なく事業を展開しているのが「総合電機メーカー」といわれる企業です。
また、創業当時は家電製品の製造が中心事業だった企業も、エネルギー産業や交通システム、環境保護関連の産業など新事業に参入。業績の拡大や維持に努めるようになりました。人口減少や不況によって家電製品の国内需要が減少する中、各社は海外市場に積極展開をしています。ただし現在のような社会情勢が続くと、今後大きな伸展を望むのは難しいでしょう。そのため、ますますアジアを中心とした海外へのアプローチが活発化しています。
では日本の「総合電機メーカー」において、リーディングカンパニーと呼べるのはどの企業なのでしょうか。これに該当するのが、三菱電機、日立製作所、東芝の3社です。
この3社は「重電3社」とも呼ばれ、家電製品はもちろん、大規模な発電設備や送電設備、上下水道・電気・道路・鉄道など、生活や産業の基盤となるインフラ設備の製造も行っています。また、創業者が松下幸之助氏で知られるパナソニックも大手メーカーのひとつでしょう。これら4つの企業について、その特徴を良く理解しておいてください。
<日立製作所>
現在、総合電機メーカーの業界トップを走っているのは日立製作所です。この企業は2013年の第1四半期の決算で、純利益100億円超を計上しました。2009年に8,000億円に迫る赤字を計上したとは思えない回復ぶりで、その後の業績は手堅く推移しています。業績回復の要因に事業の見直しがあり、携帯電話事業や液晶事業を他社に譲渡。ITシステムや新幹線をはじめとした電車や、自動車などの交通インフラなどに力を入れるようになりました。
<東芝>
重電の芝浦製作所と東京電気が1939年(昭和14年)合併し、発足したのが東京芝浦電気株式会社。その後、1984年(昭和59年)の社名変更により、東京芝浦電気の愛称だった「東芝」に名前が変わりました。近年は原子力発電だけでなく、水素による発電・貯蔵をはじめ、水素電池の製造や水素エネルギー供給システムにかかわる技術および製品開発に着手。販売も始まっています。またCTや超音波装置、MRI、X線診断装置など最先端医療に不可欠な医療機器を、国内のみならず世界各地の病院に販売しています。その性能の良さで、販路を拡大し企業業績の一翼を担う事業です。
<三菱電機>
1921年(大正10年)1月に設立。資本金およそ1,758億円、連結従業員数は約13万人を数えます。家電事業はもちろん、タービン発電機や水車発電機、原子力機器、エレベーター、エスカレーターなど、多くの重電事業を手がけます。そのほか、レーザー加工機や産業用ロボット、クラッチ、自動車用電装品などの産業メカトロニクス事業、無線・有線通信機器をはじめとした衛星通信装置や人工衛星、レーダー装置など情報通信システム事業、さらに電子デバイス事業を行っています。
<パナソニック>
1935年(昭和10年)12月に設立された企業で、資本金は2,587億円です。連結従業員数は25万人を超えます。冷蔵庫や洗濯機などの生活家電をはじめ、美容・健康・福祉機器、各種デジタル機器のほか、住宅設備や建材なども扱っています。家電による収益が厳しい時代にあって、ここ数年は住宅関連事業と自動車・電子部品関連事業が業績を下支えしている状況です。エコライフや化石燃料からの脱却を図ろうとする動きに伴って、さらなる業績アップが見込まれています。
これまで、日本の総合電機メーカーにおけるリーディングカンパニーの事業内容や特徴を取り上げてきました。総合電機メーカーを志望するのであれば、必ず知っておきたい情報と言えるでしょう。主業以外にも、人事総務や経理財務、広報宣伝、企画、コンプライアンス並びに知的財産権管理など、間接部門も存在しています。これら部門による事務的なサポートも、総合電機メーカーにとってなくてはならない仕事なのです。
総合電機メーカーといえども、家電製品の製造だけでは生き残れない時代となっています。エネルギー関連に注力する企業もあれば、宇宙や航空機に活路を見出そうとする企業もあるでしょう。あるいはエコ住宅に力を入れる企業など多様であり、今後その傾向はますます強まることが見込まれる業界です。